第三章 荘厳断崖を越えて

11 愛果つがゆえ

 至る所から勢い良く噴出している湯気の束が視界を遮る。晴れているのに10メートル先ですらよく見えない。この湯気を不意に吸い込むとむせてしまう。水蒸気だけではない。硫黄成分が含まれているからだ。

 平原を渡る冷風が急に強まり、ほんのひととき湯気を薙ぎ払う。その一瞬に方角を確認して進んでいる。もし、この風が吹かなかったら道を失っていたかもしれない。

 目指すは北西だ。地平の先に薄っすら姿をみせる山嶺を超えなければならない。気が遠くなるほど道は長く遠い。そして遥かに険しい道程がこの先に待っている。だが、その困難な旅に比してこの一行の士気はあまりにも低い。到底、目的地にたどり着けるような気がしない。

 メンバーは誰しも目的を失っていた。いまはただ機械的に歩を進めている。心を無にし絶望を封じて淡々と歩く。うつむいて声を発することもなく黙々と歩む。そうして気の遠くなるような道程を少しでも縮めていった。

 軟弱で湿った土壌は崩れやすく歩きにくい。そのうえ、気をつけて歩を進めないとそこかしこに開いた蒸気噴出口に脚を曝すことになる。ホミニンの外殻靭体は耐熱性があるとはいえ高温高圧の蒸気をまともにくらえば組織が変質してしまうだろう。そうなれば少なくともその個体は旅を続けることができなくなる。

 ペシェが一行の先導役になっていた。遭難した地質調査隊のメンバーで道程の断片的な記憶があった。調査隊が設置したジェムラインの中継アンテナが丁度いい道標となってる。ただし、現在ジェムラインはJSS(Jemrhine Synaptic Signal)を発することもなく沈黙したままだ。アンテナから拾えるのはノイズばかり。ジェムラインがいまだに復旧していない証拠だ。

「調査隊の時よりも早い。いい調子で進んでる」ペシェは巨大なシダそっくりのJSS中継アンテナを発見しては旅が順調であることを示して皆を鼓舞した。

 荷車にはバイオ樹脂で形成された奇妙なサスペンションがあった。蜘蛛の脚のようなバネ構造をしている。しかし、ゴツゴツとした礫層では激しく荷台が揺れた。荷重オーバーでもあったことも原因だが、お世辞にも有用なサスペンションとはいえなかった。

 荷物の大半は武器だ。クロスボウや弓、大量の矢、樹脂製の銃と鉛の弾丸、手榴弾やダイナマイトなどの爆発物。その他、ザイルやハーケン、アイゼン、ピッケルなどの登山用具や資材・道具類などが積んである。食料の固形スワイゲルは各自が分散して所持している。しかし乾燥させてあるのでこれはたいして重くない。

 僕はその蜘蛛脚のサスが閉じたり開いたりするところを横目で見ながら漫然と歩き、ときにはしぶしぶ轍がはまった荷車を側面から押す手伝いもした。

 ときどき、改造リュックの右側に下げた太刀が気になった。右手を肩に上げてその柄に触れ、執拗にその位置を確認した。

「今日はもういいだろう。ここらで野営としよう」と、先頭を歩くペシェが後ろを振り返って言った。

 あたりを包む湯気のカーテンが暗く朱に染まっていた。陽が大きく傾いているのだろう。

 甲高い咆哮がした。見ると荷車を押していたザルマだった。天を仰ぎ、3度悲しげな遠吠えをした。ほかの者はお互い顔を見合わせたがすぐに吠えるのをやめたのでそのままとなった。思えばザルマの声らしきものを聞いたのはこれが初めてだ。こいつは人なのか。高度な自己融合体とはとても思えない。まるで野獣のような振る舞いだ。

「いつになったらこのモクモク湿気った土地から抜けだすんだ。もう、うんざりだぜ」と、プビカリが愚痴をいいながら荷を下ろした。

 オルビオを出発して今日で3日目だ。まだ旅ははじまったばかりだが、昨夜の野営地とほぼ同じような場所だった。進展がないという思い込みが焦りに似た気持ちを皆に呼び起こしていたのだろう。

