スカーヴァティー 極楽浄土

 ※前回のあらすじ※

愛理栖は本当の名前を思い出し、5次元の存在になるためにひかるにお別れを言いにきた。

彼女はひかるを不思議な世界へ案内する。

※あらすじ 終わり※




気がつくと僕は不思議な世界にいた。

色とりどりの雲がふわふわと空に浮かび、

変わった形をしていた。

雲は小さくなったり大きくなったりして、きれいな模様を作っていた。

 先生が教えてくれたマンデルブロ集合を思い出した。同じ図形が小さくなって入れ子になっている数学の図形だ。

どこまでも続くらしい。


 でも、それだけじゃなくて、心が温まるものを感じた。

ここは天女の羽衣や極楽浄土を連想させるような、幸せな場所だと僕は思った。

友達にも見せてあげたいなと思った。




「ねえ、愛理栖?」


「どうしました、ひかるさん?」


「5次元の存在になった君は、本当にどんなことでもわかるの?」

僕は愛理栖に尋ねた。


「はい。私の力の及ぶ範囲であれば大丈夫です。ひかるさんは今何か知りたいことがあるんですか?」


「ごめん愛理栖。僕はただ聞いてみたかっただけで、詳しいことは何も考えて無かったよ」

僕は謝った。


「そうですか、大丈夫ですよ」

愛理栖は優しく言った。


「あ、そうだ!いま頭に浮かんだんだけど、エントロピーの意味を猿でもわかるくらい簡単に説明してみて?」

僕は思いつきで言った。


「わかりました」

愛理栖はひかるにそう応えると話を続けた。


「エントロピーは物がどれだけバラバラになっているかを表す基準です。わかりやすいようパズルに例えてみます。

パズルが完成していたらエントロピーは低い。パズルのピースが全部ばらばらになっていたらエントロピーは高い。

このように言えます。エントロピーは低い状態からどんどん高くなっていく特徴があって、これはエントロピー増大の法則と言われます。

今の説明、お猿さんでもわかりますかね?」


「僕にはすごくわかりやすいけど、猿にはう〜ん?」

僕は首を傾げた。


「ところで、ひかるさん?」

愛理栖は話題を変えた。


「何、愛理栖?」


「今度は私からも質問してもいいですか?」


「あ、いいよ」


「ひかるさんは 生きてる って何だと思いますか?」 

愛理栖は少し真剣な顔で僕に尋ねた。



※今回の要約※

ひかるは不思議な世界で愛理栖に5次元の存在について質問し、エントロピーの説明を聞く。愛理栖はひかるに「生きてる」とは何かを問いかけた。


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