第5話
そして時は来た。今夜は満月である。見事な秋の名月だった、というのも普段よりも何百何千何万倍も大きかったからである。造の家には2000人の兵士、いや2000人の兵士Aが集められた。そして改良されたシェインの塹壕も幾重に渡って張り巡らされていた。万全の警備体制の敷かれた造の家にもとうとう夜が訪れた。
「ついに来ますね」
「ああ、しかし何でシェインのやつの竹槍が一本も見えないんだ?」
言われてみれば、シェインが周辺の人たちと作り100万本もあった竹槍が見当たらない。蔵もすっからかんだった。唯一見えるのは2000人の兵士Aが持っている竹槍だけである。
「何でも鉄以上の鋭さと耐久を持つようになったらしいからな。」
昨日使った兵士曰く、鉄の槍の時代は終わったとのことだった。シェインの竹槍はもはや人智を凌駕した逸品となっていたのだ。
それはともかく、この万全の体制の中かぐやはまだ不安に襲われていた。
そして時は満ちた。
子の刻、月は太陽より明るくなった。そして天女が乗った雲が月から降りてきた。そして地面から五尺の所で浮いていた。
しかし雲は1つではなかった。何百もの雲がどんどん地上へと降りてきた。
天女の王がこちらを見た。
「かぐや姫よ、いや替え玉の反逆者よ。よくもやってくれたな。おかげで予定が狂ったではないか」
王が地面に足をつけた。その時
ズボォ
王がシェインの奈落へと誘われた。
「お、かかりましたね」
「かかりましたね。じゃねえだろオイ!どうすんだよ!重要人物文字通り出落ちしちゃってるじゃねえか!」
「タオ兄、多分大丈夫」
すると、一匹のヴィランも脱出することのできなかった奈落から王が這い上がってきた。
「この程度で私を出し抜こうなど、あまいわ!」
だがしかし王の身体には大量の差し傷があった。
「あの、天女の王さん。その体じゃ威厳も糞もないんですが...」
それに
「そんでまた何で天女まで全員一緒なんだよ!」
そう、天女もまた全員天女Aだったのである。
「まあ落ち着きなされ、傷ならすぐ癒える」
「そういう問題じゃないわよ!」
「してかぐや、いや偽かぐやよ」
「話そらしたよこの人」
「気にしないであげましょ、ほら本人も気がついてるから」
王は構わず続ける。
「私たちに歯向かおうとは愚かなものよ。本物のかぐやも悲しんでおるわ」
すると王が乗っていた雲の中から1人、天女が出てきた。
また天女Aか、知ってる知ってる。と誰もが思った。しかし
本物のかぐやは決してモブ顔ではなかった。かぐや、偽かぐやと同じく絶世の美女だった。
本物のかぐやは涙を流していた。
「ひどい、私は9月のアップデートで立ち絵が確立してからようやく主役らしくなれたと思ったのに、あなたときたら」
「ワーストップ!ストップ!」
かぐやがメタい話をし始めたので王が止めに入った。
「ということだ。名も無き堕ちた天女よ、そなたは罪深いのだ」
「オイ!話が進まねえからお前らの計画をとっとと喋れ」
痺れを切らしたタオが天女の王に膝蹴りをかましながら言った。
「良いだろう。私達の計画はこの地上を我がものとするためだ」
「何だと!」
するとレイナがあることに気がつく
「あれを見て!」
指さす方向には月。いや、今まで見てきた中で一番大きなカオステラーがこちらに向かって落ちて来ていた。
「てめえ、何のつもりだ!」
タオがさらに強く膝を王に押し付ける。
「お前達は檸檬という果実を知っておるか?」
「だったらどうした!」
「檸檬という果実はな、他の果実と比べて比較的甘いのだ。しかし食べた者は総じて酸っぱいという。それは何故か?答えは酸味があまりにも強いからだ」
この時代の日本人が知らなさそうな例え話を始めた王をタオはさらに強く踏み付ける。しかし王は動じない
「この地上はとても美しい。だが穢れた土地と言われている。それは何故か?正解は穢れた種族が栄えてるからだよ!」
王はタオを跳ね除けて雲に戻った。
「お前達にはこれは止められん。辞世の句でも読むんだな」
月はもうそこまで来ていた。
「かぐやさん、どうするんですか」
「何か策はあるのよね?」
名も無き天女は黙り続ける
「全て消えさってしまえ!」
王が叫んだ
