第3話

造は竹から出てきたときにかぐやが包まっていた布を見ていると、どこからか変な感情を感じるようになっていた。かぐやにはいつか誰かの嫁になってもらいたい。しかし、かぐやを嫁に出すことに抵抗を感じている自分もいる。


そんなことを考えていると庭からなにやら男の声が聞こえてきた。


「「「「「我と結婚してくだされ!!!!!」」」」」


宴のおかげだろうか、早速求婚者が現れたようだ。嬉しい反面、どこかで寂しさのようなものを感じる。


造は思った。かぐやは7日間で私達の家族になっていた、ならば私もかぐやも後悔しないような婿選びをしようと。


―――――――――――――――


かぐやは五人の貴族、いや五人の貴族Aの誰を選べば良いかわからなかった。しかし、何かしらの手段で篩にかける必要がある事はわかっていた。


そしてかぐやは五人の貴族Aにそれぞれ難題を出すことにした。


「わらわが今から言うものを持って来たものと付き合うこととする。まずそち、仏の御石の鉢を持って参れ。またそちは蓬莱の玉の枝。そなたは火鼠の裘。さらにそなたには龍の首の珠そしてそなたには燕の子安貝を持ってきてもらうぞよ。」


かぐやは誰が誰だかわかっていなかったが、見た目は同じだし、そもそもこの世にあるかどうか疑わしいものばかりだったのでかなりテキトーに指示した。


するとどうしたことだろうか、五人の貴族Aは要求された品を即座に懐から取り出したではないか。


「「「「「これでいかがでしょう」」」」」


まるで練習していたかのように五人の貴族Aはかぐやに宝物を差し出した。


まさか自分の考えを先読みされていたかのような行動に戸惑いつつも、どうせニセモノだと思っていたかぐやは、差し出された火鼠の裘に火をつけた。火鼠の裘は決して燃える事はないと言われている。ならば、


「まず火鼠の裘から試しましょう」


かぐやは必要の裘をシェインの工房の竹槍の先端を炙るための火に裘を放り込んだ。しかし、裘に火がつく事はなかった。


「いいかがです?確かに本物でしょう?」


貴族Aが勝ち誇ったように言った。


かぐやは驚いたが、それ以上に驚いていたのはタオとシェインである。


「おいおい、どうなってんだよ。カオステラーに書き換えられたとはいえやりすぎだろ」


「この調子だとおそらく...」


シェインの思った通りだった。貴族の持ってきた宝物にニセモノは一切なかった。この世に存在する筈のないものをカオステラーは作り出してしまったのだろうか?しかし今はそんな事はどうでもよかった。五人の貴族Aがかぐやの要求を満たしてしまったのだ。


