ep.1-4 討伐戦開始
一方、セレノから南へ馬を飛ばして二時間ほどの森では、反乱軍は慌ただしく迎撃の準備を進めていた。ブレイ
そしてその情報はすでに末端の兵たちにも届いている。
「おい、国軍が動いたようだぞ、思ってたより早いな。どうすんだ、カント」
見るからに
「どうするもなあ。俺は雇われの身だから上の考えには意見できねぇよ。まあ、このまま迎え撃つんじゃないのぉ? なんか昨日嬉しそうに秘策があるとか言ってたようだったしよ」
カントはよくは知らんが、と肩を
「ああ、なんかえらいご機嫌だったな。なんでも、どえらく腕の立つモンを雇ったらしいぜ」
その言葉にほう、とカントは眉を上げてみた。国軍の方にも領主様に仕える腕の立つ奴がいると聞いたことを思い出し、どちらがより腕利きかと興味が沸きかけたカントだが、まあそれもどうでもいいことだった。
生きてく為には金が必要だ。俺には金がいる。どっちが勝とうがどうでもいいのだ。金を貰って、命さえ落さないようにすれば。
そんなことを考えていると、召集を告げる乱暴な怒声がカントたちの耳へ届く。
「ま、俺たちは雇われ
二人はあまり状態が良いとはいえない片手剣を腰に提げると、粗末なテントを後にした。
◇
それから一時間後、それぞれ両軍は攻撃の準備を整え、自陣に
時折吹く強風が、木々の葉を揺らしては森をざわめかせる。ブレイ達国軍は森の手前で
ブレイは兵士たちの前に立つと、最後の確認事項をよく通る声で伝えた。
「諸君の数は総勢二十。敵の数は多くても三十程度。数では
「そして夜はごっちそうだー!」
ソカロの付け加えた一言に兵士たちの意気も上がる。ブレイの
「行け! 反乱分子を森から
その言葉を
◇
「戦況はこちらが優勢です。やはり相手は寄せ集め、付け焼刃の集団。陣形や連携は形になっておりません」
「そうか、しかし油断はするなよ」
は、と深く頭を下げて
戦闘を開始して数分。ブレイは森を見つめ、敵軍が次に
しかしこの勢いなら首謀者を引き
守備に割いている兵をすでに投降した敵兵の管理に向かわせるのもいいかと思った矢先、先ほどの
「なにごとだ?」
「ブレイ様、早急にこの場をお離れ下さい!今までの情報にはない敵兵が自陣に接近しています! 守備兵があたっておりますが時間稼ぎにしかならぬでしょう。さあ、お急ぎください!」
「分かった、すぐに
それを見送りつつ、ブレイはどこへ身を移すか考え、必要最低限の装備を手に、陣の中心であった本部から護衛兵を供にソカロの元へ森の中へと駆けだす。
しかし森に入る手前で、行く手を一人の男に阻まれる。
「どこに行くおつもりで? 指揮官殿」
目が合うなり、冷たい声色で尋ねられる。
いや、尋ねると言うよりは、何処にもいけないことを突きつけるような響きのある声だ。
ブレイ様、と
濃い灰茶の髪は後ろで
「……私は貴殿にどこへ行くおつもりかお尋ね致しているのですが。ご返答いただけないようだ」
もう一度男はブレイへと問い掛けながら、腰の
供の兵も槍を構え直し、相手の出方を
「貴様に返答する義務はない。そこを退け」
ブレイの返答に男は薄く笑うと、半月刀を自分の体に対して平行に構えて体勢を低くする。
「何処へ行こうと思えど、貴殿は私が
言葉を
その間の短さは
護衛兵の突き出した槍先を左へ体を流す事によって
傷口を押さえ
ブレイはパニックになりそうな体を持てる限りの理性で
「抵抗は無意味だ。貴殿の身を預からせていただく」
伸ばされた男の手が眼前の視界を
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