十七冊目――八年目の記録二学期――


 新学期が始まって、生徒会の選挙の準備をするとか何とかでにわかに慌ただしくなってきました

 生徒会長を選ぶ、そういえば去年もやってましたっけ。去年は自分には関係ないことだって、そう思ってたから完全にスルーしてました

 でも今は少し興味が出てきました。ただ生徒会長になりたいってわけじゃなくって、みんなの代表として何かをするってどんな気持ちなのかなって、そんなことを思うんです

 私は何にも知らないから、だからいろんなことを知らないといけないって、そう思うんです

 そのために出来ることは何でも挑戦してみないとって思うんです

 でも、新聞部のお悩み相談コーナーも結構沢山投書が入るようになって、そろそろ、これを引き継ぐ準備も考えないとダメだなって、そんな風に思うんです。それも考えつつ、そういえば来年は新聞部に三年生が私だけなので、新入生に記事の書き方とかそういうのも教えてあげないとって、そういうのも考えないとですよね。三年生はそろそろ引退だからそれまでに色々聞いておかないとです



 やっと要領が分かってきて、時間配分が決められるようになりました。長かった。ここまで長かったです

 でも、アレです。恋煩いのお便り禁止って投書箱に貼っ付けてやりたい気分になります。そんなの知らないからさっさと告白して玉砕してほしいものです

 


 私、秋って好きです

 だって秋って、植物の色が一斉に変わるじゃないですか。それがいいなって、そんな風に思うんです

 緑が一斉に赤と黄色に変わって、それがなんだか命の終わりみたいな感じがして、ぶわぁって、なるのがなんか好きです



 そういえば、最近は9月終わりごろまで夏顔負けの暑さでそこから急に気温が下がるじゃないですか

 でも江戸時代とかはそもそも今ほど夏場も暑くなくって、だから夏だって言ってもそこまで過ごし辛かったわけわけじゃないんだそうです

 でもでも、今みたいにエアコンはなかったわけだから、それを加味すればどっこいどっこいなんじゃないかなって、思いました

 それに結局今の夏が暑くなってるのは、地球温暖化を起してる人達のせい、つまりは私たちのせいなので、まぁそれも仕方がないんじゃないかなって、そんな風にも思うんです

 特に何が言いたいってわけでもないんですけど、結局のところいろんなものはやったらやった分だけ帰ってくるんじゃないかなって、今の便利な生活は昔の人がいろんなことを考えて、それからいろんなものを犠牲にして、そうやって積み上げてきたものの集大成だって、私はそう思うんです

 そういうのってやっぱり大事だと思うから、だから、忘れないようにしないと



 お母さんにおばあちゃんの家の連絡先を聞いた



 覚悟してたとは言え、やっぱりわるい子ノートは苦しい



 やっと落ち着いてきました

 悪い子ノートを書くと心がざわざわします

 なんだが、自分の体が小さくなるような、血が通わなくなるような、そんな感覚が走っていくんです。目を閉じるとグルグルって、回ってないのに回ってるような感じで、瞼の内側は暗いのに明るくって赤とか黄色とか緑とか、暗い中でチカチカするみたいな、そんな風になるんです

 でもそのあと寝っ転がって目をつむると今度は手とか足とかがやけにおっきく感じられて、まるで手足が自分のモノじゃないような、自分の体が自分のモノじゃなくなるみたいな、そんな感覚になるんです

 で、そのまま寝ちゃうもののだからやっぱりわるい夢を見ます

 悪夢を見るんです

 今回は特にひどくって、こわくって夜中に起きて、そのまま眠れなくなっちゃって、何日間か寝不足で学校が辛かったです

 どうしよう、夢について少し書いておこうかな。まだ頭の中に残ってて、しかも夜その続きを見るから、だから頭を整理して忘れやすくするためにも書いておいたほうがいいよね


 夢の中で私は私を見てるんです

 わたしは動けなくって、ただ私の後ろにずっとくっついたままで、私を見てるんです

 私は、私なんですけど、私はやっぱり私じゃないから、でも私は私だから、夢の中ではだれも私のことを私じゃないって、気が付かないんです

 違うって、言いたいのに、その子は私じゃないって言いたいのに、夢だから声は実装されてないみたいで、全然声出せないんです

 それで、クラスのお友達とか、先生とか、お姉さんとかと親しげに話をしてるんです。お姉さんに甘えて抱き着いたりして、

 私はそれを後ろで見てるんですよ

 私じゃない私が私としてかわいがられたり、仲良くしてたりするところをずっと、見てるんです。違うって、言いたくっても言えなくって、見てるしかないんですよ

 そんな悪夢です

 違うのに、私じゃないのに。誰にも気が付いてもらえなくって、でも私だけは私のことが見えてるから、私に向けてにやって、笑うんです

 どう? 悔しい? とでも言いたげににやって笑うんです

 だからなんでそんなことするのって、聞きたいんだけど、やっぱり声は出なくって、そんなことを繰り返してたら、私の姿がだんだんお母さんに代わっていって、だけど、やっぱりみんなは気が付かなくって、それがこわくって、それでお母さんが私に言うんです