かくして五人の貴族Aによるかぐやの取り合いが始まった。


しかし、誰一人として譲ろうとはしなかった。そして均衡が三時間ほど続いたとき、事態は動いた。


「わしにいい案があるぞ」


造が庭に現れ、声高らかに叫んだ。


五人の貴族Aは全く同じタイミングで、それは何だと答えた。


造は答えた。


「男とは自分の妻を守るため強くなくてはならん。近頃の男は管楽だの和歌だの、そのような事では自分の愛する者は守れぬ!」


すると、造の周囲の大地が揺れ始め、巨大な土の塊が隆起した。


「わしに強さをみせよ!そしてかぐやが認めた者こそが真の夫じゃ!」


土の塊が自壊し、ドラゴンが姿をあらわした。


「あれは!」


「ええ、ヴィランね」


エクスとシェインがそんな事を言っている中


「かぐやさん、この決め方でいいんですか?」


「おう!ウチが認めるって条件がついとる以上奴らの思うようにはならん。いずれ結婚はせなあかんからな、しっかりした奴を選んだるわ!」


「かぐや、興奮して口調が荒くなってるぞ」


「おお、いかんいかんわらわとしたことが」


かぐやは乗り気だった。


一方五人の貴族Aは


「りゅ、りゅ、龍がこんなところに?!?!」


「大伴!お主龍のタマとってきたのじゃろう!何か申さんか!」


「あ、あの時は龍が眠っておってな...」


そんな事を言っていると龍が


「そうか、貴様が我が珠を寝込みを狙って持っていった者だな!」


一匹の龍の逆鱗に触れてしまった。


「お主のおかげで仲間からも見た者からも玉無し玉無しなどとと言われたのだ!許しがたき屈辱!」


貴族Aを殺さんと龍が暴れ始めた。無論龍にはどれが大伴かなどわからないし、そもそも顔しか覚えてないので五人の内誰が犯人かすらわかっていないのだが。


場が完全にカオスと化していたが、一途に1人の女に想いを届けようとする男の戦いを誰も止めることが出来ずにいた。


「そろそろ止めに入った方がいいんじゃ...」


五人の貴族Aはモブであるが故に、効果的な攻撃が出来ず防戦一方だった。


もはやこれまで


誰もが思ったその時、木の上から一筋の矢が貴族Aにとどめを刺そうとしていた龍の掌を穿った。


「えっ?」


タオファミリーとかぐやと造そして五人の貴族Aが見上げると、そこには


貴族Aがいた


「「「「「またかよ!」」」」」


木の上から降りてきた貴族Aに、何故か五人の貴族Aは跪いた。


「帝!何故こんな所に」


1人の貴族Aが尋ねた。


「余はそこを通りかかっただけだ。それよりお主ら、こんな龍に手こずる程度では話にならん、帰れ」


すると五人の貴族Aは渋々造の家をあとにした。


「余がこの龍を成敗してくれよう」


言っている事はかっこいいのだが、見た目が貴族Aなだけに威厳がない。


しかし


「まあ何と素敵なんでしょう!」


かぐやが惚れた


惚れてしまったものは仕方ない


「爺や決めました、わらわはこのお方を婿にしますわ」


「え、いいんですか?帝ですよ帝、この想区の最高権力者ですよ?帝さんも急にこんな事言われても無理で構わん

そうエクスがいうと


「余は一向にかまわん」


するとかぐやと帝は歩み寄っていった。


「お主のような美しいお方、余の妃にふさわしい」


2人は熱い抱擁を交わした。


「みやさん、もういいだろ」


「そうじゃのう。ようやく良き男を見つけたか」


しかし


「あの、俺そろそろもう一回暴れていいかな」


暴れ足りない龍が再び暴走しようとしていた。


「みやさん!はやく止めてください!」


「いや、わしには出し方しかわからぬ。スマンの、誰も倒せぬとは思うとらんかったのでな」


「スマンじゃないわよ!どうするのよこれ!」


龍が暴れて火まで吹き始めた。


「姉御、もうシェインたちで止めるしかないですよ」


すると、そこにはまた竹槍をスタンバイしているシェインとかぐやの姿があった。


「やっぱこうなるか、仕方ねえ相手してやるよ!」


「いきますよ!」


「余も力を貸そう」


とナチュラルに戦闘に加わろうとした帝をシェインが止めた。


「帝さん、今はあなたはモブ扱いですよ。戦闘に加わるといろいろまずいので下がっててください」


「何故?!?!?」


―――――――――――――――


「ようやく倒れたな」


「タマがないのに凶暴でしたね...」


「新入りさん、そっちのタマじゃないですよ。珠ですよ」


するとレイナが造の懐に妙な布が入っているのに気がついた。


「これは?」


造に尋ねると


「いや、かぐやが生まれた時に包まれていた布何じゃが。どうも獣を呼べるようでな」


造が布を強く握ると、庭にヴィランが


「そおい!」


現れようとしてシェインに刺された。


「この布はカオステラーと繋がりがありそうね。みやさん、この布は大事に持っていてください。でももうヴィランは紹介しないでちょうだい。」


「わかったわい」


エクスとタオはかぐやと帝が包容している光景を見ながら話していた。


「でも帝がこんな所にいるなんて不自然過ぎませんか?」


「実は、帝は俺が貴族五人を木から落とした時に隣の木で張り込んでたんだ」


「じゃあ、帝もストーカーだったんですか?!」


「そうだ」


「じゃあ何でその時落とさなかったんですか?」


「そっそれはだなかくかくしかじかで...」


すると歩いてきたシェインとタオがぶつかった。タオの懐から大量の銭が落ちた。


「まさかタオさん...」


「買収されたのねー」


いつの間にかレイナがタオの後ろにいた。


「お嬢、いつの間に」


「ちょっと来なさい!」


タオは部屋に連れていかれた。


「これは確実にゴッですね」


「あーあ」


\ゴッ!/


部屋から鈍い音が響いた。

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