第2話

俺は都会の空気に馴染めなかった。ご近所さんみんな友達の田舎とは違い、東京はお隣さんもご近所さんもみんな他人なのだ。世間的には当たり前だと言われればそれはそうなのかもしれない。でも、俺には余ったご飯を分けてくれる隣のおばあちゃんや、毎日声をかけてくれるご近所さんの方が当たり前なのだ。それは、会社でも同じだった。上司から毎日怒られて、それでも必死に食いついた。それでも俺はゴミくず扱い。もうなんだかバカバカしくなってきた。同期のアイツは親のコネで入ったくせに、いい扱いを受けていた。妬み、嫉み、嫉妬。俺の心には毎日そんな感情しか生まれなくなったのだ。


母が亡くなったのはつい最近のことだった。父親は僕が幼い頃に亡くなったので、母は女手一つでここまで僕を育ててくれた。最期に僕の握った手を優しく握り返してくれた事は忘れることが出来ない。お葬式もお通夜も終わり、母の遺品を整理していると、タンスの奥から1冊の通帳が見つかった。僕はそれを見て息を飲んだ。父親が母に託したお金だった。僕はこんな額のお金をどう使えば良いのか全く想像がつかなかった。ただ、それを見ても僕は働くのを辞めようとは思わなかった。僕は大学でろくに勉強もせず遊び呆けて就職活動もしようとしなかった。だから、母が頼み込んで入れてくれたこの会社で僕は定年まで働く。それが僕の使命だと母が亡くなった時、心に決めたのだった。

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貰った恩はこう返せ 咲花 小春 @amirocklock

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