2月13日のこと・・・・・・2

また、いらしていただいてありがとうございます。

あなたも、物好きな方、ですね・・・。

・・・あ、いいえ、深い意味はありません。気にしないでください。


――そうそう、テレビで、ミコト彼女のことが流れていたんです。


気がついたらボクは、携帯を落としたまま、外に出ていました。

埼玉県戸田市の荒川は、ボクの住む夜野元町からはすぐだったから。


河原は警察でいっぱいでした。

現場検証、というものでしょうか。

テレビ局のカメラ、ヘリコプターまで飛び交っていました。


・・・その時でした。


“カノジョ”の姿を見かけたのは。



河原はブルーシートで覆われていました。

土手に登ったところに、レポーターやらカメラやら、野次馬やらが集まっていました。

ボクは、その後ろから中を覗こうとしたのですが・・・あまりの人だかりで中を覗くことができず、野次馬に押されて、土手から転げ落ちてしまったのです。

・・・あぁ、土手といっても、芝生ですので、怪我はありませんでした。

心配してくださって、ありがとうございます。・・・いえ、話を続けますね。


土手の反対側は、ちょっとした公園になっていました。

公園の近くに、林があるのですが――。



・・・ごめんなさい、思い出したら、ゾッとしてしまって。


とにかく、居たんです。

カノジョが・・・


冴島禮衣子さえじまれいこさんが――。


・・・冴島さんですか。

・・・冴島さんは、かつてのボクの幼馴染。

いや、ボクたちの、という方が正しいですね。


もっと正確に言うと・・・日向水琴と付き合っていた、女の子です。

カノジョとミコトは、中学時代に付き合っていました。

・・・えぇ、そうです。女の子同士で。


でも、夏祭りのあの時二年前の夏休み・・・変死体で発見されました。

顔も、体も・・・誰かすら、見た目ではわからないほどでした。

先ほど申し上げた公園です。ほら、あなたも、ご存知でしょう?


・・・心当たり、ないですか。すみません。

てっきり、知っているものだと思ったのですが。


カノジョは事故で――。

あ、いや・・・本当は・・・


――何者かによって、殺されてしまったのです。


そのカノジョが・・・林の中から朧げな姿で、ボクを見ていました。

紫色の服を来て、髪の毛は・・・鬱陶しいほどの長髪で、目は虚ろでした。

そんなカノジョが・・・死んだはずのカノジョが、潰れているその目で、気怠そうに、こちらを見つめていたのです。

遺体は、顔が潰されていました。眼球が、取り出されていたそうです。

左目は、近くの住宅街で発見されました。

・・・もちろん、潰されていたそうです。

体は・・・何者かに乱暴されたあとだったみたいです・・・。

手を後ろ手に縛られて・・・両手の薬指を落とされていました。

そんなカノジョが、立っていたのです。

ゆらゆらとゆれにゆれながらゆっくりとうごいていました。


ボクは、目が離せなくなりました・・・身動きが、取れなかったのです。

カノジョはゆっくりとこちらに近づいてきました。

ボクの呼吸も、心拍数も、どんどん荒くなっていきました・・・


         ネェ…


トクン…トクン…キコエテルンデショ


                  カノジョは近づいてくる



トクン…トクン…トクン…トクン…           カエシテヨ…       



               ゆっくりと、恨めしそうにボクを見つめて



トクン…トクン…トクン…トクン…トクン…トクン…トクン…トクン…



         林の入口に・・・立ったとき








――カノジョは潰れていた目わたしの目の空洞を見開いたのですカエシテ―――――









「坊主、大丈夫か?」


ボクは、後ろから声をかけてくれたおじさんに肩を叩かれ、おじさんに振り向きました。

林の方を見ると、カノジョはいなくなっていました。

妙な冷や汗で、ベタベタになった額を拭って、「大丈夫です」とおじさんに声をかけました。


「急に転がり落ちてったから、びっくりしたんだよ? 気をつけな」


そう言うと、おじさんは土手の方に向かっていったのです。

ボクは、深く深呼吸をしました。










                       実を言うと…      





                 公園の隅のブランコから





                 カノジョはこちらを……








             笑イナガラ、ミテイタノデス……











・・・あれ、どうされました?

そろそろ休憩、しましょうか。


今日は短いですが、この辺で。

聞いていただいてありがとうございました。

また、いらしてください。


まぁ・・・無理にとは、言いませんが。

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