1:霖雨の始まり。
昨日の天気予報で今週一週間は雨が降ったり止んだりを繰り返すって聞いた。こう言うのを霖雨って言うんだと。
朝から、雨が降っていた。そんな時のオレの気分はすごいブルー。 おまけに今日は月曜日。 学校だるいなんてもんじゃない。
文句ばっかでひねくれ者のオレだけど学校では一応高い地位にいる。
つまりスクールカーストで言う上位カーストってこと。いじめられずには済むけど、いじめるのだって気持ちいいわけじゃない。でもそうしないと、オレだってやられるから仕方ないよね? 罪悪感はあるよ。でもさオレだっていつ上位カーストから下位カーストに落ちるかわからないんだよ。ひょっとして今日かもしれないし明日かもしれない。上位カーストから下位カーストに堕ちたやつが1番みじめだってオレは思ってるから。
だからさ、「オレのために」いじめられてくれ。
学校に着くなり金髪でちゃらそうな男子生徒がオレに声をかけてきた。ちなみにオレは茶髪だ。
「おっはー直輝。」
「おはよう竜人」
「今日はどの子いじめちゃう?そういや最近阿部うざくね?なーんか調子乗ってるって感じ〜。」
もう朝から勘弁してくれよ。重いんだよ。そーゆーの。
でも心の叫びなんか言えるはずもなく、
「うざいねー、アハハ…」
俺らが教室に入った途端オレンジ色だったクラスメイトが青色に急変した。いや変わりすぎだろ。これは辛いよ。
竜人はそんな俺の気持ちは御構い無しに、
「みんな〜空気変わりすぎー。もっと喋っていいよー。」
みんなは黙りこくったまま、時が止まったかのように静まっていると、竜人は誰かの席を蹴飛ばしながら
「いいから喋れよ!!なぁ喋れって!おれの言うことが聞けねえのかよ?はぁ?なんなんだよ。てめえらあいつみてえになりたいのか?」
あ、そうだ。そういえばさっき竜人が蹴飛ばした机の持ち主は、太田桜という人物で去年いじめによって自殺した女子生徒だ。
その事件は当時は結構大事になちゃって、学校側もメディア側もいじめに敏感になっていたけど、今じゃこのありさまだよ。
「ったく。いこーぜ」
竜人がそう言うと、オレ・悠馬・咲ちゃん・玲ちゃんが竜人と一緒に教室を出た。
オレ・悠馬・咲ちゃん・玲ちゃんはいわゆる竜人の取り巻きだ。地位的には
1位竜人
2位オレ・咲ちゃん
3位悠馬・玲ちゃん
になっていると思う…
たぶんこんな感じ。
「なぁ。これからどうする?」
誰かが言い出すと
「カラオケ行こうよ」
とオレが言うとみんなは賛成してくれて、カラオケに行くことになった。
おれは歌いまくった。雨に向かって歌ったのかもしれない。こんな雨早くやめばいいのに。
カラオケ店から出るとチャリ使うのはオレだけなので、ひとりぼっちで帰ることになった。
「ばいばーい」
「またあしたー」
「ばいびー」
「じゃーねー」
カラオケ歌いすぎてのどいてぇぇー
はぁまだ雨降ってるし。
なんなんだろうねー、まるで槍が空から降ってるみたいで、帰りたくないわ…
そんなこと考えながら、カラオケ店の入り口でチャリで帰ろうとしてると、
"ビチャ…ビチャ" と遠い横道からやけに鮮明に足音が聞こえた。見ると黒いレインコートをきた人がこっちに向かって歩いてきている。
なんかこわ。
逃げよ。本能的にそう思った。
しかしオレが逃げようとしている事を察知したのか、黒いレインコートの人はこっちに向かって走ってきた。
急いでペダルを漕いだ。漕いで漕いでこぎまくった。
近道だ。まずはあいつに逃げることに専念しよう。家の前に直通するスーパーの脇道を通ることにした。
"ビチャ…ビチャ…ビチャ…ビチャ ビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャザクビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャザクビチャビチャビチャビチャビチャザクビチャビチャビチャビチャビチャビチャザクビチャビチャビチャビチャビチャザクビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャ ザク ビチャビチャビチャビチャザクビチャザクビチャビチャビチャ"
ぐちゅ
「よくも俺の彼女を殺してくれたね、直輝くん」
今日の雨は真っ赤に見えるよ。
1:霖雨の始まり 完
心の雨は止まない。〜rain of revenge〜 @yabutagui2
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