topics6 お別れ会だってタイヘンだわよ
第12帖 須磨(【超訳】源氏物語episode12 とりあえず謹慎します。)に寄せて
お父さんの桐壺院が亡くなり、政治の中心が右大臣派となり、源氏は冷遇されるようになるの。なのにまだ朱雀帝のお妃になった朧月夜と付き合っていてそれもバレちゃった。怒った右大臣や
まあ、帝の奥さんに手を出したのは本当だけど、別に政治的に謀反を起こす気なんてまったくない源氏は朝廷から罰が下るまえに役職を返上して都を離れて須磨(兵庫県神戸市)で謹慎生活を送ろうと決めるの。
最少人数の家来だけを連れていく須磨行き。そうなるとたくさんの人とお別れしないといけないのよ。カノジョとか、カノジョとか、カノジョとか。
付き合っている人以外にも息子の夕霧や夕霧を育てている左大臣家、それから後見人をしている東宮(源氏の罪の子ね)、親友の頭中将や親しくしている兄弟の
それから大切にしている人たちとのお別れですよ。直接会いに行ったり、手紙でだったりお別れをします。お互いが和歌を贈りあいます。
まずは花散里の君。episode11で登場した源氏にとっては心落ち着く優しいカノジョ。
~ 月影の 宿れる袖は 狭くとも とめてぞ見ばや 飽かぬ光を ~
(私の袖に写っている月明かりは小さいけれど、いつまでもその光をあなただと思って見つめているわ)
~ 行きめぐり つひにすむべき 月影の しばし曇らん 空なながめそ ~
(月はまた空を巡ってくるからね、少しの間雲にかくれるけれどそんなに落ち込まないで?)
月の光を光源氏にたとえて待っているわと源氏に告げます。源氏も自分を月に見立てていつか戻るからと返事をします。
それから須磨行きの発端となった朧月夜とのお別れ。これは手紙でのやりとり。さすがに会いには行けなかったみたいね。
~
(キミに逢えなくて泣き濡れたこと(キミに恋したこと)が須磨に流されるきっかけだったね)
~ 涙川 浮ぶ
(あなたにまた逢える日を待てないで、わたしは涙の川に消えちゃうわ)
朧月夜も自分とのことで源氏がこんな辛い目にあうなんて自分のことのように悲しむの。彼女はこの後も朱雀帝のお妃として後宮に居て、周りから陰口をたたかれるのよね。
そして藤壺の宮さま。源氏にとって永遠の憧れの
~ 見しは無く 有るは悲しき 世のはてを 背きしかひも なくなくぞ
(院はお亡くなりになり、生きていらっしゃるあなたも辛い目に遭い、出家した甲斐もなく、ただただ泣いております)
~ 別れしに 悲しきことは 尽きにしを またもこの世の
(父院との別れが最大の悲しみだと思っていたのに、それ以上の辛さがこの世にはありました)
今までは源氏がまた大胆な行動に出ちゃうと困るから藤壺の宮さまは自分の気持ちは閉じ込めていたんだけれど、出家してもう恋愛しない状況になって(源氏も出家した尼の人とは男女の仲にはならない)、源氏のことを想い、恋しく思ったんですって。源氏が須磨に行っちゃってからは、「(あなたのために)涙を流すことがわたくしの仕事です」なんて歌を詠むのよね。
最後に紫の上ね。最後の夜を一緒に過ごして出発前に贈り合った歌。
~ 生ける世の 別れを知らで 契りつつ 命を人に 限りけるかな ~
(生きている間にまさか離れてしまうなんて思わなかったよ。命ある限りあなたとは一緒だと信じていたから)
~ 惜しからぬ 命に代へて 目の前の 別れをしばし とどめてしがな ~
(わたしの命と引き換えにできるのなら、少しでも時間を止めてしまいたいわ。出発の時間を遅らせられるのなら)
死んでもいいから時間をとめて。いや死んじゃったら時間はとまるというか、もう源氏と会えないよ? とつっこもうと思えばつっこめる歌なんだけど、もう取り乱して訳がわからない、という気持ちを和歌にこめたのですって。
こんなにみんなを悲しませてねぇ。ぜーんぶ光の君、アナタのせい。いくら現代とは違っている恋愛観だからと言っても、悲しいものは悲しい。ほんとにこの時代の女子はお可哀想。お気の毒。
これでさぁ、須磨へ行くでしょ。そこから明石へと移ってさぁ……、今度は明石の君と出会うのよ。
アホ――――! 謹慎しに行ったんでしょうが。紫の上はじめみんな泣いて泣いて寂しがってるんだよ? なんで新しいカノジョ作っちゃってんの!!
あっほ――――!!
まあね、この明石の君がまたこの物語ではキーパーソンですけれど、うう~ん、よくこんな展開思いつきますわ、紫式部センセイ。スゴイです。
けれど、紫の上が可哀想すぎるんですけど。センセイ。
☆【超訳】源氏物語のご案内
関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。
episode12 とりあえず謹慎します。 須磨
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054882611819
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