第8話「エピローグ」

アラジンは楽しそうに宮殿で笑っていた。

人魚姫のことなんてなんにも覚えてないみたいに、綺麗な美人を従えて。

現実は甘くない。

王様になったアラジンが旅に出るなんてことはない。

本当はアラジンが人魚姫を探しに航海に行くんじゃないかって、僕らは微かな期待をもっていたのだ。

そんなの、当のアラジンからしたら迷惑この上ないのだけど。

レイナが宮殿に背を向けた。

「・・・行きましょう」

その瞬間、アラジンが突然、大声で言った。

「よし!俺は旅に行くぞ!」

大臣が「は?」と間抜けな顔で聞き返した。

アラジンはにやりと笑って答えた。

「いやー、なに、俺は何かを探しに行かなきゃならない気がしているんだ」

「何か・・・とは一体、なんでしょうか?」

大臣が控えめにアラジンに聞く。

「うむ。何かわからないけど、確かに探さなきゃならない気がするんだ」

「王よ、そんな理由で国をあけられては・・・」

「黙れ、大臣。俺は決めた!この世界の端から端まで隅々まで探すんだ!よし、今すぐ出発だ!」

そんなやりとりを背後で聞きながら、レイナが再度、言う。

「行きましょう」

タオは何か言いたげだったが、何も言わなかった。

でも、僕は言わずにはいられなかった。

「調律・・・、しなくていいの?」

レイナはとても嬉しそうに言った。

「調律は終わったわ。アラジンは一生、人魚姫にあうことはできない。それでも、探すのは自由じゃない?」


そう。探すのは自由だ。アラジンの話は王様になるところまで。

その後、彼が人魚姫を求めて航海に出ることは自由。


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グリムノーツ「船乗りアラジン」 やなちゃん@がんばるんば! @nyankonosirusi

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