サンドバッグ

「ごちそうさまでした……」

その人はカチャリと箸を置きそういった。

「ねぇ、殺して?」

トコトコをその人はこっちに近づきそう俺に言った。

「いいけど、その前に名前は?」

俺がそう聞くとその人は首をかしげた。

「今から死ぬ人に聞いてどうするの?」

俺は最初から殺すつもりはない、だけど、少しだけ望むことがあった。サンドバッグが欲しかったのだ。自分の感情を全て吐き出せる、自分が痛くない、自分勝手な考えだが、そういうサンドバッグが……。

「別に、気になっただけ」

俺は嘘を吐く。どうせこれを探してる人はいないのだろう。だからこれを飼ってやろう。最低な考えを悟らせないように。そう思って嘘を吐く。

「……名前なんてない…」

これはそう言った。

「……なら……黒ね」

そう言うとこれは不思議そうな顔をした。

「なんで……?私を殺してくれるんでしょ?なら私に名前なんて要らないでしょ?」

これはそう言った。

「いつかは、殺してあげる。でも今は丁度俺のサンドバッグが欲しかったの。だから黒を飼うことにした。逃げるなら今だよ?」

俺が黒にそう言うと黒は軽く笑った。

「嫌じゃない、いつか殺しくれるなら、サンドバッグにでもなるよ」

その言葉から俺と黒の関係は始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@Resentment_Mensch

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