十冊目――七年目の記録夏――


 梅雨は苦手です

 雨は別に平気です。ただ、梅雨は体がなんとなく浮つく感じがあって、気持ちが落ち着かなくなるから、苦手です

 どうしても、いやなことを考えちゃいます

 でもそういう時はそっと雨の足音を聞くといいって、本で読んだのでそうするようにしています

 梅雨は苦手ですけど、雨は好きです



 初めての定期テストにそうぐうしました!

 勉強は、いい子にしないといけないからずっとお家でやっていたので、そんなに難しくはなかったですけど、テストを何回も何枚も解かないといけないのはちょっと疲れます。背骨がぐーってなります

 勉強は、がんばったらがんばった分だけ頭に入ってくるのできらいじゃないです

 少なくともいい子になるよりも簡単でいいです

 いい子って何なんですか?



 今日、中間テストが帰ってきました!

 こういうのは平均点を出すのがいいんだそうです。私は平均は88点でした!

 小学校の頃は勉強できてすごいなんて言われたこともなかったけど、中学校に入ったら勉強できるのはすごいことらしいのです

 私はそれなりにすごいです!

 こうやってすぐに調子に乗るのもわるい子ですね、反省



 最近は、じめじめしてて暑いです。中学校は小学校とは全然違います、いろんなことが山ほどたくさんあります。色々やってるといい子にならないといけないってことを忘れそうになります

 最近はわるい子ノートを書かされることも少なくなって、鏡の自分をしからなくってもよくなってきて、気持ちが落ち着いていて、いいです



 運動会、じゃなかった、体育祭の練習が始まりました

 中学校は9月の終わりごろにあるそうです。今年はーなんて言ってたのでもしかしたら一年ごとに違うのかもしれません。良く分かりません


 でも夏休み挟んじゃうから、こういうのってどうなんでしょうね?



 学校に行って、勉強して、帰ってきて勉強して、時々お姉さんと電話をします

 お姉さんは電話でいろんなことを聞いてくれます。今までお母さんが聞いてくれなくって全然話せなかったこととか、たくさんお姉さんに話しています

 本当はこういうのよくないって思うんです

 だって、お姉さんにも迷惑だと思うし、何よりお母さんに話さないようなことをお姉さんに話すのって、多分いい子じゃないです

 でも、お姉さんは優しくて、だから甘えたくなっちゃいます

 こういうのが、私がわるい子だっていう証明になるんでしょうね

 だから早く、ここからいなくならないとって思うんです。でも、お姉さんが時々いうんです、いなくなろうとするなんて馬鹿なこと考えちゃだめだよって、そういうんです

 私がいなくなったほうがみんなのためになると思うんです。でもお姉さんがそういうならまだ甘えていたいなって、私はそう思っちゃうんです

 ダメなのに、こんなふうに甘えちゃったらダメなのに



 そろそろ期末テストです

 一学期の範囲全部だそうです

 クラスのみんながうわーってなげきの声でふるえてました

 特に運動部の人たちのうらみごとがすごいです

 かーちゃんに怒られる―! って頭をかきむしってる子もいました

 そういえば、私がわるい点を取ったらやっぱりまたわるい子ノート書かなきゃいけないのかな? 

 あれはツライからいやです

 そんな理由でいい子になろうとしてる私はやっぱりわるい子なんだろうなって、思いました



 テストが帰ってきました。平均点は少し上がりました

 運動部に入ってる女の子たちの目がこわかったです

 一学期もそろそろ終わりで、そうしたら夏休みです

 今年の夏休みはどうしたらいいかな? 新聞部の活動も特にないし、また図書館にでも行こうかなって思ってます

 それにしても私くらい夏休みがきらいな中学生っていないんじゃないかなって、思いました。だって、夏休みになると給食食べられないじゃないですか

 お母さんのごはんは相変わらず味がしないです

 生理が来たのだって、もう一年くらい前になるのに私はまだ小さい子供なんだそうです

 ふつう中学生になったらもう少し大人扱いしてくれてもいいって思います

 だって、切符だってもう大人料金なんですよ?

 それなのに私はまだ小さな子供扱いです

 それともお母さんにブラが欲しいって言わないとダメなのかな? そういってもまだ小さいから必要ないよねって言われそうでこわいです

 別に子供用インナーが着られないってわけでもないからいいといえばいいんだけど、そんなに子供扱いされても、私だって今年13才です

 背だってもうお母さんと比べられるくらいに大きくなったのに、それにお母さんの言う毒素って何のことを言ってるんでしょう?

 お母さんとお父さんのごはんにはジャガイモの芽でも入ってるのかな?



 夏休みなんだって、お姉さんに電話で話したらすごく羨ましがってました

 夏の間に遊びにいこっかって誘われちゃいました。すごくいきたいです

 でも海に行くとかだと、水着を買わなくちゃいけなくって、そうするとお母さんは絶対に一人では買いに行かせてもらえないし、どこの誰と行くのかも全部詳細に話さないと行っちゃダメっていうから、難しいです

 私の私服はいまだに小学校中学年くらいの女の子が着るような子供っぽい服ばっかりなんです。少しは私もほかの子と同じようなおしゃれがしたいなって、思います



 お姉さんと遊びに行く計画を立てました。水着とか買えないし泳ぐのはダメそうって言ったら、お姉さんがすごく食いついて来て、それなら私が買ってあげるから! ってすごい勢いでした

 私はびっくりして、流されるままにそれならって、って言っちゃんたんですけど、ダメですこれじゃあわるい子です

 水着高いです

 そんなの買ってもらうなんてわるい子だって思って、一回切った電話をもっかいかけてやっぱりわるいし、良くないからって言ったら、お姉さんがすごくしょんぼりしてしまって、なんだか私がわるいことをしている気分になってきました。

 私って、どこまで行っても何をやってもわるい子です

 でも同じ悪いならお姉さんに喜んでもらえる悪いがいいなって思って、やっぱり水着を選んでもらうことにしました

 もしかすると初めて楽しい夏休みを過ごせるかもしれません

 ちょっとドキドキです



 終業式でした

 学期末は毎回いろんな荷物を持って帰らないといけないから大変です

 時々、親御さんに手伝ってもらって持って帰る子がいますけど、アレ少し羨ましいです。私は頼んでもダメだと思うから頼んだことないです

 お母さんは絶対にいやがるって想像つきますし

 だから大変にならないように少しずつ片づけていたんですけど

 ほら、そのほうがいい子じゃないですか

 通知表にもいい子ですって書いてもらいました

 でも、私は本当はわるい子です

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る