Theory&Observation 唯一絶対性理論と瞑想③

「わかる。あたしも最初は驚いたから。この子は物静かでおとなしい性格だけど、身長が180センチもあるからね。この子、武道やスポーツをやってるわけじゃないらしいんだけど、スポーツと喧嘩強いんだよ」

あたしは説明しながら微笑んだ。


すると、あたしの女友達は少し困ったように顔をしかめた。

「真智ちゃん、喧嘩が強いって言うのはひどいわ~」


「めんご、めんご」

あたしは謝りながらも笑顔を浮かべた。


「それに私~、身長の事気にしているんですから~」

女友達は少し恥ずかしそうに言った。


「まあまあ、身長もだけど、出るとこ出てるし。うらやましいな」


「そんなことないよ~。こんなの重くて邪魔になるだけだし~」

女友達は照れくさそうに否定した。


•四葉

ゆっくりと眠くなるような話し方をする。

表の顔は頭も良く運動も出来る天才少女だが、

裏の顔はなにやら困った性格らしい。


「ところで~、その子がこの前真智ちゃんと一緒に歩いてた人~?」

愛理栖があたしの耳元でささやいた。


「そうだよ」


「ねえ、真智。この娘も私の事が見えるみたいだね」

愛理栖は少し驚いた様子で言った。


「そうなの。昨日あたし達が学校の部室に向かって歩いている時に通りかかったんだって。その時愛理栖のことが気になったらしいよ」

あたしは説明を続けた。


愛理栖はうなずいて自己紹介を始めた。

「そういうことなんだ。え~と、私は真智の友達の愛理栖です。よろしくね♪」


「自己紹介が遅れてすみません~。私は真智ちゃんの友達の宮崎四葉って言います~。四葉って呼んで下さい~。あなたのことは愛理栖ちゃんでいいかな〜?

よろしくお願いします~」


「うん。ちゃん付けでいいよ。よろしくね♪」

愛理栖はにこやかに答えた。


四葉は思い出したように話を続けた。

「ところで、真智ちゃん~?私が昨日あなた達をみかけた時ね~、実はお父さんも一緒で~。お父さんにも愛理栖ちゃんが見えてて~、是非会わせて欲しいって~?私は断ったんだけどきかなくて~、ついて来てるの~」


「え?」

あたしは突然の事につい聞き返した。


その瞬間、声がかかった。

「ちょうどよかった。あんた達にお客さんや!」

谷先生の後ろから、45歳くらいの小柄で痩せ型の大人の男が現れた。


「谷先生?」

あたしは驚いた。


「こんにちは。 学校まで来ちゃってごめんね」男は謝りながら近づいてきた。


「はぁ~、お父さん~……」

四葉は困惑した表情で言った。


「お父さん!?」

真智と愛理栖はほぼ同時にに驚いた。


「なんや、四葉の父親か?」


「は、はい。お父さん~、早く帰ってよ~!」四葉は少し恥ずかしそうに答えた。


男は落ち着いた声で話しだした。

「ちょっと待って、お父さんは5次元人の愛理栖さんを少し取材したくて来ただけなんだ」


あたしは心の中で思った。小柄な父と身長の高い娘、一瞬父親のほうが子供に見えてしまうのはあたしだけ……かな?


