2月12日のこと・・・・・・2

――また、来てくださったのですね。

ありがとうございます。物好きな方ですね。


・・・すみません、悪気があったわけではないのですが。


――あ、話の続きですね。わかりました。

少々気の滅入る話が続くかと思います。気分を悪くされたなら、おっしゃってください。


                                     戻るなら

                                     今のうちですよ――




ボクは、ミコトを探さなかった。

もちろん、ムカついていたこともあります。

ボクのことを知っているはずなのに、ボクを理解しようとしてくれない。

そんな彼女を、そのときは

――語弊のある言い方でしたね、すみません。

本当は、寂しかったんです。

甘えに近いコトだと思いましたが、当時のボクには、彼女を振り回すことしかできなかった。そういうことです。


2時間くらい経ったころでしょうか――。

さすがに心細くなって、ボクは彼女を探し始めました。

内心、探しているような素振りを見せたくなかったので、さりげなくですが。


そこまで広い園内ではありませんでした。

彼女が見つかるのも時間の問題でした。


でも、その彼女が・・・ミコトらしき女の子が、他の男と一緒に、お化け屋敷に並んでいるのを、ボクは見てしまった。

――えぇ、先日は、確かに“彼女が走り去っていった姿が、最後に見た姿”だと言いました。

この時のボクの心境としては、もはや、ミコトを“彼女”だなどと思える気持ちが、行方不明になっていたのです。


ボクは、彼女を残して、トウキョウに帰ってしまいました。


苛立ちと、憎しみと、嫉妬と、寂しさと、心細さと、ほんの少しの愛しさが・・・

同時に、ボクの心に入ってきた。

いきなり湧き出た感情って、こうも抑えられないものなんですね。

自宅近くの公園で、ボクは泣いていました。


――あなたは、こういうときどうしますか?

・・・あ、それは・・・どうでしょう・・・。


ケータイを見る気にもなれませんでした。

たまに振動しているみたいでしたが・・・


家に着く直前に、電池が切れていたみたいだったので、そのまま布団に飛び込むついでに、机の上に放りなげました。


――あ、おっかえりー! おにいちゃん、デート、どうだったのー?

――ちょうどさっきニュースでやってたのよ、遊園地特集が。ジェットコースター面白そうね!

――じゃあ今度は家族みんなで行こうか! ミコトちゃんも誘って、な!

――いいねぇ! おとうさん!


家に着いたボクを迎えた、残酷なまでに明るい言葉が、ボクの胸を握り締めて離さない。


「ボクは、悪くない」


家族は、ボクの浮かない表情を察したのか、言葉を失っていました。

ボクは、そのまま部屋に行き・・・あとは、先ほど言ったとおり、泣き崩れながらそのまま寝てしまったのです。


その時のボクは、見ようとしなかったんですよ。


彼女からの――ミコトからの電話を。

助けを求めていた、悲痛の叫びを――。


聞こうとしなかったのです。



あぁ、今日はこの辺にしておきましょう。

どうもありがとうございました。また、よろしければいらっしゃってください。


まぁ・・・無理にとは、言いませんが。

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