明日は我が身 僕達はみんな助け合う理由がある

僕と愛理栖は手を繋いだまま、空間がぐにゃぐにゃになる中を耐え続けた。


そして僕は、今度は意識を失わずに済んだようだ。


僕が落ち着いてから辺りを見渡してみると、

愛理栖とクオリアがお互いに向かい合い対峙していた。

「あなた達、無事だったのね?

でも、今度はアイリスもいるし、

手加減無しの全力でいかせて貰うわ!

"心技 メアリーズハウス!"」

クオリアがそう言い終わった直後だった。

クオリアの体から真っ白い球状の 覇気オーラが吹き出し、それは一瞬で巨大に膨れ上がった。

「ま、眩しいっ!」

僕と愛理栖は逃げる間もなくその 強烈に白く光る覇気オーラに取り込まれてしまった。


・・・・・・・・


極端に明るさの違う光景に目が慣れるまでに

少なくとも5分はかかったに違いない。

僕は自分の目が慣れるやいなや、

危険回避の為に急いで辺りを見回した。

「ここは……どこ?」

辺りは見渡す限りただ一面真っ白な世界だった。


「愛理栖どこー!!」


◇ひかるさーん!!◇


「愛理栖! そこにいるの?

今そっち行くよ!」

僕は愛理栖の声のする方向へ駆け出した。


「あれ、おかしいな……、

確かにさっきこの辺りから声がしたはずなんだけど……」


◇ひかるさ~ん!◇


「あ、そっちだったんだね、

今そっち行くからもう少しそこに居て!」

僕はすぐに向きを変え愛理栖の声のするすぐ手間まで駆けよった。

「愛理栖、お待たせ!

怪我は無かった?」


◇怪我は無いですよ。

ひかるさんは怪我は無かったですか?◇


「僕も怪我は無かったよ」


◇それは良かったです。

あの程度の攻撃で怪我なんてされていたら、

今からいたぶり甲斐が無いですもん。

ウフフ◇

「え? 何言ってるの?」


「ひかるさん、危なーい!!」

「え?」


『カキーン!!』

金属同士が激しくぶつかるよいな音がした。


「アイリス? 光属性のあなたは視覚が奪われると不利だと読んでいたのに……。

よく私のメアリーズハウスを見破ったわね」


「あなたのこの技事前に調べていたわ。

自分と相手を真っ白な大きな空間に閉じ込める。

その空間の中では元々黒や灰色に見えるもの以外は全て真っ白に見えてしまう。

そうよね?」


「知っていたのね。

でも不思議ね。私は自分の全身を白く変装していたのにどうして私の位置がわかったのかしら?」


「ひかるさんの声が聞こえてきて様子がおかしかったからよ。

だから、あなたがひかるさんに幻聴を聞かせおびき寄せているってすぐにわかったわ」


「残念。この目眩ましがあなたに通用しないなんて……。

私自身も身動きが取りにくいし。

いいわ、この技は解いてあげる」

『パチン』

クオリアが指を鳴らすと、一瞬で元の光景に戻った。


「真っ白な空間に目が慣れきってしまったか

な?

なかなか目のピントが合わないよ」


「ひかるさん、その場から早く離れて下さい!!」


「え?」



「遅い!!

この警策きょうさく、耐えられるかしら?


浄化してあげるわ!

"心技 ゾンビ・ワ~ルド!"」

クオリアは僕と愛理栖にそう言い放つ。

すると、

僕と愛理栖を目掛け、数え切れないくらいの心の槍が寸分の狂いもなく襲いかかってきた!


僕はその凄まじい一瞬の出来事に尻込みし、

目を瞑ってただただ耐えることしか叶わなかった。


「あれ? なんともない……ぞ?」


僕の前には、不思議な姿をした愛理栖がいて、

僕の盾になってくれていた。


「格好が違うけど、君、愛理栖だよね?」

僕は思わず彼女に聞いてしまった。


その姿は、アイリスの時のそれとは様子が違っていた。


なびく長い髪は、七色だったものから

たくさんの銀河系を浮かべた宇宙空間そのものに変わっていた。

また、よく観察すると額の印も『∨』だったものから『x∨8』に変わっていた。

そして、一番印象に残る変化は彼女のつぶらな瞳で、

栗色だったものから魔法の鏡のように変わっている。

しかし、ここでいう"魔法の鏡"という喩えには誤解が無いように説明を加えさせて欲しい。

それはつまり、ただ姿を写すだけではなく、心までも写してしまいそうな鏡という意味なんだ。

クオリアの姿全体を手中に収めたそのどこまでも澄んだ妖艶な瞳は、まるでクオリアの生きてきた人生全てをくっきり写しとっているかのようだった。


そして僕は度肝を抜かされた。

なぜなら、先ほどクオリアが放った無数の心の槍全てが、

僕ら二人に刺さる手間でUターンし

全発ともにクオリア自身が受けていたから……。


「やっと変身できました。

私の名前は6次元少女 阿弥陀アミータ……、

永遠ときつむぐ存在」


「まさか、私の心の槍が全て跳ねかえされるなんて……。

仕方ないわ。

アスラ様、いえ、アスー博士!

