2月13日のこと・・・・・・1
翌日。
ミコトが家に帰っていないことを、担任から聞かされました。
ボクは、何も知らない、と、答えました。
ケータイは、充電しないまま寝てしまっていたので、家に置いてきていたので、まだ見ていませんでした。
もちろん、心配になりました。
あのお化け屋敷で見かけた女の子が、もしミコトだったのなら――
暴漢に襲われて――?
誘拐――?
色々な推測が立ちましたが、ボクは、考えることをやめました。
もしオオゴトになったのなら・・・
ボクのせいじゃない――ボクは知らない――誰もボクを責めないでくれ――
そう思うと、ボクは怖くてたまらなくなったのです。
家に帰ってからも、ボクはケータイを見ようとはしませんでした。
見るのが怖かったからです。
・・・ボクが情けないと思いますか?
当然だと思います。そう思われても仕方がない、でも、話さずにはいられなかった。
・・・すみません、続きでしたね。
それで・・・結局、ベッドでウトウトして、少し眠ってしまったのですが――
――…ーンヴィーン
…ヴィーンヴィーン
ケータイの鳴る音に、目が覚めました。
目が覚めたボクは、金縛りにあったかのように、目を開けたまま、じっと、その振動が鳴り止むのを、待っていました。耐えていました。
ヴィ…
ケータイが鳴りやんだことで、少し緊張が和らぎました。布団に頭から
――…ーンヴィーン
…ヴィーンヴィーン
再びケータイが鳴りました。ボクは再び目を開けたまま、じっと耐えていました。
…ヴィーンヴィーン …ヴィーンヴィーン
…ヴィーンヴィーン …ヴィーンヴィーン
…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン…ヴィーンヴィーン
永遠に続くように、感じました。怖くて布団から出られず、耳を塞いでも、あの振動は聴覚を貫通してボクの脊髄を直接刺激しに来ていました。
心が、握りつぶされる。
そう思いました。
…ヴィーンヴィーン
…ヴィーンヴィーン
ミコトに責められている。他人に後ろ指を指されている。
多くの人たちがボクを見ている。
オマエガミステタと責め続ける。
家族が、担任が、クラスメイトが、電車に乗る人たちが、コンビニの店員が、夕方ランニングする青年が、ミコトが、ボクを見ている――!
ボクは、再び目を開けていました。
気が付くと、ケータイの音は鳴りやんでいました。
嫌な夢を見ました。
世の中にいる人たちが、無表情な目をボクに向けている。
ボクは、あの“目”が嫌いだ。
口ほどに物を言う目が、視線が、ボクを責め続けるから。
――すみません、少し、話が脱線してしまいましたね。
とにかく、ボクは、その後ケータイに目をやりました。
中学時代の誕生日に買ってもらったスマートフォン。
ミコトが家に帰っていないと担任は言っていましたが、きっとどこかをほっつき歩いているに違いない、今晩お腹を空かせて帰ってきて、あの怖いお父さんにこっぴどく叱られているに違いない――そう思い聞かせて、ボクは、ケータイを見ました。
「!?」
着信履歴の山・・・無料会話アプリの山・・・
また、少し怖くなった――。
着信は・・・
2/12(日) ミコト 午後 2時12分 不在着信
2/12(日) ミコト 午後 2時12分 不在着信
2/12(日) ミコト 午後 2時13分 不在着信
2/12(日) ミコト 午後 2時13分 不在着信
2/12(日) ミコト 午後 2時13分 不在着信
2/12(日) ミコト 午後 2時14分 不在着信
2/13(月) ミコト 午後 2時12分 不在着信
2/13(月) ミコト 午後 2時13分 不在着信
2/13(月) ミコト 午後 2時14分 不在着信
2/13(月) ミコト 午後 4時00分 不在着信
2/13(月) ミコト 午後 4時03分 不在着信
2/13(月) ミコト 午後 4時04分 不在着信
2/13(月) ミコト 午後 4時05分 不在着信
2/13(月) 渡辺 午後 4時14分 不在着信
ミコトから電話が来ている――!
日付は・・・今日、2月13日だ。
ミコトが無事だと知って、ボクはほっとしていました。
怒っているのだろうな、と思いましたが、ボクは電話をかけ直すことにしました。
その時でした。
ヴィーンヴィーン
鳴ったのと同時に操作中だった指が通話ボタンを押していました。
――もしもーし!! 起きてるか!?
電話の主は、渡辺
「ど、どうしたの? 渡辺君」
――お前、テレビ見たのか!?
「テレビ・・・見て、ないけど」
――バカ野郎! 早く見ろ!
ボクは、その言葉に触発されて、急いで部屋のテレビをつけました。
「今日未明、埼玉県戸田市の荒川で、人体の一部と遺留品とみられる生徒手帳が発見されました。被害者と見られるのは、埼玉県さいたま市に在住の――」
唖然とする顔が、どんどん歪んでいくのが、自分でもわかりました。
背筋を凍らせ、恐怖の底に陥れるほどの事件が、報道されていたのですから。
「――県立
・・・すみません、思い出したら辛くなってきてしまって。
今日はこの辺にしておきましょう。
どうもありがとうございました。また、よろしければいらっしゃってください。
まぁ・・・無理にとは、言いませんが。
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