第一章 悪いのはトイレ 2358年1月24日
ぼく(レンタ)は太陽系から約一万三千光年離れたクディット星の調査に来ていた。そして、今日はその調査の最終日である。
「おっしゃあ!今日でやっと帰れるぅ
キャベツ!待ってろよ!」
ぼくは生まれも育ちも木星の惑星エウロパだ。エウロパでは、たくさんの種類の野菜の栽培が盛んに行われている。
ぼくはキャベツが好きだ。
地球に住んでいた頃の先祖から全員がキャベツ農家で、他の作物を育てるなんていう浮気なんてしない。
ぼくの家の教訓は...
「キャベツこそが正義!キャベツがあれば何でも出来る!」
である。
そして、ぼくはこの教訓は世の中で最も優れたものであると思ってるし、だからぼくの夢はキャベツ畑だけの星を作り、その星で暮らすことだ。
一日中キャベツに囲まれて暮らすことができたらどんなに幸せだろうか
...とニヤニヤしながらキャベツ星(仮)の想像していると隣で作業していた人間に声を掛けられた。
「レン。また、キャベツのこと考えてるだろ。
崖から落ちても助けてやんねぇからな」
彼の名はケイト。調査部の数少ない友達の一人である。頭が特別いいわけでも、ムキムキであるわけでもない。
しかし、ぼくとは全く違う点がある。
それは、彼は「エフェクター」なのである。
「エフェクター」とはある一つの効果を操ることができる者のことを言う。
その能力は遺伝によるもので彼の場合は浮遊効果を操れるが、効果を与えたりできるのは視認しているものに限られる。
「なんで素晴らしいキャベツを想像することがいけないんだ!」
「手が止まってたろ!それに崖から落ちそうだったじゃないか!」
「崖の下にキャベツが見えたんだ!」
「(´・ω・`)」
ぼくは、「エフェクター」ではない。
もちろん憧れたことはあるし、なりたいとも思ったことはある。
だけど・・・キャベツが周りにたくさんある家族に生まれたことは誇りに思っている。
「いいじゃないか!この三週間キャベツ食べてないんだぞ!」
「お前が全員の一ヶ月分のキャベツを一人ですぐに食ったからだろ!」
「ぼくのせいってのか?」
「じゃあ他に誰のせいっていうんだよ」
そんなどうでもいい話をしていたとき
ブーー!
突然手首に装着されていたブザーが鳴った。
とうとう終わったのだ、この星での一か月の任務が。
ぼくとケイトと他の仲間数人はそれぞれの時空機に乗り、帰ることになる。今から地球にある基地にテレポートすることが許可されるので、一瞬で帰ることができる。
しかし、事件が起きた。
腹がめっちゃ痛い。テレポートするまで我慢できそうにない。通信機でケイトに相談する。
「なぁケイ...」
「うん?」
「腹が痛い」
「じゃあ、早く自分の時空機のトイレ行けよ。」
「ぼくの、トイレ壊れ、てる...」
「なんでやねん!」
戦士団の決まりで、他人の戦闘機にはいることは許されていない。
「まぁまだ時間あるから、そこらへんでしてこいよ。」
「分かっ、た」
ぼくは近くの草むらに行き、ケイタは時空機に乗り込んだ。
...三分後
「全然治らねぇ...もういいやテレポートしてから病院で診ても、ら...」
...突然視界が暗くなっていった。
前にある枯れ木がぐにゃりと曲がり、
手足の感覚が薄れていく。
「な、んだ、」
いきなり誰かに引っ張られた。
「な...」
レンタは意識を失った。
スペースタイムキャベツ はろげん @harogen
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