『愛敬』 やさしさの芽生え
僕がイヴの眠っている場所から戻ろうと後ろを振り返った時、
そこには、見覚えのある白いジャッカルの姿があった。
耳としっぽをかじられたそいつは、
もう大人になり立派になっていた。
もう一匹のメスのジャッカルと子供のジャッカルを引き連れて歩くそいつの姿を見ていると、
僕はなんだか元気と勇気が沸いてきた。
「お前、立派になったな!」
僕はそいつに笑顔であいさつした。
すると、
「キュイン!キュイン!」
そいつは僕の気持ちを理解してくれたのか、
僕に向けて返事をしてくれたんだ。
嘘じゃない、本当なんだ。
僕はそのとき、ここでの人生も
悪いことばかりじゃないなって、
ここに来て初めて思った。
僕は、この清々しく清らかな気持ちに言葉にならない程の喜びを噛みしめていた。
"それ"はきっと
『偽善』でも『信仰』でも『片想い』でもない。
誰も気にも止めないような場所。
ただの通りすがりのキミは、
さりげない幸せを私に届けてくれた。
How far the little candle throws his beams.
"それ"はけっして
『仕事』でも『友情』でも『恋』でもない。
私が自信をもてなくなったとき。
本当は余裕のないキミは、
温かい希望を私に教えてくれた。
So shines a good deed in a naughty world.
だけど、"それ"をはっきりと表せる言葉は
『やさしさ』でも『絆』でも『希望』でもない。
Dependentの Co-Arising
それはきっと、
ここから遥か悠久の
どこまでも果てしなく遠い未来へと
受け継がれていく
人から人への普遍的で根源的な
〜その場限りの
だったけど、
キミとの大切な、
とっても素敵な時間をありがとう。
***********************
それから暫くすると、不思議な事にすぐ近くの洞穴の入口が光出した。
僕はその光景を怖いなんて思わなかった。
だから、不思議なその光を追ってすぐに中を見に行くことができた。
洞穴の一番奥までたどり着くと、
光っていたものの正体はすぐにわかった。
それは、一面光輝く壁画だったのだ。
最初は絵の上手い仲間が描いたのかと思ったけど、光っているから違うとわかる。
壁画には惑星のような絵、UFOのような絵、
不思議な服を着た人間の絵が描かかれていた。
そして、僕が一番驚かされたのが、
中心に描いてあった二人が手を繋いだ絵だ。
その絵が、愛理栖と公園で地面に描いた絵とそっくりだったのだから。
僕は指先で壁画のその部分に触れてみた。
すると突然、まばゆい光を放ちながら、
見たこともない記号が五つ目の前に現れた。
僕がその記号を左から順に触れていくと
記号の読み方が自然に頭に入ってきた。
「∧ アーレ、∨ カーリ、ⅡΩⅡ アスー、
x∧8 アミュー、Ⅱ∨Ⅱ シーガ」
僕が五つ全ての記号を読み終えると、
辺り一面が白い光に包まれた。
そして間もなく、どこからか大人の女性の声が響いてきた。
【私はスジャータ。
そちらの世界の旧人類達と昔交流した者です。
そして、私はあなたの生まれた地球からは
遥か遠く離れた宇宙にある星の科学者なんです。
今から、大切な呪文をあなたに伝えます。
私が去った後に先ずは『アーレ』、
そして彼女のところに着いたら、
彼女と一緒に『アミュー』と叫んでください。
最後に、……のこと、お願いしますね】
「え?最後に何て……?」
最後にその声の女性は何か大切な事を言っていたようだったけど、僕には最後まで聞き取れなかった。
僕は女性が去った後、
言われたように叫んでみた。
「アーレ!」
僕の周りの空間がぐにゃぐにゃに乱れ始めた。
僕はその時空間の歪みに酷く酔ってしまっていた。
「…………」
「………?」
「………さん?」
「ひかるさん?」
自分がそのまま暫く意識を失っていた事に気が付いたのは、彼女が起こしてくれた時だった。
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