第1話「終わりの始まり」

________何かとてもを見ていた気がする。

秋も終わり、草花も散って、夏には忌々しく思っていた照り付けるような暑さを懐かしく思うぐらいに今年の冬は冷え込んでいた。

「お~い、チユー!」

俺の名前は高知優介(こうち ゆうすけ)。このチユってのは俺のあだ名で名前の真ん中からとったらしいが、正直言って俺はこのあだ名は好きじゃない。

「女みたいだし。」

「ん?なんか言った?」

この息を切らしているやつは小鳥遊翔真(たかなし しょうま)。俺の昔からの親友でにくいほどのハイスペック野郎だ。

「いや、そのあだ名はやめろタカ、女の子の名前みたいで好きじゃない。」

「やだね~、この学校なぜかゆうすけって名前多いし、何しろこのあだ名は気に入ってるから!」

タカは意地悪な顔で言う。

「じゃあ勝手にしろ。」

呆れて言いながら腕の時計を確認すると時計は始業時間3分前を指していた。

「おい、このままだと高校初めての遅刻になっちまう。」

「じゃあ俺はチユの記念すべき初遅刻の共犯者になるんだね?」

タカは運動神経、学力、ルックスともに文句のつけようがないのだが、こういうことはまるで気にしないのが玉に瑕である。

「言っとけ。急ぐぞ。」

「しょうがないな~、りょーかい。」

「これで授業は終わりだ。もう期末テストまですぐだからな、各自早めに勉強しておけよ。特に今回の問題は難しくしたつもりだからな。」

教室の大勢が落胆するなか、タカともう一人俺の席へと近づいてきた。

「おはよう。今日は珍しく遅刻しそうだったね。」

こいつは赤松晴人(あかまつ はると)、俺とタカとは高校からの友達でこいつもこいつでハイスペックなのだ。しかも家は金持ちだし。

恨めしそうに晴人を見ていると

「どうしたの?目つきがよ?」

晴人は体を隠しつつ言う。

「そ、そんな目で見るかぁ!」

本当にみ、みてないぞ!ちょっとだなって見てただけだよ、本当に!

「おいおい、俺を無視しないでくれよ〜。」

「元はと言えばタカのせいで遅刻しそうになったんだぞ。」

まったくだ。結局あの後トイレに行きたいとか言い出すし、本当にチャイムが鳴り終わるかのところで教室に着いたのだ。

「悪かったって、でも自然の摂理だししょうがないだろ?、俺はアイドルでもあるまいし。」

タカの本当にたちの悪いところは悪気がまるでないところだ。トイレだって行きたかったから行っただけで他意はなかったのだろう。

「本当にチユとタカは仲が良いよね。羨ましいよ。」

がみがみ言い争っているのをみて仲よさそうにみえるかは疑問だけど、確かに俺とタカは親友だ。

「まあね、俺とチユは小学校からの付き合いで、家も近所だし、チユは俺の大切な親友だ。」

珍しく照れながら言うタカ。

「それに、ほとんどタカのトラブルに巻き込まれて色んなトラブルを二人で乗り越えてきたからな。でも晴人も大事な友達だよ。」

友達とか親友の定義って人それぞれだと思う。中には出会ったら既に友達とか言ってしまう、コミニュケーションの天才とかだっている。親友だって友達を親友と同義に考えている人や秘密を暴露し合える仲などと言う人もいる。

だけど俺は親友っていうのは間違っていることをしていたらだと思う。

ちなみに俺には友達はいない。友達なんてものはないと思っている、相手のことを気にしながら接する関係なんて友達ではなくて知り合いだと思うから。それでよくタカに「変な奴」だと笑われてしまうのだが。

「そんなこと言われると照れるな〜。」

晴人とは高校1年の時に出会ったのだが、とても穏やかで容姿も優れることからまるで天使のような印象を受けたことを今でも鮮明に覚えている。

「そういえば二人は期末のテスト大丈夫?」

照れているチユは話を変えようと来月からのテストの話を振ってくる。さっき先生も言っていたように来月からテストがある。俺らが通っている高校は街では1番と言われている進学校でそれなりに試験の難易度も高いとおもう、しかも難しくしたっていうんだからできればテストの日を迎えたくないし考えたくもないのはわかってくれるだろう。

「俺、全くやってない!」

学校に一人はいるだろう、勉強してない自慢をする奴。しかしながらタカに限っては本当に勉強はしてないのだろう、それなのに学年トップを取ってしまうからたちが悪いんだ。

「俺は勉強してるはしてるんだが、はっきり言って自信はないよ。」

俺は良い意味でも悪い意味でも平凡、授業の予習復習はしているし授業も受けているが今回ばかりは悪い未来しか見えない。

「なら次の日曜日に僕の家に来て勉強会しないかい?」

「いいね、賛成!」

ノリノリで答えるタカ。

「タカは勉強する気ないだろう。俺も賛成だ、というよりむしろ助かる。ありがとう。」

本来なら一人で勉強するつもりだったが、学年トップ1&2に(トップ1には期待はしてないが)勉強を教えてもらえるならこれ以上良い環境はないだろう。

「どういたしまして。じゃあ次の日曜日僕の家に来てね。」

こうして次の日曜日に野郎3人のなんの需要のない勉強会が決定した。

「なんかだ。」

そう独り言を言うと同時に4限目開始のチャイムが鳴った。

___1章「日常」完。





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