あたしは心の声を呟いた後、四葉のお父さんに言った。

「愛理栖はみせものじゃないんです。興味本位で広められたら困ります!」


四葉の父親は謝りながら説明を続けた。

「ごめんね真智さん。愛理栖さんの存在をスクープしようとかそういうわけじゃないんだ。私は仕事で小説を書いているから、そのアイデアの参考にしたいだけなんだ」


「四葉の親子さん、小説家だったんか!」

谷先生は驚きの表情を浮かべながら四葉の父親に言った。


「そうなんです~……父の小説はあんまり売れていないみたいですが~、宮崎賢児って本名で小説を書いているらしくて~……」

四葉の父親は少し恥ずかしそうに微笑んで答えた。


「宮崎賢児? 聞いたことはあるな~。確か、え~と、そうや! ネガティブ小説家の宮崎賢児か!」

谷先生は思い出すように言い、納得した顔をした。


「ネガティブ小説家って言わないで下さいよ~!」

四葉の父親は困ったように手を振って否定した。


「話に割り込んですみません。四葉さんのお父さんにちょっと質問なんですけど、出身はやっぱり宮崎県なんですか?」

真智は興味津々で質問を投げかけた。


「ほ~ら、やっぱりきたー!毎度お馴染み名前からの出身地の決めつけ、これね。僕の出身は岩手県ですよ。全国の宮崎けんホニャララさんに謝って」

四葉の父親は冗談交じりに答え、少し笑った。


「アハハ、すみませ~ん。ちなみに、どんな小説書いてるんですか?」

真智は笑いながらさらに質問を続けた。


「あはは、よく聞いてくれたね。実は僕は宣伝の為にと、自分の作品紹介のビラをいつも何枚か持ち歩いているんだ。

これです。はい、谷先生どうぞ」

四葉の父親はバッグから数枚のビラを取り出し、一枚を谷先生に手渡した。


「ありがとうございます~。どれどれ、」

谷先生はビラを受け取り、興味深そうに読み始めた。


『妻にも負けず』 《妻にも負けず、部下にも負けず、飼い猫からの屈辱にも負け~//~ない、そういう人に、私はなりたい……》 ……。

おっちゃん。 周りの人にどんだけビビっとんねん!


ほな次いくな?

『クレームの多い銀河鉄道』 なになに、 《ジャパン児がカンパニーの人らと一緒に、赤字経営の銀河鉄道で働き苦労する話》……って、 あちゃ~。宇宙を舞台にそっち頑張っちゃったか~。

おっちゃんの人生に今まで何があったか知らんけど、もっと夢持ちや。な?


え~と最後は 『風邪だまたサボろう』 …………。 「己はもう、てぃんでしまえ!!」 あ~、もう! うちツッコミ入れるのも疲れたわ~」


「アハハ、面目ない」

四葉の父親は頭をかきながら苦笑した。


「アハハじゃな~い!」

おじさんに対するみんなのツッコミは息ぴったりだった。


「ところで真智さん。そろそろ愛理栖さんに会わせてもらってもいいかな?」

四葉の父親は真智に真剣な表情で尋ねた。


「はい? 愛理栖は私のすぐ横にいますけど!」

あたしは驚きの表情で答えた。


「え?」 みんなその場で不思議そうに首を傾げ、互いに驚きを隠せず目を丸くした。


「ねえ愛理栖、これどういうことかわかる?」 あたしは愛理栖に小声で訊いてみた。


「う~ん、はっきりとはわからないけど、おじさんは昨日だけたまたま見えただけかもしれない」

愛理栖は少し困惑しながら答えた。


「そんなことってあるんだ」

あたしは信じられないように呟いた。


「そうね~。普通は縁の作用で見えてるはずだから、それ以外の人には見えないはずなんだけどね」

この時の愛理栖はどうにも腑に落ちないって顔をしていた。


「うそだろ~。 これじゃ僕から直接愛理栖ちゃんに5次元のこといろいろ聞けないじゃん。 がっかり……」

四葉の父親は肩を落としてがっかりしている様子だった。


「お父さん、気が済んだでしょ。見えなかったんだから、素直にあきらめて! 帰って原稿書かなきゃ締め切り間に合わないんでしょ!」

四葉はそう言うと、父親にだけは強気な態度をとりお父さんを追い返した。


あ〜、助かった。 あたしは心の中でそう思い、安堵の息をついた。


「うちら随分時間潰したな~。みんなとりあえず部室行こか!」

谷先生はそう言い、みんなで部室に行くことになった。



※今回の要約※

放課後、真智は宇宙の真理を探す部に四葉を誘そうとする。

そんな中、四葉の父親も真智達の前に顔を出す。

しかし、彼はみんなに恥をさらして退場した。

そして、真智は四葉を科学部の部室へと案内した。

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