失恋

2月12日のこと・・・・・・1

 あなたは、絶叫マシーンが好きですか?

 ・・・そうですか。ボクは、絶叫マシーン、とりわけ、ジェットコースターなる乗り物が嫌いです。えぇ、あのえげつない浮遊感と疾走感に、心臓がおいてけぼりを食らうような、そんな気持ちになるんです。


 この日、ボクとミコト彼女は、世界で一番早いとされるそのジェットコースターとやらに乗りに、富士山が綺麗に見えるこの遊園地まで来ていました。

 あ、ミコトですか? ボクが通っている高校のクラスメイトで、幼稚園来の幼馴染なんです。


 新宿から高速バスに乗ってやってくる道中、ミコトは大はしゃぎでした。

 ボクは・・・というと、正直、バス酔いしていて、はやく静まってくれないかなと願うばかりでしたね。

 でも、ミコトがとても楽しそうだったから・・・よかった。

 これが、ミコトの楽しそうな姿を見た、最後の姿になるとは、思ってもみませんでした。


 それは、誰だって、突然何が起こるかわからない世の中だと、そのくらいは理解していますが・・・でも、自分の身の回りで起こるとは、予想できませんよね。

 あなたも、そう思いませんか。

 ・・・そうですか。


 とにかく、この日は、美術部で学展に出す作品を徹夜で仕上げていたので、あまりコンディションが良くなかったのもあるんです。

 でも、ミコトは自分のことばっかりで、ボクのことなんて気にかけてくれてなかった。

 ボクが嫌がる、世界最速のジェットコースターに乗ろうと言ったんです。

 たしかに、ボクたちはそれを目当てに来ることにはなっていました。

 具合が悪かったボクを、無理に連れて行こうとするもんだから・・・その、つい・・・かっとなってしまったんです。


 ボクは――。


 ボクは、ミコトを、突き放していました。

 ミコトは、悲しそうな、恨めしそうな目でボクを見ていました。


「あんたなんて知らない!」


 そう言って、走り去っていってしまったんです。



 ――それが、彼女を見た、最後の姿でした。


 彼女の行方・・・知りたくはないですか?

 ・・・そうですか。

 ボクは・・・知りたくはなかったけど、知らなければ良かったと思ったけど・・・


 これからお話することは、あまり他人に話せるような、気持ちの良いものではありません。

 でも、もし、お話を聞いてくれるなら、ボクの気持ちが楽になるかと思うんです。


 とても恐ろしい体験を、したんです。


 ・・・あ、無理にとはいいません。

 よければ・・・でいいのです。


 ――また、明日、来てください。

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