由梨花は俺が小学校6年生のときに佐々木家の地下室から焼身遺体として見つかった。体の火傷がが酷く死後数週間も遺棄されていたため由梨花本人なのかは解らなかった。だが、佐々木家にあった13年前由梨花が来ていた水着が発見されたため、身元は由梨花である可能性が非常に高いという結果になった。由梨花は海水浴場で連れ去られ、その後数年もの間監禁されていた。そして、性的虐待や暴行、犯人の趣味である拷問などをされ、食事は質素なものばかりで、トイレも行かせてもらえず垂れ流し状態だったらしい。

 この詳細な情報は犯人である佐々木聖斗の書き記した日記で明らかになった。

 そして、日記の最後のページにこんなメッセージが記されていた。



「もう飽きたので焼いた。彼女は最後まで美しく鳴いたよ。だが、スリルが足りない。だから書き記す。今まで何人も殺った。死体を食べた事だってある。おしりの部分がたまらなく美味だ。二の腕とかもいけたな。おっと話が逸れたな。さあ、警察の皆さん俺を逮捕してみろ。」




 高校生になった今も思い出す。佐々木聖斗。一生忘れられない名前だ。憎くて憎くてしょうがない。殺したくて殺したくてしょうがない。あいつは未だ逮捕されていない。それどころか尻尾さえもつかめていないのだ。俺の願いはただ1つ、やつを捕まえてほしいい。それだけだ。

 いつものように思い出してしまう。現に今も朝のホームルームの間そんなことを考えている。

「きょうは転校生がいるの。紹介しま~す!」

 陽気な教師は今日も元気だ。人の不幸も知らずにへらへらしやがって。

 ある1人の女子生徒が入ってきた。


 なんだかどこかで見たような気がするな……


「佐々木由梨花っていいます。どうぞよろしく」


 ……



 その女子生徒はおもむろに俺と目が合い、口をぱくぱくさせていた。



 それが俺には"お兄ちゃん"と言ったように見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君の声をもう一度聞かせてほしい。 馬鹿 @takuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る