かけら

千円のワインが 高級品だったころ

はじめての コルクの栓に慌てた

雑貨屋へ オープナーを買いに行って

ふたりで おっかなびっくりコルクの栓を抜いた


いつものと ぜんぜん味が違うね

うん やっぱうまいな


ワインの味なんて ちっとも知らないくせに

馬鹿みたいなことを言いながら

馬鹿みたいに幸せだった


きみはいまでも 覚えているかな

オレはいまでも 思い出すよ


あのころの かけらたちが

最近やけに 胸で騒ぐ

ざらついた 苦い磁石に 引き寄せられて

きらきらと 煩いんだ


辛いだけの グラスを傾けながら

あのワインオープナーは どうしたっけ なんて

どうでもいいことを 真剣に思い出そうとしながら

甘いばかりの きらめきが 胸で騒ぐのを

オレは 馬鹿かよって 嗤うんだ

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