4 餌づけ


君は、めんどくさがり。

手を汚すのがきらいな女の子。


だから、手づかみで食べるものはいやだって顔をするけど

むいてあげて、一口大にしてあげて、はあいって口に運んであげると

おっきなくちをあけて、あーんてしあわせそうに食べる。


僕はいつだって君の臣下ですよ、お姫さま。



一日の終わりに、山椒の佃煮をつまんで、お酒呑んでたら

シャツの裾をくいくいって引っぱる子がいる。


なんですか。

僕を見上げてせいいっぱいおねだりしてる瞳。

うん、これはまだ、君には早すぎるよ。


立ち上がって、キッチンに君のおつまみを作りにいく。

小さく海苔で巻く、いくら2粒のごはん。

チーズとプチトマトをのせて、きつねの焦げをつけた食パン。


心配だな。君はこうして餌付けされたら

誰にでもなついて、ついていっちゃいそうだから。だいじょうぶかな。


そんな自分の想像で、勝手に愁いていたら

「パパ、私もちょうだい」

って、僕が剥いた蜜柑にむかって、おっきな口をあける君。


え、ママもなの? 

あ、その後ろで並んでいる子がいるよ。

まったく、仕方のない女の子たちだなぁ。






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