『愛』大切なのは、 どれだけたくさんのことをしたかではなく、 どれだけ心をこめたかです。
肉付きの骨は次の食事でも出された。
僕は拒んだが、ボスはそんな僕の
行動を許してくれなかった。
生きる為に食えと言わんばかりに、
僕は、ボスに見張られながら、
大切な彼女だったその肉を……、
たくさんの涙を流しながら食べきった。
肉は悔しい程美味しかった。
自分の命を捨ててまで僕を想って大切にしてくれたそんな彼女の人生を、
美味しかったと一言で片付けてしまう自分の心が憎くて憎くて、
そして悔しくて許せ無かった。
僕はその日から、仲間とは一緒に行動せずに、
孤立して、一人物思いにふけるようになっていた。
ずっと焦点の定まらない目をしている僕。
突然笑い出す僕。
仲間達も当然、そんな僕を避けていた。
でも、ボスだけは違った。
ある日、ボスは落ち込んでいる僕を心配してくれてか
後ろを一緒についてくるように身振りで伝えてくる。
否定さえも忘れていた僕は
素直にボスについていくことにした。
着いた場所には僕の予想外の光景が広がっていた。
そこでは、今まさに新しい
僕はボスに催され、一緒に出産の手伝いをする。
『キャアァッッッッッッッ!!』
その女性は悲痛な叫び声を必死に堪えながら、一晩中一睡もせず自分の命を削りながらお腹の凄まじい激痛と戦っていた。
『オギャア!オギャア!』
みんなが見守る中、女性は歯を喰い縛りながら我慢し続けた末に、無事に!
出産出来たんだ!!
新しい命が生まれてこれたんだ!
生まれて来たのは女の子だった。
それは同時に、僕達の新しい仲間が増えた瞬間だった。
僕達はみんな涙を流しながら喜び祝い合った。
それは、僕が今まで生きてきたなかで一番思い出に残ったパーティーだった。
僕はみんなと孤立していたのを忘れ、仲間達と祝い合った。
僕は女の子を産んだお母さんのその後が気がかりだったから、何日も足を運んだ。
そのお母さんは、女の子を産んだ場所から離れず、ずっと横になっている。
本当は痛いだろうに、僕が会いに行くといつも笑顔を見せてくれた。
太陽が三回沈んで、夜が明けた時に
僕がそのお母さんに会いに行くと、
そのお母さんは目を閉じて、永い永い安らかな眠りについていた。
自分に訪れるであろう死を考えていれば、その恐れが表情に出ていてもいいはずなのに、なぜかその顔はとっても幸せそうだった。
僕は、お母さんの亡骸を運びながら思った。
今まで、当たり前にイヴと捨てに行っていた骨のその意味を。
無事に生まれて来れない命がたくさんあるということを……。
そして、我が子を命懸けで産んで亡くなったお母さんがたくさんいるという事を……。
僕はいつの間にか、イヴの骨のいくつかを埋めた場所に来ていた。
そして、かつてイヴだったモノを埋めた場所を暫くの間じっと見つめていた。
すると当然、彼女の幻覚が見えた。
『私ね、みんなの中で一人だけ孤立していたの。
真っ白な体に赤目だからみんなに怖がられ避けられてるって自分でも自覚してて、一生孤独なままなんだって諦めていたの。
でもね、ほんの短い間だったけど、
ひかるがいつも私の側にいてくれて、楽しませてくれて、
私ね、本当に嬉しかった……グスン。
ひかると過ごした大切な時間、私絶対に忘れないよ。
最後になるけど、誕生日、おめでとう!ひかる』
言葉を話せるはずの無い彼女は幻覚の中で僕にそう言ってくれた。
「そんな、僕は君を守れ無かった。
僕はボスの言い付けを破って勝手に飛び出し、
イヴの前でも勝手な行動をしたから。
原因は僕なんだ」
そのイヴの幻覚は僕の唇に人差し指を当てて、
ゆっくり首を横にふってくれた。
「ありがとう。
イヴ、僕の方こそ楽しい思い出たくさんたくさんありがとう」
僕がそう声に出して返事をすると、
もう消えようとしていたイヴの幻覚は、
僕に最後に素敵な微笑みをみせてくれて、
そして消えていった。
彼女の幻覚が消えた後、僕はまだ幼かった頃の自分を思い出した。
その思い出の中には、
家族みんなにお祝いされなが、誕生日ケーキのロウソクの火を消している僕の姿があった。
僕の心の中には何ともい言いようの無い強い気持ちが込み上げてきた。
僕は歳を……とれたんだね。
あの頃は、歳をとるなんて当たり前で関心が無かったのに……、
二十歳を過ぎてから最近までの僕は、歳をとるのが嫌だったのに
……。
僕はこの日、
自分が奇跡的に生まれて来られたこと、
そして、今日まで1日1日を無事に生きてこられた事、
また、みんなから大切に守られてきたからこそ今の自分がいるという事の重みを
痛烈に感じて、1日中涙が止まらなかった……。
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