ep.7 Crossing
ep.7-1 荒れる海
激しい雷雨。
荒れる海面、水底から湧き上がってくるかのような強い力は大波をうねらせ、いくつもの波の山がぶつかりあう。その様はさながら共食いでもしているようだった。
波と波の隙間。その山のような姿と比べてひどく小さな木の葉のようにしか見えぬ船影が、稲妻に照らされその輪郭をわずかながらに浮かばせる。
天の瞬く間にごうと唸る波が飛沫をあげて弾けると、その船は暗い夜の中に消えてしまった。
◇
重く立ち込めた鈍い色の雲の隙間で時おり稲妻が走っては空を照らす。窓に叩きつけるように降る雨は激しさを増し、部屋の中は雨音でいっぱいになる。
城内の一室、薄暗い執政室では誰もが沈黙を守り、紙を捲るささやかな音がわずかに耳に届くばかりだった。
東極部を束ねる権『
執務室で筆を走らせる執務官たちは、暗い目つきのまま、黙々と書類を作成していた。
ペン先から紡がれる文字を追えば、それは物資の輸送リストであることがわかる。穀物、食肉、それから鉄、銅、鉛。甲冑に槍の穂先、馬、投石機――。
濃厚に漂う戦争の気配に、一同は口は開かずとも暗澹たる思いを胸に抱く。
これは防衛用の資材ではない。これから海を渡った先の隣国を侵攻するための武力なのだと。
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