成就
2月14日のこと・・・・・・4
……どうやら、あなたもわかってきたようですね。
なぜ、あなたがここにいるのか。
そこで、そうやって縛られているのか……。
保健室のベッドで縛り付けられていたボクに、霧島さんは馬乗りになってきました。
――羨ましいなぁ、水琴は。
――君に愛されて。
――あんなにも悍ましい、人殺しの癖に。
耳元で、そう囁くと、霧島さんは、ボクのワイシャツのボタンを、一つ、また一つと、外していきました。最後の一つが外れ、ボクは、はだけた状態になっていました。…いつの間にか、ズボンも下ろされていました。
「やっぱり…女、だったのね」
落胆したように、長い髪の毛を垂らしながら、霧島さんは項垂れていました。
「ショックだったなぁ……私の、ハツコイの人だったのに」
そう言いながら、霧島さんは、ボクの首に手を回してきました。
項垂れた髪の毛を揺らしながら、ボクの体に沿わせながら、ゆっくりと体を持ち上げてきたのです。
ボクと目が会いました。髪の毛の隙間から、その目はボクを見ていました。
怨恨に満ちた、その瞳が血走り、充血していました。
ほぼ裸にされたボクの体を弄ぶように、霧島さんの舐めるような視線が、ボクの全身に及んでいました。
この時、ボクは右足の方の紐が緩んでいることに気づきました。
霧島さんに気付かれないように、そっと、動かしながら、紐がほどけるのを待ちました。
霧島さんは、堪能したかのように、ボクの胸の下あたりに跨ると、ボクの首を両手で掴み始めました。
「私のハツコイを……返して」
「私は、あなたたちのように割り切った関係にはなれないの。そうじゃないと、あなたの子ども、産めないじゃない!」
首を掴む両手が、どんどん強くなっていきました。顎が、外れそうになるくらい頚動脈に指を喰い込ませて、呼吸どころではなくなりました。
苦しくなっていきました。ボクの舌が少しずつ飛び出て、涎も溢れていました。
動かしていた右足の紐が、ようやくほどけたころ、ボクはもう限界近くにいたのです。
ボクは右足を思いっきり上げました。霧島さんの頭に、つま先が当たりました。
ボクは、その右足で霧島さんの首に引っ掛け、下ろされていたパンツを巻きつけました。
そのあとは――ボクは、無我夢中でした。
霧島さんが、失禁するくらい勢いよく締め付けていたのは覚えています。
霧島さんは、目を白目にして、動かなくなりました。
……正当防衛、ですよね。
でも、なぜ霧島さんが、ボクのことに気づき、そして、冴島さんの死の真相を知っているのかが気になりました。
意外と緩く結ばれていた紐は、簡単にほどくことができました。
ボクは、包帯をほどいていました。
霧島さんの左目をくり抜き、ボクの左目のあったところにはめました。
再び、妙な光景が再生されました。
ボクの左目が抉られて、倒れたところが写っていました。
渡辺君が逃げ惑って、教室を出ようとしているところで、倒れ、ズルズルと引きずられて行きました。
視界は、ゆっくりと教室の中を覗き込むように、見ていました。
そこで、渡辺君が、斧か、鉈のようなものでズタズタに切り裂かれている光景を目にしていました。
そこに立っていたのは……この高校の制服を着ている、女子生徒。
左手の薬指が無い、女子生徒――日向水琴の姿でした。
視界は突然、視点の位置が低くなりました。おそらく、尻もちを着いたのだと思います。
日向水琴が、こちらに気づくと、ゆっくり、ゆっくりと近づいてきました。
斧と、抉りとったハラワタを握り締めながら、この世のものとは思えない笑みを浮かべながら、近づいてきました。
視界は、後ずさりしたあと、一目散に逃げ去っていました。
振り向くと、日向水琴が廊下に立っていました。
しかし、日向水琴だと思っていたその人は……突然姿を変えていました。
しばらく歩いて、その人はそこへ倒れた。
近づく視界――その倒れた人物を抱えて、保健室へと向かって行きました。
その倒れていた人物は、ボクだったのです。
日向水琴はボク……?
その時のボクは、よくわかりませんでした。
しかし、霧島さんの視界を見て、わかったことがありました。
ボクの左目の空洞は、その人が死ぬ30分程度前の出来事までなら見ることができる。しかも、一瞬で記憶が流れ込むように……。
ボクは、左目から霧島さんのを抜き取ると、霧島さんにそっと返しました。
そして、苦痛に歪んだ顔を整えてあげました。
こんなボクでも、好意を持ってくれていたこと、心から嬉しく思ったからです。
でも、ボクには好きな人がいたから、頬にキスをしてあげるだけで、我慢してもらいました。
さて、今日はこんなところでしょうか。
……また、話に来ますね。楽しみにしていてくださいね。
まぁ、無理にとは、いいませんが。
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