この物語は、異世界へ転生、もしくは転移になるのでしょうか?
そう疑問符を付けてしまうほ程、この物語の世界はとても曖昧で、「夢を見られる」という作中での説明の通り、幻想的な雰囲気を持っています。
本当に夢なのか、それとももう一つの現実なのかは明かされず、明かされないからこそ話に入り込むと、事故に遭った主人公がいた世界も、もう一つの世界にいる人が見ている夢なのではないか、と思えてきます。
転移か転生かも、現実なのかも明かさないからこそ、作れる物語です。
そしてじっくり読むからこそ分かる点がある気がします。私は序盤に出てきた「ただ気持ちとは裏腹に気恥ずかしさが先に立って」という一言で、この物語のリアルさを感じました。
主人公は、斜めにものを見て、達観している浮世離れした人物ではなく、大学生なのだと分かったからです。
そのたった一言がもたらしてくれた確かな事が、他の部分を持つ幻想的な雰囲気を色濃くしてくれたようん気がしました。
10万字を超える長い物語ですが、長いからこそ読める、感じられる美しさがあります。