十二冊目――七年目の記録秋――



 新学期、始まりました

 残暑がきびしいです

 体育祭の準備が大詰めです。去年までとは運動量が全然違うので大変です、へとへとです

 でも、それはそれで楽しい気もします

 楽しいってこういう感覚なんですね、良く分からなかったんですけど、なんとなくわかってきた気がします

 この感覚を悪いものだって、私はそんな風に思いたくないなって、思ってしまいました。それに、もしこれが本当に悪いことならこんなふうに学校でみんなで一生けんめい何かをするっていうのが全部悪いことになっちゃう気がするんです

 そうすると学校はわるい子を育ててるってことになっちゃって、それはきっと違うって思うんです

 だらくって、本当は何なんでしょう?



 だらくしているのはお母さんだ



 自殺するのはイケナイコトだって、言ってました

 世界に必要ないものが自分からいなくなることの何がいけないんでしょうか?

 必要ないものを捨てることの何がいけないんでしょうか?

 くさっちゃったリンゴは捨てちゃうのに、くさっちゃった人間は捨てちゃいけないんでしょうか?

 使えなくなった鉛筆は捨てちゃうのに、使えなくなった人間を捨てるのはどうしていけないんだろうね

 私には違いが良く分かりません。だって、私がいらない人間だから、だから私は私を捨てないといけないって思うから、だからなんで自殺しちゃいけないんでしょう?

 だって、お母さんは私が死んだら喜びます

 お父さんは良く分かりませんけど、少なくともお母さんは喜ぶと思うんです。もしかしたら泣くふりくらいはするかもしれませんけど、それは本心から悲しんでるわけじゃないんじゃないかなって、私は勝手に想像してます

 だって、お母さんにとって私の価値はガチャと比べるくらいのモノなんです。ガチャと比べるってことは、ゲームのデータそのものよりもずっと低いってことだと思うんです

 だから、そんなくらいの価値しかない私なんか必要ないって、そう思うんです

 あっ、でも、お姉さんや学校の先生やクラスのお友達は悲しんでくれるのかな?

 分かんないです

 でも、あんまり悲しまないでもらえたほうが私は気が楽だなぁって思いました。だって、悲しむ人がいないから、私は気軽に自分を捨ててしまおうって思っているんだから、悲しむ人がいるんだったら気軽じゃなくなっちゃいます



 私はどうすればいいのかな?

 段々良く分かんなくなってきました

 それとも最初っから良く分かってなかったのかな?



 体育祭がそろそろです

 新聞部の号外が少し増えました

 新聞部的にも体育祭は重要行事らしいのです

 そういえば、よくアニメとか漫画とかにあるらしい文化祭というのはないみたいです。ちょっとせつない

 中学校は小学校の時よりクラスが増えてその数六つ!

 なので、赤白対抗だった小学校と違ってライバルが増えました! はちまきです! 赤、白、青、緑、黄色、紫の六色対決です!

 すごい!

 私は緑組です。運動は苦手だけどがんばる!



 最近雨降り続きです。台風も来るそうで、体育祭の日の天気が気になってしまいます。運動はあんまり得意じゃないけど、みんなで一緒になってがんばるのは楽しいです。晴れるといいなって思います



 体育祭疲れた!

 緑組はおしくも四位でした!

 一位が紅組で二位が紫組、三位が黄色組で四位が緑組、五位が白組で六位が青組でした! 黄色組とは二十点差だったのでおしくも逃げきられたかっこうです!

 応援団のみんなとかすごい声出して、すごかったですよ!

 中学校にもなると家族と一緒にご飯を食べたりはあんまりしないみたいで、一人ぼっちを感じなくってすんだのもよかったです

 相変わらずお母さんは見にきてなんかくれませんからね。もう慣れちゃいました



 体育祭が終わったと思ったらもう中間テストなんだって。中学校はやることがたくさんで大変です

 でも私は良い子にならないといけないのでちゃんと勉強もしてますからね、対策はしなくってもばっちりです

 テストでいい点とってもお母さんはあんまりほめてくれないけど、先生はほめてくれます。でもきっとテストで悪い点とったらお母さんがまた私にわるい子ノートさせるんです。きっとです。きっと、勉強しなかったからテストダメだったね、わるい子だねって、私に私をしからせるんです。それはつらいです、そんなのいやです。だから、私は勉強しないと、勉強して、テストでいい点とって、少しでもいい子のふりをしていないと

 もう捨てられたっていいかなって思ってます。でも、わるい子ノートだけはいやです。私がいなくなる気がします。鏡の自分が私じゃなくってべつの私が、私じゃない私になるみたいな、段々私がいなくなっていくみたいな。私はお母さんの都合のいいお人形さんじゃないんです

 私は私です。私のはずです



 体育祭の号外を新聞部で作りました

 三年生の先輩は引退なのでこれが最後です

 記事の書き方とか色々教えてもらったので、私も今回はちゃんと頑張りました

 ふだんがんばってないわけじゃないけど、ちゃんと気合い入れて記事を書いたのは初めてです。だっていつもは、あんまり書くことないですし

 この新聞を発行したらもうテスト週間です

 そろそろ定期テストにも慣れてきました

 私が勉強できるってみんなにバレたので、勉強教えてってせがまれます

 人に頼られるなんて初めてなので、なんだがこそばゆい感じです

 私の家にいってもいい? って聞かれたんですけど、お母さんを見られるのやだなって思っちゃって、うーん、うちは多分ダメって言っちゃいました

 こういうウソついちゃうのもわるい子です

 はぁ、でもみんなをお母さんとは合わせられない



 復習しながらみんなと一緒に勉強しました。みんな勉強してるそばからおかし食べたり、ゲームしようとしたり、テレビ見たり雑誌読もうとしたり、で全然勉強しようとしませんでした。みんなわるい子です

