まず初めに、これはかなりの覚悟をもって読まないと読み進められない。とくに物語前半はメンタルをどんどん削られるので、ここを乗り切るまでは苦しみに耐えて、一人の少女の過酷な人生を案じてほしい。
物語は『虐待』や『ネグレクト』を扱ったものだが、暴力や暴言と言った分りやすい虐待ではなく、かなり独自の虐待方法が行われる。
この新しい虐待が主人公たる少女の心を奪い、人間性を喪失させていくのだが、この描写がかなり胸にくるし、続きを読む気を失せさせる。リアリティがあり、生々しいのだ。
多くの読者はこの延々と続きそうな陰惨たる虐待描写にうんざりし、あまりの辛さに読むのをやめてしまうかもしれないが――そこは虐待を受ける少女と一緒に、ぐっとこらえてほしい。
小学生篇が終わり、中学生篇に入れば、少女は自分の家庭がおかしいことに徐々に気がついていく。そして、偶然出会ったお姉さんの登場によって、物語は少しずつ好転していく。
物語後半、少女がどんどんと人間性を取り戻し、自己を確立し、間違った巣からの巣立ちを決意していく様は、かなり僕の胸を打った。間違いなく、多くの人に響く物語だと思うし、響かせるだけの説得力と文章の力がある。
こんな境遇に陥る子供が、一人で少なくなることを願ってレビューを書き――そして、この物語が多くの人に読まれることで、このような虐待が存在することが認知されてくれればと、切に願う!