コント ネガティブなヤンキー

ジャンボ尾崎手配犯

第1話

舞台の真ん中にAとBがいる。

Aはリーゼントで特攻服を着ている。

B「おう、なんか相談があるんだって?」

A「俺、そろそろツッパリやめようかと思うんだよ」

B「お前、何歳になるんだっけ?」

A「35」

B「それは、今すぐ辞めたほうがいいね。寧ろ、よくそこまで続けたよな」

A「ごめん。嘘ついた。実は俺、38」

B「サバを読むなよ、サバを。変な見栄を張るんじゃないよ」

A「最近は、オヤジ狩りをやられる側になってきたからさ」

B「狩られてるんだ、不良なのに」

A「めっちゃ、狩られてる。身ぐるみはがされてるわ。こんなに日本の治安悪かったかってぐらい襲われてるよ。なんか、目立つらしい」

B「それは、目立つよ、この格好だもん。職質だってめっちゃされるだろう?」

A「すげえ、される。もう、逆に逮捕してほしいぐらいだよね。鞄の中見たって、オヤジ狩りに遭った後で、何も入ってないんだから。つーか、そっちを職質しろよなって」

B「まあ、もう辞め時なんだって。今時、こんな不良いないよ。絶滅危惧種だよ。国に保護してもらえ」

A「だけどさ、俺が辞めたら、族の連中が困るじゃんよ」

B「お前、暴走族のリーダーなの?」

A「いや、俺は会計」

B「暴走族に会計の役職なんてあるんだ。サークルみたいだな」

A「馬鹿にすんなよ。会計めっちゃ重要だから。飲みに行くときは、俺が全部払ってるからね」

B「お前、金づるなのかよ。オヤジ狩りに遭ってるだけじゃなくて、身内ににも金払ってんのかよ」

A「なめんなよ。北は高島平から南は成増まで走ってんだよ」

B「めっちゃ近所しか走ってないじゃん。板橋区からも出れてねえよ。自転車で行けるわ、その程度の距離」

A「だけど、最近はさ、若い奴らとも話が合わなくなってきてさ」

B「そりゃあ、お前、10代、20代の奴と38歳の話が合うわけないだろ。寧ろ、腫物だよ、そんな奴いたら。困ってるだろ、みんな」

A「一回、置いてかれそうになった」

B「はぶられてんじゃん、暴走族からも」

A「いや、法定速度守ってたからさ」

B「法定速度守る暴走族って聞いたことないわ。暴走してないのかよ」

A「いや、だって危ねえじゃん。俺、メットもちゃんと被ってるからさ。だから、みんなで走ってる時、検問に引っかかったんだけど、俺だけセーフだったからね」

B「暴走族としては駄目かもしれないけど、人としてはまともだろ。別にいいんじゃないの」

A「でも、俺はつっぱっていたいのよ、世の中に対して」

B「もっと別の事でつっぱれよ。族の方もお前がいなくなったって困らねえよ」

A「俺がいなくなったら。誰が飲み会の金だすんだよ!」

B「お前抜きでも勝手にやるだろ!」

A「いや、チームカメムシは俺がいないと駄目になる」

B「お前の入ってるところ、チームカメムシって言うんだ。ださいな」

A「一番の問題は、今バイクがないことなんだよ」

B「暴走族なのに、バイクないの」

A「後輩が俺に無断で借りてるみたい」

B「それは盗まれたんだろ。どうしてんの、今」

A「徒歩で暴走してる。こう、突然走ったり、突然止まったりして」

B「地味なことしてんな。やっぱむいてないんだよ」

A「そうか、俺は向いてないのか。よし、わかった。じゃあ、この特攻服とリーゼントお前にやるよ」

リーゼントを外すA。

B「いらねえよ!」

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