掌編小説「鉄板」
ナガス
鉄板
最初に、報酬を聞かされる。
「このゲームに生き残った者には、一生遊んで暮らせるだけの報酬が渡される」
その次に、ゲームのルールを聞かされる。
「恋人と母親が同時に、焼けた鉄板の上に放り出される。お前はそのどちらかを助ける事が出来る。しかし、助けた人とお前は、入れ替わる。その後の入れ替えは、出来ない」
そして唐突に、始まった。鉄板の上には、恋人と、母親。逃げ場は無い。囲われている。
母親は私の顔を歪んだ表情で見つめてくる。恋人も歪んだ表情で見つめてくる。
何かを叫んでいる。怒っている。怒鳴っている。悲しんでいる。泣いている。
会場には、沢山の観客がいる。つまりこれは、見世物だ。
何人もの人間が、恋人と母親が焼かれていく所を見ている。
そして私の顔も、見つめてる。
笑いながら、見つめてくる。
私も笑いながら、見つめている。
私の口は、開かれているが、言葉が出てこない。
母親の顔から涙が流れ、蒸発する。
恋人の足の皮が焼け、鉄板にくっつき血が流れる。
私の口は、開かれているが、言葉が出てこない。
言葉を出す、つもりがない。
掌編小説「鉄板」 ナガス @nagasu18
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