お願いです。私に力を貸して貰えませんか?」

クオリアがそう言うと、アスラと名乗り

愛理栖を六次元に閉じ込めた男が姿を現した。


「アスー博士、ありがとうございます」


「クオリアよ、暴力は絶対に駄目だ!

お前に与えた力は、宇宙の真実を相手に理解させ、

生命全ての治安を安定させる為にあるんだぞ」


「アスー博士、そこは理解しています。

私はアイリスに、宇宙の真実を理解させたいだけです。

だから、お力を授けて下さい」


「わかった。では、私が六次元の情報になってお前の中に入ろう。お前はただ一言こう叫ぶんだ、『シーガ』と」


「ありがとうございます。わかりました。

シーガ!」


クオリアがそう叫ふと、

クオリアの中にアスラが取り込まれ、

彼女もまた、姿が変化してしまった。


その燃える髪と瞳の中は、僕が六次元の迷宮でみた景色そのものだった。

また、彼女のする銀のティアラの刻印も変化し、

『Ⅱ∨Ⅱ』に変わっていた。

そして、彼女の背中には、アスラが持っていた六次元で出来た絶対光輪が威厳を放っていた。


私も変化したわ。6次元少女 盧舎那ルシーナ

絶対すべてべる存在よ」



僕の前には二人の六次元人タナトーガが対峙していた。

「愛理栖気をつけて!クオリア、じゃなかった。

ルシーナの絶対光輪は強引に心を洗脳してくるから……」


「無駄よ。私のこの光輪は文字通り絶対なの。

比べる前から答えは決まっているんだから。

さようなら、あなた達」


僕は、多分逃げられないとは思ったが、

目を瞑り、最期の悪あがきをした。


「あれ……、なんともない」


僕が目の前を見ると、反対に

アミータの方が善戦し、がむしゃらに暴れ回るルシーナが押されていた。


「いったいどうして?」

ルシーナと、そして僕は理由がわからなかった。


ただ、一つ言えるのは、愛理栖は決してルシーナから目を離さず、ずっと自分の鏡の様な虹彩に閉じ込めているってことだ。


「痛っ!

一体これはどういうこと?

ちょっと、どこよここ?

前後左右前後ろ、全部私の背中ばっかりじゃない!

阿弥陀アミータ

隠れて無いで早く姿を現しなさいよ!

そして私を早くここから出しなさいよ!!」


「無駄よ、ルシ ーナ!

私はこの瞳に映したあなたの実像と虚像を入れかえて、虹彩ミスナーに閉じ込めているんだから。

つまり、あなたが今私にしようとしている事は全てあなたがあなたにしている事になるから……」


「そんなのって卑怯だわ!私そんなの認めないわ!」

ルシーナはがむしゃらに全方向をし攻撃しながら、とうとう泣き出してしまった。


「心配しないで、ルシーナ。私はあなたも含めてみんなを救いたいの」


愛理栖はそう言うと、必殺技のように瞳から

七色の優しくキラキラしたビームをルシーナめがけて打ち出した。

「お願い、全宇宙の命がみんな幸せでありますように。

その身に刻んで!

"心奥技 エターナル ナーモアミューターバ!"」


「愛理栖、さらっとオブラートに包んだ言い方してちゃってるけど、冷静に考えるとエグいなぁ~、オイ!」

僕は愛理栖にそうツッコまずにはいられなかった。



一方、ルシーナの奇襲を警戒した僕は、

急いで後ろを振り返った。

すると……、

ルシーナは愛理栖渾身のビームを浴びキラキラと光輝やいていた。


そして暫くすると、

ルシーナの姿は、僕にとって見覚えのある姿かたちへとゆっくりと変わっていった。


「か、か、……可織?」

次の瞬間、僕の頭の中に、可織とのかつての記憶がフラッシュバックして来た。

————————————————————※今話のエピソードは全年齢版バージョンです。別タイトル

【憮然野郎 本編作品(全年齢版)の男性向け編集バージョン】の中に、

上品とは言えないようなネタも含めたバージョンの代替エピソードを収録しています。


※ここからラストまでは菊次郎の夏のサウンドトラックの曲『kindness』を聴きながらイメージを膨らませて書きました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る