月がスピードを上げて地上に向かってくる。
すると
2人の天女が笑った
爆音、全てを破壊するような爆音が鳴り響く。
エクスが目を開けるとそこには月のない暗い夜が広がっていた。
月が、いやカオステラーが破片を残すことなく消え去ったのである。
「これはどういうことじゃ!」
「ありえん!」
兵士達もざわめいている。
「お前達、1体何をした!」
王が叫ぶ。その方向には
「作戦成功や」
「流石ですわ」
かぐやと偽かぐやがいた。
そう、かぐやが月に置いていかれたのは全て偽かぐやが仕込んだ作戦だった。月に残ったかぐやは月を壊れやすくし、偽かぐやが天女が攻めて来る時期をはやめることで負担をかける。そして最終的には自壊した月をかぐやの魔法で全て粉々にする。あとに残るのは大量の流星だけであった。
―――――――――――――――――――
偽かぐやが出掛ける前のこと
「行ってしまうんですね」
「ウチは反対派やしな」
2人は歩きながら喋っていた。
「でも」
かぐやが涙をこぼす
「この書に逆らうなんて、私、私」
運命の書に涙が落ちる。
かぐやはこの計画を遂行するにあたって書を裏切る必要があった。
「そんなもの」
偽かぐやは書を取り上げ池に投げ込んだ。
「あっ」
「これでお前を縛るもんはのうなったやろ」
「ふふっ」
2人は笑をこぼした
―――――――――――――――――
「かぐやさん、それに本当のかぐやさんも書にさからったんですか?」
エクスが尋ねる
「いや、ウチはそもそも書に何も書いとらんかった」
そう、名も無き天女は空白の書の持ち主だった。故に何にも縛られなかった。
「夜にしかカオステラーを感じなかったのは月がカオステラーだったから。最初かぐやさんからカオステラーの気配を感じたのはかぐやさんが月から来たばかりだったからね」
レイナがいう
「そういうことやな」
「おのれ、お前ら、許さん」
天女が次々ヴィランに姿を変える。
「さあラストバトルだ!」
タオが叫んだ
「行くぞ!」
「だから余は?!」
「無理じゃよ」
――――――――――――――――
ついに残すは王だけとなった。
しかし、王は回復力が高く、倒せない。
「おのれ、こうなれば!」
突如王がシェインに襲いかかった
「あぶねえ!逃げろ!」
しかしシェインは動じない。
「シネシネシネシネ」
王が飛びかかった。瞬間
シェインが笑った
王に四方八方から竹槍が飛んで刺さったそして
爆ぜた
「爆雷槍ってやつです。いい代物でしょ」
十万以上の槍が突き刺さり、爆ぜて、王は消し炭になった
「お嬢!今だ!」
「ええ」
レイナは想区を浄化した
――――――――――――――――
タオとシェインは自分が聞いた話通り竹取物語が進む光景を見ながら安堵の声を上げていた。
エクスはモブじゃなくなった造や帝を見て一安心していた。
しかし
「何でてめえは戻ってねえんだよ」
そう、名も無き天女は想区が浄化されたにも関わらずタオファミリーといた。
「わからへんのや」
「どうせならついてくるか、このタオファミリーに!」
「いや、遠慮するわ」
名も無き天女はそういうとどこかへ行ってしまった。
「これがほかの想区で役に立てばいいんですけどね」
シェインは大量の竹槍が入った籠を持っていた。
「しかしよくこんなに作ったもんだ」
「あ、タオ兄。触らないで下さい」
竹槍が爆ぜた
「大丈夫?生きてる?」
「生きてるよ!」
「そろそろ出発するわよ」
「お嬢、俺が仕切るんだよ!」
「自爆するリーダーなんていないわよ!」
タオファミリーは次の想区へ向かっていった。
名も無き天女はそれを見ながら微笑んでいた―
―――――――――――――――
野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
名をば、さぬきの造となむ言ひける。
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり―
変えられた竹取物語(グリムノーツコンテスト用) Shokuji @Shokuji000
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