子どもの頃好きだった料理。暮らしていた家に、使っていた道具。無くなってしまう物がある一方で、いつまでも大切に手元に残しておける物もあって。そんな物たちに、気持ちが救われて、良かった。残してくれる人たちが傍に居て、良かった。切なくて優しいお話、眠る前に是非どうぞ。
短い文章にも関わらず読んでいて泣きそうになりました。月日が経てば誰にでも訪れるような、肉親との別れと住居との別れ。淡々と準備を進めつつもそこに込められた思い出を噛みしめる主人公には共感せずにはいられません。嗅覚に訴える出だしがとてもいいですね。小説って漫画やアニメと違って嗅覚の想起力が強い。あの一行で、主人公と同じ場所にいるような感覚が湧き上がりました。優しくて切ない物語。母の日にぴったりの作品だと思います。