 でも、みんな楽しそうです。きっと私にとっての悪いこととみんなの悪いことが違うんだって、そう思いました

 やっぱり私が間違ってるのかな? そうだよね、だってお母さんは悪い人でいっつも間違ってるもん。そんな風に育てられた私だって、やっぱり正しいわけないもんね

 それから、またテストで悪い点になっちゃうよって、先生に聞いたけど今度のテスト難しいんだって、って言って何とかみんなを勉強するようにゆうどうしました

 思ったより進まなかったけど、一緒に勉強するのは新しい発見があって楽しかったです

 また教えてって、言われたからいいよって言って別れました

 家に帰ったらお母さんが不きげんそうに下まぶたにクマを作ってました。徹夜でゲームでもしてたのかな? 友達と一緒に勉強してたって言ったらそう、ってそっけなかったです

 やっぱりもう私には興味ないみたいです

 なんでかな?

 でも、平気です。私もお母さんにあんまり興味なくなってきたし

 それに結局私は最後にはここからいなくなることを選ぶんです。これはもう決めたことだし、今更お母さんが私のことを完全にいやになったところで大した違いもないです

 遅いか早いか、思ったよりも早まっちゃうかどうかってそのくらいの違いしかないんですから



 テストの最終日でした

 手ごたえは上々です

 特に分からなかったこともあんまりなかったし、時間も結構余裕をもって見直し出来ましたし、きっと大丈夫だと思います

 そういえば、なんでそんなに勉強できるのって? お友達に聞かれて、ぱっと答えが出なくて、勉強してるから? って答えちゃったんです

 ので、ちょっと書きながら考えてみようかなって思ったんですけど、

 あんまり深く考えなくっても、理由が分かりました

 こうやって考え事しながら日記付けたり、勉強したりしてれば、私がいやな、悪い子だっていう現実から逃げられるからです

 こういうの本当は良くないのかな?

 よくちゃんと自分と向き合いなさいって言いますもんね、多分良くないんだと思います。でも私は悪い子だから、価値がないから、いやな私を見ないようにするために、一生けんめい勉強したり図書館で本を読んだり、こうやって日記を書いたりしてるんです。新聞部で使う記事を書くのも同じような理由できらいじゃないです

 きらいじゃないことは出来ます。私は、私よりもきらいなものって二つしかないので、それ以外ならきっとなんだって出来ます

 勉強してるときは勉強する以外のことを考えなくっていいから、勉強するのは好きです

 でも、勉強してるときにふっと息をぬいたりすると、あぁ私って悪い子だってなって、時々つらくなります

 でも勉強してないときはずっとつらくて胸のあたりがぐぅってなってずぅって重いから、勉強してたいです



 台風が来ました

 今年はこれから台風ラッシュなんだそうです

 しかも結構大きいのが来るんだそうです

 カッパ用意したほうがいいのかな? でも、多分傘しかないよね? 古いカッパはもう小さいし、うーん。まぁ傘で行けばいいかな?



 雨でした

 結構雨強くって、大変でした

 明日テストが帰ってきます



 テストが帰ってきました

 平均点はまた少し上がりました

 勉強するのは好きです

 でも、少し不安になります。現実とうひで勉強してテストの点を上げて、それで何になるんだろうって、むなしくなりました

 勉強は、多分将来立派な人になるためにするんだと思います

 人に何かを教えたり、それこそお母さんみたいな人にならないようにするために、私たちは一生けんめい勉強して、いろんなことを知って、たくわえて、大人になるんだと思います

 それなら、大人になる前にいなくならないといけない私は一体何のために勉強してるんでしょう?

 見たくないものから目をそらすために勉強してます

 それでいろんなことを知ったとしても、一体何になるんでしょう?

 考えれば、考えるほど意味が、ないですね

 私には勉強するに足るちゃんとした理由さえないんです

 あぁ、ヤダな考えなければよかった

 気が付かなければよかった

 知っちゃったら、これは、

 むなしいよ



 もうそろそろ寒いです

 今年は一段と寒い気がします



 紅葉っていいですね

 木がかれる前に赤くなるのはなんだか幻想的ですきです

 だって、死ぬ前に真っ赤になるなんてすてきじゃないですか

 自分は今ここにいるんだぞーって周りにうったえてるみたいで、なんだかそういうのかっこ良くないですか?

 私少しだけ憧れます

 でも、いなくなる時は猫みたいにひっそり誰にも知られない場所で消えて聞くのが理想だなって思うんです

 ひっそり誰にも気づかれないで消えていければきっと誰にも迷惑かけなくて済むってそう思うから



 そういえば、私はお母さんに捨てられたくなくって、だからいい子にしてなくちゃって、そう思っていて、だから、もう捨てられたって別にいいかなって思っている今でさえいい子でいようとしてるのはなんでなんだろう?

 習慣なのかな?

 いい子で居続けないといけないっていう習慣が、私をそうさせるのかな?

 意味がなくても人は生きるんだね。でも、私には資格がないの

 意味なく生きる資格がないの。生きているだけでじゃまな存在なの

 ほんとは、みんなとおんなじように生きたかったのかな?

 もうそれも良く分からないよ

 ただ、私に分かるのは、私のお母さんはろくでもないって、ただそれだけ


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