topics16 どうしてアナタはそうなんだろう……

 第24帖 胡蝶(【超訳】源氏物語episode24 娘なの? 恋人なの?)に寄せて


 ああまたですよ。息子が元服するような年になり、少しは大人になったかと思っていればまたですよ。源氏くんの病気発症です。


 若い頃の恋人夕顔の忘れ形見である玉鬘を引き取り、源氏は養女として彼女の面倒を見ることにしました。突然亡くなってしまった夕顔の君。夕顔の君にしてあげられなかった分まで娘の玉鬘を幸せにしてあげたいと思うのは至極納得のいく展開であります。

 突然できた年頃の娘に興味があるらしい公達きんだちを眺めてはニンマリしながらお父さん気分を楽しんでいたのかと思いきや……


「親子の愛情にもうひとつの愛情を加えたって別に構わないでしょ?」



 だとぉ???



 いかんでしょーーが!!!

 フツー、加わらんでしょーーが!!!!!


 これ以上はしないからって添い寝したって……。


 なんじゃあ、そりゃぁぁぁぁ!


 どうしたいんだ。源氏くん。

 いいお婿さん探しをして娘として玉鬘ちゃんを幸せにしてあげたいんじゃないの?

 亡くなってしまったお母さんの夕顔さんの分も幸せにしてあげたいんじゃないの?

  

 それが何?

 やっぱりキレーだから俺も付き合いたいなって?

 総勢何人だかわからない愛人グループに玉鬘ちゃんも入れたいって?


 父親がわりだと思っている人から想定外の恋の告白をされてうろたえる玉鬘ちゃん。どう対応していいかわからなくなりぶるぶる震えちゃうの。(当然の反応よね)


 そんな姿を見て放たれる源氏の言葉。

「なんでそんなに嫌うわけ? 今まで誰にも言わずにこの気持ちを隠してたんだよ? もともと親として愛している上に恋人としても愛すればこれ以上愛される人もいないんじゃない? キミに恋文ラブレターを贈ってくるヤツらよりよっぽど俺の方が愛してんじゃん。こんなに大きい愛で包み込んでるんだよ?」


 どうでしょう。この開き直り。このセリフを受ける部分をかの与謝野晶子センセイは現代語訳で

「変態的な理屈である」

 と訳しました。


 ぶらぼぉぉぉ!

 えくせれんとっっっ!!

 よくぞ言ってくれました!!!



 ばっかじゃなかろうか。

 紫の上だって明石の御方だって同じ敷地内に暮らしているんだよ?

 玉鬘ちゃんの母親代わりをお願いしている花散里の君だって同じ夏の御殿で一緒に住んでいるんだよ?

 女性陣がどう思うのか想像できない??


 どうしてアナタは……


 


 すぐに恋の炎を燃やしてしまうの……。

 惚れる発火装置は瞬間でついちゃうの?

 

 もうビョーキのレベルじゃないだろうか。

 つけるクスリもありゃしないわよ。


 平安時代ってこの思考回路は異常じゃないんでしょうか。


 もう源氏が発する「好き」という言葉は、「今日もいい天気だね」くらいのお気軽さかもしれません。

 でもそんなお気軽さで御簾内に入られても困るし、ましてや添い寝なんてねぇ。。。


 何度も言いますが、たとえ血のつながった親子でも異性は直接顔を合わせません。血のつながっていない異性同士なら言うに及ばずです。そもそも源氏と玉鬘が直接言葉を交わしたり、ましてや顔を合わすなどその時点で「異常事態」です。恋心があるなしにかかわらずね。ましてや嫁入り前の娘に添い寝するなぞ、もうもう「非常事態宣言」ですよ。娘にとっては「災害」ですよ。


 ただこのあと、珍しく(?)源氏は玉鬘とは男女の仲にはならずに玉鬘は別の人と結婚します。

 今やたらメディアでよく聞く表現をすると

「一線を越えていない」仲?

 一線は超えていないけれど、その線上?? 

 線は踏んでいるよね。超えはしなかったかもしれないけれど。


 源氏物語の解説書には源氏は血のつながった母娘のどちらにもには手を出さなかったって書いてありましたけれど、


 手を出す気満々じゃん!

 あわよくば「一線を越える」気なんじゃないの?


 もしくは、若い女の子をからかって照れちゃうリアクションを見て楽しんでいるの? それはそれでキモくない? このとき源氏36歳、玉鬘が22歳。現代のオジサンがやったらカンペキセクハラでしょうよ。イケメンだったら許されるの?

 まあ、年齢差以上に「養父と養女」という関係がモンダイなんですけれどね。


 十九帖薄雲では六条御息所の娘の秋好中宮も口説こうとしてましたよ。中宮さまが呆れかえって相手にしなかったからそれ以上は進みませんでしたけど。


 



 ふぅぅぅぅぅぅ。

 なんで?

 どうしてアナタは……。



 ああもうため息しか出てきません。



 しかもね、紫の上には玉鬘のことを「ホントに可愛い子なんだよ~」などと抜かす始末。(このとき紫の上が28歳)またオットの病気が発症しそうだと気づいて紫の上がちくりと嫌み(?)を言いますが、そこでひるまないのが「源氏クオリティ」


 なんなんだろう。そこに山があれば登るのか。オンナがいれば口説くのか。


 もう何度こうつぶやいているでしょうか。


 これが平安時代のスタンダードなの?

 この物語をリアルタイムで楽しんだ平安のお姫様がたはどういうリアクションだったんだろう。きゃあステキ! わたくしも玉鬘になりたいわぁってトキメクの? 

 


 現代はねぇ……。



 知らん。



☆【超訳】源氏物語のご案内

関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。


episode24 娘なの? 恋人なの?   胡蝶

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054884194271

 

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