速攻始末

「ふわぁあ……」


 良く眠り慣れていた。

 普通なら、寝れないとかあるだろうけど、即視感が有り余る。


 まぁ、木の板で寝るのは辛い。


 オレは起き上がり、洞穴とも言える仮住まいを出て、空気を吸い込む。


 地味に良い感じだ……この家がゴミすぎる事を除けばの話ね。

 まだ強く揺れている木を眺めていると……


「助けてぇぇぇえ!!」


 ――え?


 まさに悲鳴な事は瞬時に分かった。

 まてまて……行くにはリスクが。


「おにーさん! 助けてぇ!」


 いや、心配する必要はなかったみたい。

 声がする方向、つまり右に首を振ってみる。

 すると、女の子がゴブリン的なモンスターに追いかけられながら、


……オレの元に走ってきた。


 素手でゴブリンなんて……もういいや!!!


 俺は体を右に向け、女の子が来るのを待つことにした。

 もう知らない。何かあっても死んでもそこまで!


「おにーさぁん……」

「うん、知ってる」


 女の子は今にも泣きそうな顔で俺の真後ろに隠れた。

 いいぞ、イイ感じにきてる。


「隠れとけ、今護ってやる……」


 オレがそういいながら、洞穴くっそボロいゴミ屋敷……を指さした。

 女の子はこくりと頷くと入っていった。


 これで心置きなく戦える。


「ゴブ……!!」


 ゴブリンは立ち止まって睨んでくる。

 俺の2倍はあるゴブリンはデカすぎた。




――最速勝負。


「くそ……勝負だ!」

「ゴブ……?」


 アルファは地面を大きく踏み、腕を大きく振って走りこむ!


「喰らえ! 必殺飛び膝――」

「ゴブゥウ!!」


 ダメージを察知したゴブリンは膝が飛び込んでくる前に、手でアルファを吹き飛ばす!

 とてつもない一撃は重すぎた。途端に背中から木にぶつかる!


「ぐはっ!! ゴポッ……」


アルファが手で口を抑える。しかし、手の隙間からは血が漏れ出ていた。


「あぁ、痛い! 痛すぎる!」


 アルファが走り込んで、攻撃を仕掛けようとした途端、ゴブリンは何メートルおも超えるジャンプを繰りだしていた。


「おい、飛んだだけじゃ何もならない……ぜ?」


 アルファはもう、全てを見透かしてるように空にいるゴブリンを見つめる。


「ゴォオブゥゥ!!」


 ゴブリンが叫んだ途端、体制を逆さにし、右手を振り上げてアルファに急降下した!


「えっ!? ちょっと……」


 アルファはそのまんま落ちてくる事を予想外と言わんばかりに声を震わせる。


 そして、アルファにほぼ数十センチとなった刹那。


『ズガーン!!』


 アルファを中心に土煙が巻き起こり、とてつもない衝撃音が響きまくる!


 え!? 大丈夫?

 第3者だけど気になるぅう!←←



 ゴブリンは……立っていた。

 アルファは……ゴブリンの下にいた。真っ赤になっていた手でゴブリンを持ち上げながら。


「軽い! 軽すぎる!」

「ゴッゴブ!?」


 アルファはゴブリンを軽々と持ち上げて、こう言い放った。


何だってする。その辺に居る女の子もオレの世界だ」


「ゴッゴブ……!」


 ゴブリンはもう逃げたそうだ。明らかに、この……アルファの逆鱗に触れてしまっている。あぁかわいそ。


「喰らえぇえ!!」


 アルファはドヤ顔をした後、ゴブリンを空高くぶん投げる!


 投げた瞬間、アルファも地面を蹴って飛び、ゴブリンを追いかける!


アルファはゴブリンを高速で抜き去る!


「地面は勘弁してやる」


 まるで、バットを持つように手を組み、ゴブリンを待ち構えた!!



――そして、ゴブリンが来たジャストなタイミングで風を巻き込んだフルスイングをぶち込む!!


『カッキーン!』


 そんな心地よい音が響いた……気がする!


「ゴッゴブーー」


 断末魔が聴こえる。


「おおっ飛んだなぁ」


 ゴブリンは空の彼方へ吹き飛んだ。


 吹き飛ぶところまで見送ったアルファは

すぅっと着地した。


「いやぁ、こんな力あるって意味分からん」



 さぁ、オレの洞穴で女の子が怯えて待ってるかもしれない。一応安心させないとな。


べっ別に童帝だからってよこしまな事は考えてないから!

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