第30話 ヒーロー&ヒーロー
キングはユメに向かって突進した。大剣を大きく振り上げ、ユメに向かって振り下ろす。
「無駄です」
ユメはキングの攻撃を難なく受け止める。ものすごい衝撃だが、今のユメにとっては、その衝撃すらも気にならない。
「敵は一人だと思うなよ」
ユメの後ろからコウが飛び出る。片腕をなくし、大剣をユメに受け止められている状態ではコウの攻撃を防ぎようがない。
「ちっ」
キングはすぐさま意識をコウへと向ける。ユメばかりにかまっていては致命傷を負いかねない。
コウは刀を薙ぐ。キングの胴体を真っ二つにするつもりだ。
しかし、キングはユメを弾き飛ばし、その衝撃で態勢を変えた。
コウの刀はキングの左わき腹を少し斬っただけで終わった。刀の先にわずかな血が付着する。
「外したか」
「まだです」
キングは体勢を崩している。そこに、ユメは魔法を放った。
「ファイアショット」
ユメは剣を突き出す。剣の先からは炎の弾丸が飛び出した。
「……!」
炎の弾丸はキングの顔面に当たり、爆発した。キングは白目を向き、たたらを踏む。
「今です」
ユメとコウは同時に走り出した。キングの左右から二人で踊りかかる。
「調子に、乗るなぁ! ライトニング!」
キングは大地に大剣をつきたてた。それと同時にコウに向かって雷が落ちようとした。
しかし、ユメがそれをさせない。
「サンダーボルト」
雷は地面に落ち、衝撃だけがユメたちに伝わった。
ユメはコウの周りに電気の道を作った。電気は一度電気が通った道を通る。雷もコウを避け、ユメの作った電気の道を通ったのだ。
「その腕、もらったぁ」
キングは魔法を使って隙ができていた。まさかコウが雷を避け、突撃してくるとは思わなかっただろう。
「ぬっ」
キングは大剣を振り上げ、コウの攻撃を受け止めようとした。しかし、一瞬、コウの斬撃の方が早かった。
「があぁぁぁ」
キングの左腕は斬りおとされ、両手とも地面に転がった。これでは自慢の大剣も振るえない。
「ユメ、今だ、とどめを!」
「はい」
ユメはキングの懐に飛び込んだ。剣を引き寄せ、キングの胸を突き刺そうとする。
「私は、魔族の王だ。こんなところでぇ!」
キングは目をカッ、と見開き。ユメをにらむ。最後の足掻きを試みようとしていた。
「フレイム・バースト!」
キングは口から巨大な火の玉を発射した。ユメは一瞬にして炎に包まれる。
「ユメ!」
キングはニヤリと笑った。ユメをしとめた気になったのだろう。この炎の中で生きていられるはずがない。その考えがキングの失敗だった。
「これで、終わりです」
炎の中から声が聞こえる。ユメは燃え盛る炎の中で、しっかりと剣を構えていた。
「ば、馬鹿な!」
「いけぇぇぇ!」
ズブッ、とユメの剣がキングの胸を貫いた。キングは歯を食いしばり、ギロリ、とユメを見ている。
「私を殺して、この国が平和になると思うのか。無能な姉と、無能な機械族の長がいる限り、この国に戦争はなくならないぞ」
「なくしてみせます。私がいます。先生がいます。みんなを信じて、助け合えば、未来は開けるんです!」
キングは天を仰ぐ。空にはまぶしいばかりの二つの太陽が輝いていた。
「戯言だな。そんなことは、夢想にすぎん」
「未来とは、夢から始まるんです。夢を見て、現実を作り上げ、未来に託す。平和な夢を見ず、現実ばかりに目を向けていたあなたには、わからないかもしれませんが」
「ふっ、それならば、貴様が作る未来、地獄から見ているとしよう」
キングは仰向けに倒れた。その顔からはすでに生気を失っている。
「か、勝ったんですか?」
「ああ、そのようだな」
コウがキングに近づき、生死を確認する。軽く頷き、少しの間、黙想した。
魔族と機械族の運命を分ける大会戦は終わった。しかし、その被害は大きく、勝者といえる存在はいなかった。
そんな中、希望と言える存在があるとすれば、それは二人の異世界人であったであろう。
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