第3話「妖怪アンサーの怪」

「とにかく、中を探索してみれば、何かわかるかも・・・」

「そうですね。シェインも同感です。ですが、姉御たちが・・・」

レイナもタオもしゃがみこみ、青い顔でガクガクブルブル震えている。

「あー、二人はここではなこちゃんと待ってる?」

「いやー、エクスのバカ!置いていくなんて酷い!」

「シェインまで俺を見捨てるのかー!?」

シェインは呆れた顔で僕の方を向いた。

「って、状況です。新入りさん、少し時間をおきましょう」

「じゃないと、姉御とタオ兄は使い物になりません。万が一戦闘になった場合、シェインと新入りさんで倒せないような強い相手が出てきてしまったら話にならないです」

と、突然、背後で

プルル・・・プルル・・・

と変な音がした。

僕らは驚いて背後を見ると、はなこちゃんが手にしたモノから発せられているようだった。

はなこちゃんはソレを手に取ると、パカッと開いた。

コンパクトか何かかなと思っていたのだけれど、違うようだ。

はなこちゃんはその謎の物体を見て、悲鳴を上げた。

「いやああああ!」

「ど、どうしたんだよ!突然、悲鳴なんてあげて、びっくりするだろうが!」

タオがシェインの腕を掴みながらそう言う。

どっちが兄なんだか・・・。

それより、突然、悲鳴を上げたはなこちゃんの方が僕は気になった。

「はなこちゃん、どうしたの? これ、コンパクト?」

僕は何気なく、そのコンパクト状のものに触れてしまった。

すると、コンパクトの鏡になっているはずの部分には

【妖怪:アンサー】

と書かれていたのに、僕が触れた途端、【通話中】に変わった。

「おもしろいコンパクトだね」

「お、お兄ちゃん、妖怪アンサーがきちゃうよお!どうしよう!」

すると、突然、コンパクトが喋りだした。

「こんにちは、諸君。さて、私に答えられない謎はない。さあ、私に質問を!」

「・・・」

突然に質問しろと言われて、簡単に質問なんてできない。

「なにこのコンパクト・・・。魔法のコンパクトか何か?」

「質問したな、質問したなぁ。答えよう。それは魔法のコンパクトではなく、携帯電話という機械なのだよ。見えない相手に声を送る装置と言った方が諸君にはわかりやすいだろう」

「なっるほどねー。じゃあ、あなたはどっかから声を送ってるのねー。わー便利だわ。こんな便利グッズが世の中にはあるのねー」

「お姉ちゃん!ダメ!もう質問しちゃダメ!」

強く強くはなこちゃんがそう言い張り、コンパクトを取り返そうとするが、タオが面白がって、レイナの手からケイタイデンワを奪う。

「へー、こりゃ便利だー。お嬢にも一つ持たせておきたいな」

「あ、そうそう、質問に答えてくれるんだったよな?アンタ、何者?」

「二つ目の質問だ、質問だね。私は妖怪アンサー。なんでも答える何でも知ってる、何でもお見通し、そして、最後にこれは私からの質問だよ」

「おお、こっちから質問ばっかして悪かったな。あんたの質問はなんだい?」

「私はどこにいるでしょう・・・くっくっくっくっく・・・」

タオはいたって真面目にはなこちゃんに聞いてきた。

「なあ、この魔法の装置ってのは相手の居場所はわからねーのか?」

「分かるわけないよ!だって、相手は妖怪アンサーだもん!この質問に答えられなかったら、妖怪アンサーが私たちの体の一部を切り取りに来ちゃうんだよ!!」

「なんで、質問しちゃうのぉ・・・。はなこ、あんなに質問しちゃダメって言ったのに・・・」

ケイタイデンワから妖怪アンサーの声が響く。

「答えられないか?答えられないだろぉ・・・。じゃあ、今からいくね」

ぷつん。つーつーつーつー。

ケイタイデンワは魔法が切れてしまった装置のように動かなくなった。

「あら?もう壊れちゃったのかしら?動かないわ」

「違うよ・・・。電話が切れただけ。妖怪アンサーが動き出したから・・・」

はなこちゃんが涙を流しながらそう言うと、ちょうど、廊下の向こうから大きな影が現れて、ゆっくりと近づいてくる。

かつーん・・・かつーん・・・かつーん。

「ままっまままっまま、まさか、妖怪アンサーなのか!?」

タオは先程までの勢いが消えて妹分の肩にしがみついてる。

「タオ兄、邪魔なのです」

「どうせ、今回もヴィランか何か・・・」

と、言いかけたシェインの声が止まった。

薄暗い中で、ようやく見えたその人影はまさに・・・そう、まさに・・・。

「ファントム!?」

ファントムは気分を害した様子で、ムッとした表情でこちらに言い放つ。

「私はファントムではない!妖怪アンサーだ!」

「ああ、私の顔は醜い。だから、他の人間の顔を奪って、あの愛しい娘に会うのだよ」

「あー、明らかにファントムさんです」

「愛しい娘って歌手の女の人よね?」

ファントムは顔を真っ赤にして怒ってみせた。

「なぜ知っている!?」

「あっれー?妖怪アンサーサマに知らないことなんてないんじゃなかったのか?」

ニヤニヤと悪い笑顔でタオがそう茶化した。

ファントムは更に激高する。

「とにかく、貴様達は私の質問に答えられなかった!よって、貴様の顔面の表皮を削りとって私の顔に移植してやるわ!」

「え!?逆ギレですか?ファントムさん大人げないのです」


【戦闘:妖怪アンサー(ファントム)】


「お兄ちゃんたち強いんだね。すごいよ、妖怪アンサーまで倒しちゃうなんて!」

はなこちゃんは僕たちを見て目をキラキラさせている。

「この人、どこから、この想区に入り込んじゃったのかしらねー」

「姉御、姉御、ファントムさんが来た方の廊下の先、見えますか?」

「ううん。私にはちょっと暗すぎて見えないわ」

「ファントムさんがでてきた部屋なんですが、本がぎっしり詰まってます」

「は?」

「え?」

「姉御の世界だと図書館というところです」

「なるほどねー。きっと、あの本の中から実体化してしまったのね」

「本から人物を呼び出すたぁ、こりゃ、よっぽど大物のカオステラーが潜んでやがるな」

「もしかしたら、今まで力を借りてきたヒーローたちが今度は妖怪として現れるかもしれないのね・・・。気を引き締めていきましょう」

「と、いうか、本物のお化けじゃないならなんにも怖くない!」

と、レイナが思わず本心を口走ってしまう。

「おうよ!本物じゃないならなーんも問題ない!」

タオもレイナに同意してふははははと笑いだした。

どうやら、二人共ずっと怖かったみたい・・・。

呆れる僕を尻目に二人は

「いくわよ、エクス!さっさとこの悪夢を終わらせて、はなこちゃんを家に帰しましょう」

僕ははなこちゃんの手をとって、三人の元へと急いだ。





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