Theory&Observation 唯一絶対性理論と瞑想②
「むか~し、むかし、ものすごく昔のこと。
まだ星や物ができる前の世界に、たくさんの力があって、それがちょっと不安定だったんだ。
ある日、その力の様子が突然変わり始めたの。そう、まるでドミノ倒しみたいにね。
一つが変わると次々に変わっていって、そうやって正の粒と負の粒の小さな世界が生まれたんだ。
その力はとても熱くて、どんどん大きくなって、やがて冷えていったんだ。
そして、たった一つだった力が、三つの力(強い力、弱い力、電磁気力っていう力)に分かれていったんだよ。
こうして、「なにも無い世界」から「宇宙」が生まれて広がり始めたんだ。この広がり始めたばかりの宇宙は、正の粒と負の粒がちょうど同じ数でバランスが取れていたんだ。
このバランスが取れている状態を「ディラックの海」って呼ぶんだけど、その中で二種類の粒はずっと生まれては消えてを繰り返していたんだ。
でもね、ある時、負の粒のたった一つが正の粒よりも早く消えてしまったの。
これが宇宙にとって大きな事件だったんだ。
バランスが崩れたから、負の粒だけがどんどん減っちゃって、最後には全部無くなっちゃったんだ。
そう、まるでオセロで負けたときみたいにね。
こうして、今でも膨らみ続ける正の粒だけの宇宙ができたんだよ。めでたしめでたし。
愛理栖は落ち着いた声でゆっくりと語っていた。
「あたし達そんな事今はじめて聞くよ。先生は知ってました?」
真智は驚きながら、谷先生に視線を向けた。
「うちは仮説として聞いたことはあったで。
でも、その表現はユニークやな」
谷先生は楽しそうに笑った。
「興味を持ってもらえてなによりです。それともう一つ、これは宇宙のなりたちにすごく関係があることなんですが、谷先生も聞いて貰えますか?」
愛理栖は谷先生の反応に微笑みながら、続けた。
「へ~! どんな話や?」
真智は期待を込めて愛理栖を見つめた。
「私の頭の中には宇宙の仕組みの知識アカシックレコードが断片的に記録されているんです。断片的っていうのは、肝心な部分の記憶だけが無くなっているから。きっと、相手の5次元人が確信に迫られないように妨害している為だと思うんです。だから、みんなには私の知識の無くなったところを思い出す手伝いをして欲しいんです」
愛理栖は真剣な目で話した。
「断片的?……」
真智はこの言葉が無性にひっかかり、理由をずっと考えてみた。
「うちは幾何学でいう4次元空間のことじゃないかと思うで」
谷先生は深く考え込みながら言った。
「あ、あたしもそうだと思います」
あたしは谷先生の意見に賛成した。
「つまり、宇宙のなりたちには更に時間も結びつけて考えるってことやな」
谷先生は確信を持って言った。
「そういうことです。じゃあ、真智に質問!
5次元って何かわかる?」
「え?え〜と……」
あたしは愛理栖から突然質問されるなんて思っていなかった。
「う~ん。 3次元は縦横奥行きで空間を表すことができるけど、4次元は時間を加えたもので、5次元はさらにもう一つの方向があるってこと?」
あたしはとりとめのない考えに頭の中がいっぱいになった。
「つまりそういうことです。
でも、その方向は真智達には見えない不思議な世界なんです。
その世界では、普段見慣れた物理法則や因果関係は通用しないんです。
例えば、時間旅行や平行世界やテレポーテーション、上下左右前後の入れ替えなどです。
これらは私みたいな5次元人にとっては当たり前のことですが、真智達にとってはきっと不思議な現象に感じるはずです」
愛理栖は丁寧に説明した。
「へ~! すごいね! でも、どうしてボク達3次元人が5次元人の存在や仕組みを知る必要があるの?」
イワンは目を輝かせながら質問した。
「それはね……」
愛理栖は少し躊躇した後、続けた。
「それはね……わかりやすく例えると、君達3次元人は、実はある5次元人から作られた実験体のひとつなんです。
この宇宙もその5次元人が作った仮想空間で、君達はその観察対象なんです。彼は私達に自分達の姿や力を隠していますが、時々干渉したり試したりします。その時に起こる現象が超常現象や神秘的な体験などです。君達は普段それらを理解できませんが、彼らにとっては単なる幾何学的操作です」
愛理栖は静かに語り、真剣な眼差しをあたしに向けた。
「え~! そんなこと本当なの? あたし達はただの実験体でしかないの?」
あたしは驚きの表情を浮かべ、信じられないように愛理栖を見つめた。
「本当です。私はその証拠を持っています。このペンダントです」
愛理栖は首にかけていたペンダントを取り出した。それは金色の五芒星の形をしたもので、中央には小さな水晶が埋め込まれていた。
「このペンダントは5次元を深く知る人達からの贈り物です。私は幼い頃に彼らと出会いました。彼らは私にこの宇宙の真実を教えてくれました。そして、このペンダントをくれました。このペンダントには彼らの高度に発達した科学文明の知識が記録されているんです。私はこのペンダントがあることで初めて、あなた達にこの姿をみせることができているんです」
愛理栖はペンダントを手に取りながら、その重要性をあたし達に伝えた。
「すごい……でも、どうしてあんただけが5次元人と出会えたの?」
あたしは興味津々で、しかし疑問を隠せない様子で尋ねた。
「それは……」
愛理栖は少し間を置いて、答えようとしたが、次の瞬間に何かに気づいた様子だった。
「あ、もうこんな時間か!時間が経つの早いな~。みんな続きは明日。うちは明日、授業終わってすぐには部室行けへんけど、あんた達は先に部室で話を進めといてや。愛理栖ちゃんもそれでいいか?」
谷先生は時計を見て驚き、急いで予定を確認していた。
「大丈夫です。 じゃあみんなまた明日お願いします」
愛理栖は微笑みながら、みんなに次の日の計画を伝えた。
「オッケー」
あたしは元気に答え、みんなの笑顔が広がった。
こうして、あたし達の活動1日目は終わったのでした。
「ねえ愛理栖? 今日放課後部室行く前に紹介したい友達がいるんだけどいいかな?」
あたしは放課後の予定を提案しながら、愛理栖に興味津々で尋ねた。
「真智がそんな事言うなんてめずらしいね。いいよ」
愛理栖は驚きながらも、微笑んで許可してくれた。
あたしはは新しい出会いに期待を寄せた。
放課後。
あたしは愛理栖と一緒に教室前の廊下でその友達が出てくるまで待つことにした。
「ホームルーム長引いちゃって……。真智ちゃん~、遅くなってごめんね~」
…………。
愛理栖はそのとき、驚きで言葉が見つからなかったようだった。
※今回の要約※
部活動「宇宙の真理を探す部」が発足し、愛理栖が宇宙のなりたちを説明。谷先生の提案もあり、部活は順調に進んだ。
その日の放課後、真智が愛理栖にある友達を紹介したいと言うが。
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