常世に住む時世の管理者

沙希羅芽紅

第1話

目が覚めたのは何処かの屋敷の中だった。

「目が覚めましたか。3日間ずっと寝続けていたんですよ。」


「此処は何処なの?」

まだ動かしずらい身体を起こしながら聞く。


「此処は何処であって何処でもない。お茶を飲んでください。」

少女は私にお茶を渡した。此処であって此処ではない。

それが何を示しているのかわからない、でもお茶を飲んで安心はした。

きっと、少女は私を助けてくれたのだろう。


「珍しいですね。こんな処まで来るなんて。此処は危険です。もしも貴方が此処帰るのなら式神を持ってください。貴方は此処にいてはいけない。」


「式神?」

少女はギュッと眼を一つぶりして、袋から紙を取り出した。


「そう、貴方は式神と一緒に帰るのだから。この紙に思いを乗せなさい。さすれば、貴方を守ってくれるでしょう。」


少女はこの場を去った。


貴方ならきっと、帰れるでしょう。思い出を忘れなければ絶対に。幽魔ゆうまに気をつけて、一生帰る事が出来なくなるから。全ては貴方次第なのだから。


少女は去っても声は響いている。


さよなら、頑張ってね。


貴女の名前を教えて

名前なんてとっくに忘れてしまった。貴方はまだ、名前があるんでしょう?ならいいじゃない、さぁ速く行くのよ。


そう聞こえて声は遠ざかっていった。

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常世に住む時世の管理者 沙希羅芽紅 @keitokeito1432

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