 にやって、笑って、私に何かを言おうとしてそれで、声が聞けないままで目を覚ますんです


 それで私は汗をびっしょり書いて、目を覚まして手足をバタバタさせてあぁ大丈夫だ、って安心して胸をなでおろすんです

 それが恐ろしくて恐ろしくって、たまらなくなって、寝たらまた同じ夢を見るんじゃないかって、こわくなって眠れなくなるんです


 おばあちゃんの連絡先は結局教えてもらえなかったです

 だからお母さんがトイレに行ったスキにスマートフォンの電話帳を盗み見しちゃいました

 メモ帳に住所と電話番号を書きなぐって大急ぎで部屋にしまったのでバレてないともいます。こういうことを平気で出来ちゃう私はやっぱりわるい子かな?

 でも、これは私にとっては必要なものだから、だから、しょうがないんです

 けどやっぱり悪いことだし罪悪感がすごいです

 あぁゆううつになってきました



 取りあえずノープランなんですけど、おばあちゃんちに電話してみたいです

 でも、私なんかが電話しても大丈夫なのかな?

 そもそもおばあちゃんは知らない番号から電話来たら取ってくれるのかな?

 オレオレ詐欺と間違われたりしそうでちょっと怖いな、なんて思います

 でも、迷ってても仕方ないし、ええいままよ! の精神です



 踏ん切りがつかない



 結局電話するのに三日かかりました

 なんというか自分の不甲斐なさにおどろきを通り越して呆れます

 でも仕方ないじゃないですか。だって、向こうは私が電話してくるなんて絶対思っても見ないだろうし!

 それで結局どうなったかっていうと、ちょっとだけお話をして、それだけだったんですけど、でもまた電話しておいでって言ってくれて、あぁ電話してもいいんだって、なんとなく許された感じがしてホッとしました

 電話するのってめいわくかもしれないって思ってたから、そういってもらえるとすごくほっとします。例え社交辞令だったとしても、でも少なくともめいわくではないのかなって思えるから、だからホッとします



 そうでした。おばあちゃんちに電話したのはおばあちゃんと話すのだけが目的ってわけじゃないんでした

 でも唐突にそんなお願い事したらやっぱりめいわくだと思うし、何度か電話してお話をしてから、切り出そうかなって、思います



 気が付けばそろそろ冬です

 もうそろそろ二学期が終わっちゃいます

 そうそう結局生徒会には立候補しませんでした。私は立候補しなかったんですけど、お友達が立候補しました

 それでその子が見事当選しまして、というかほかにやりたがった子がいなくって、候補者一人で無事当選してました。本人は消去法みたいでいやだとか何とかぶーたれてたんですけど、決まったものは仕方ないって思います

 それで、そのことちょっとした約束をしたんです。これについては進級した後で改めて日記に書くときにまとめて書くと思うので、今は書かないことにします

 大事なのはそろそろ二学期が終わっちゃうってことです

 先生との宿題の期限まであと三か月くらいしか残ってないってことなんです

 そうなんです。そろそろみんなは進学したい高校をなんとなくでも絞り始めてるみたいで、私も何故かちょっとだけ焦ります

 ちょっとじゃないです、私はどうすればいいのかなって、どう選べばいいのかなって、何を選べばいいのかなって、未だに何にもはっきりしてなくって、だからすごく、すごく焦ってます

 今までみたいに目をそらして何とかなる問題じゃないんです

 逃げられない問題なんです

 ちゃんと向き合わないといけないことで、でも今こうしてなやめてるのってもしかしたら幸運だったかもしれません

 たぶん、去年のままの私だったら、多分お母さんがそう望むだろうし、学力的にも問題ないだろうから県内で一番難しい高校を受けたと思います。何にも考えずにそこで何をするって、何をしたいからって、そういうことを何にも考えないでただ一番難しいところを受けて、多分そこの高校に行ったと思います

 でも、それじゃダメだって、なんとなく思うんです

 ちゃんと自分と向き合って、自分の将来を決めることだから、死ぬための生き方じゃなくって、生きるための生き方を選ばないといけないから、だから大事だって、そう思います



 一学期二学期中間とちょっと下がり気味だった成績も二学期の期末テストでは持ち直して、何事もなく二学期を終われそうでほっとしてます

 このまま成績が緩やかな下降線だったらきっとわるい子ノートを書くことになっていただろうし、そういう意味でもホッとしました

 もう、あれをするのは本当にイヤです


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