第3話 骨董屋
会社から少し離れたところにある公園のベンチ
生い茂る緑の屋根の下で
僕は瀬戸さんの作ってくれたサンドイッチを頬張っていた
「偶にはうちで食べて行ってくれてもいいのよ」
受け取るときにそう言われたが、丁寧にお断りして店を後にしたのだった
実際、申し訳ないとは思う
空間の心地良さを提供する喫茶店というお店において
食事のみを持って帰るというのは、マナー違反のようで後ろ髪を引かれるのだ
しかし、昔から食事は1人でとるのが日常であって
こればっかりは譲れないのである
何とも矮小でくだらないこだわりなのは重々承知なのだが
「珈琲1杯分は付き合ってくれたからね」
と言って代金を受け取ってくれる瀬戸さんの優しさに甘えてしまっているのが現状だ
最初はいつも通っていたコンビニが突然閉店してしまって
行き場に困って辿り着いたなどという、何ともしょうもないきっかけだったのだが...
まあ、今となってはどうでもいいことだ
明日の珈琲はこの話題で過ごそうか
そんなことを考えながら、最後の一片を口の中へ放り込む
「瀬戸さん、ご馳走様でした」
そう言って両手を合わせ、公園のベンチを後にする
休憩時間はあと20分ほど、ここから帰れば15分前には会社に着くだろう
この容赦のない直射日光の下を5分も歩くというのは、何とも憂鬱だと思いながらも
これすら恒例行事だったりするので、本当に苦笑しか出てこないのだった
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会社へ帰る途中
周りの背の高いオフィスビルに囲まれてぼつんと立っている
古びた一軒家の前で足が止まった
はて、こんなところにこんな建物があっただろうか
この道は今の会社に入社してからほぼ1年間毎日のように通っているが
全く覚えがなかった
良く見ると古ぼけた看板に'' 骨董屋 ''という文字が見て取れる
どうやらお店のようだが
この見た目からするに、新しくここに建ったというのあまりにも考えにくかった
中に入ってみたい衝動に駆られながらも
時計に目をやると時刻は既に休憩終了まで残り10分を切っていた
この暑さで無意識に歩くのが遅くなっていたらしい
帰りにまだ開いていたら寄ろうと早々にその衝動はシャットアウトして
足早に会社への道を歩き出した
...
しかし、どうにもおかしいもので
その日の帰り道、昼間歩いた道を何度行ったり来たりしても
その店は閉まっているどころか、辿り付けすらしなかったのだった
自律≠自立人形と、僕の - 〇〇 - 空き缶 @NIO_00
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