第4話

あれからかぐやと帝は頻繁に文通をするようになった。というのもあの時、帝は勝手に大内裏から抜け出していたらしく周辺の警備の強化がされてしまい会いに行くことができないようである。この時代は一夫多妻社会ということもあり、貴族は三日間連続で男が女に会いに行くと結婚が成立したらしい。しかし、あの後帝は二日来たっきり会いに来なかった。


日がたつにつれかぐやの表情は重くなっていった。


「どうしたんですかねかぐやさん」


「きっと文通しているうちに帝がストーカーだって気づいたのよ」


エクスとレイナが勝手な解釈をしていると、竹取物語を知るタオが話しかけてきた。


「お嬢、これは断じてそんな浅い理由じゃないぜ。もっと深刻なもんだ」


「そうなのじゃ」


いつの間にかかぐやがいた。


「ちょ、どこからか湧いてきたの?!」


「人を虫みたいに扱わぬようにせい!」


かぐやは夕食の場で全てを語ると言って去っていった。


そして夕食の時間になった。今宵は久しぶりに帝を迎えたこともあって豪勢だった。


そして半ば宴のような夕食が終わろうとした時、かぐやは口を開いた。


「実はわらわは...」


全員が固唾を呑んだ。


「実は関西弁なんや」


全員ずっこけた。そういうことを知りたいんじゃないという視線が容赦なく向けられた。


「わかっとるて、実はウチは月にある都のもんなんやけどな。今度満月が登った時に帰らなあかんねん」


皆そんな事ありえないという顔をしていたが、タオファミリーだけは納得していた。


「というのは建前やねんけど」


かぐやは仕切り直して


「これ以降は大声で言えへんのやけど。実は月の都である計画が進んでるんやけどな、内容までは言えへんのやけどウチは反対やった。本来ここに来るはずの娘押しのけて降りてきたんや。」


かぐやは縁側から月を眺めた。


「月の都のもんはもう気づいとる、というより気付かされとる。でもあやつらは満月か新月の時しか降りてこられへん。おそらく次の満月、つまり3日後やなその日にあやつは降りてくる。」


「おいおい、確証はあるのか?」


タオがきくと、かぐやは答えた。


「ある。あっちで次の満月に降りてくるようにしむけといた。それにあれ、見てみ」


かぐやは月を指さした。月は数日前よりはるかに大きくなっており、お伽話の上で見えてはいけないもの(クレーター)がはっきり見えていた。


「ここ数日でここまで地球に近づくなんてどう考えてもおかしいやろ?理由は分からんがなんか月の都の王は月を地上に落とそうとしとる」


「何だって!」


「それじゃあ地上は壊滅してしまうじゃない!」


場がざわつき始める。


「で、ここまでの話は決して他言しんようにな。パニックに陥って地上の住民が大移動とかになったらたまらんさかい」


そして月が高くなり天頂まで来た時、突如月が一段と明るくなった。


「やっぱり始まってしもた」


突如地面が盛り上がり、そこから多数のヴィランが湧き出した。


「月が近くなるっちゅう事は引力も強なるっちゅうことや。ここに近づいとる以上迎えが来るまでこの魔物がここから湧き出すっちゅうこった。幸い月が一番高く上がった時しかあらわれへんようでな、その間に戦える人材募集を集める為に皆を呼んでんけど...」


席を見るとやはりタオファミリー以外は村人AとB、そして1人の貴族Aしかいなかった。


「どうしたもんやろか」


「まあ僕達だけでやらなきゃいけないんですね」


「丁度いいですね」


するとシェインが天井から垂れ下がってる紐を引っ張った。途端に家の周りに掘ってあった塹壕が姿を現し、上にいたヴィラン数体が穴に吸い込まれていった。


「いずれ月の都の人たちをはめる為に村の人達に協力してもらったんですが、こんな形でお披露目するとは思ってなかったです」


塹壕の底にはシェイン特製の鋭い竹槍が並べられており、落ちたヴィランはどんどん消滅していった。


「皆さん落ちないように戦ってください」


「さすが俺の妹分、やることが違うぜ...


タオは冷や汗をかいていた。


「行くわよ!」


五人はヴィランに突っ込んでいった。


一方


「まて、また余はおいてけぼりか!」


「よしなされ、今のわしらにはかなわぬことじゃ」


突撃しようとする帝を造が止めていた。


―――――――――――――――


月が傾いた頃、穴からヴィランが湧かなくなった。


「やっと終わった」


「これを明日もやるのかよ」


「まあしかたないやろ」


戦いにおいてシェインの塹壕は多くのヴィランを奈落送りにしたが、それでも半分以上のヴィランは穴を突破していた。


「改良の余地がありますね」


「いや、俺らも結構危なかったからやめてくれ」


穴に落ちて竹槍の先が刺さるぎりぎりで脱出したタオが止める。


「明日からは余が兵を送るので安心しても良いぞ」


という帝だが、どうせ兵士Aがたくさんくる事は目に見えていた。


そしてかぐやは沈みゆく月を見ながら何かを祈っていた。

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