「プビカリさんよ。あんた、口を開けば文句しか言わないな」と、小柄なセディオが返した。

「おまえだってブツブツ、ブツブツひとりごと言ってただろう。ちゃんと聞いてんだからな。人のことを言えた義理か」と、プビカリが反撃する。

「ひとりごとの何が悪い。だいたい立ち聞きするとはプライバシー侵害だぞ」

「気味が悪いんだよ、お前は」

「なんだと、おまえ随分なことをいうな」

「やめろ。争いは許さねぇ」ふたりが険悪な雰囲気になったところをフォスが凄味をきかせて一喝した。

 とたんにふたりは静かになった。

 終日、荷車の曳手を務めたドリッコがその取手をあげるとゆっくりその場にうずくまった。身軽なギ・フォングが駆け寄り新鮮な水が入ったボトルを与えた。ドリッコは水を飲み干したがまだ動けないでいた。

「頑張りすぎてオーバーヒートだね」と、ギ・フォングがその場に寄り添って言った。

 ギ・フォングと並ぶとドリッコの巨体がより際立つ。腰を下ろしているのにギ・フォングと同じ位置に頭があった。その腕はギ・フォングの胴体より太いだろう。フォスやプビカリも巨漢だったがその比ではない。群を抜いて大きなホミニンだった。身長はおそらく二五〇センチ、体重は三百キロを超えている。その重さを支えるため外殻靭体の膚殻の厚みを標準個体の倍以上にしておかなければならない。このためかドリッコの外殻靭体はひび割れ、色褪せてみえた。膚殻ふかくの表面までじゅうぶんな栄養が行き渡らないのだ。

 ドリッコは外殻靭体エクスープルボディ構造を使って最大のパワーを生み出すように設計され誕生した。硬い岩盤を砕き、巨大な岩を運ぶことを専門としたホミニンだ。筋束は標準体の3倍、部位によっては8倍も備わっている。そのためにあらゆる機能が犠牲になっている。オーバーヒートしやすいのもこのためだ。体表面積が小さいというだけでなく発汗機能の構造が十分でない。持久力も乏しく動きは遅い。にもかかわらず、ひたすら荷車引きをさせられている。なんだか痛々しい。まるで牛馬のような扱いだ。

 華奢なリフォルとダゴゥは砂地を見つけるとシャベルで穴を掘った(そう、ぼくが打ち出したシャベルだ)。1メートルほどを軽快に掘り進めると温水が穴に溜まり始めた。地熱で温められた地下水が溢れでてきたのだ。やや濁って苦味があるが飲料に適した水だ。ダゴゥがそれを柄杓ですくって3つの壺形の容器に移した。リフォルは固形乾燥されたスワイゲルを適量とってその容器に入れてよくかき混ぜた。

「なんだか腹が減るって感覚があるんだ。不思議なものさ」と、ペシェが器を受け取ってスワイゲルをぐいっと呑んだ。「うまい。うまく感じるんだ。実に面白い」

 器は回し飲みされ全員に行き渡った。簡便な食事だ。火をおこすこともない。

 あたりはぼんやりした灰色の闇が覆い始めた。湯気のカーテンが遠近感を奪っている。噴出口の不連続な音だけがいつ止むともなく続いた。

 テントを張ることもない。凸凹して居心地の悪い地面に身を横たえて寝るだけだ。まっさきにドリッコが地響きのような豪快なイビキをあげて眠りについた。すぐ横にギ・フォングが寄り添って寝ている。

 僕は改造リュックに下げた愛刀『異改童子切大円模いかいどうじぎりたいえんも』を取り出して懐に抱えて横になった。こうしないと安心して眠れなくなっていた。

「なあ、タイエンよ。おまえ、いつまでそうやって口を閉ざしてるつもりだ」フォスがいつの間にか傍らに横たわっていた。こちらを見ず天を仰いでいる。わずかに星空が望めた。

「……」

「俺たちがまだ信用できないのか? 疑りぶけえ奴だな」

「……」

「そうかい。そうやっていつまでも黙ってなよ。なんの得にもならんと思うがな」

「…何で着いてくる?」

「なんども言ったじゃないか。俺たちは共通の目的を持ってる。宿敵ワラフを倒すというな」

「僕はひとりで十分だ。助けなんか要らない」

「助けるなんて言ってないだろうに。目的が同じだと言っているんだ。一緒に行動したほうが目的は達成しやすくなる。そういうもんだ」

「だから信用しろと?」

「大事を成すにはな、結束が大切だ。お互いの信頼が欠かせない」

「堂々巡りだ。まるで話しにならない」

「なあタイエン、よく聞け。お前は何が何でもワラフを探して借りを返したいだろう。カティにだって会って事情が聞きたいだろう。そのためにはあの急峻な山々を越えていかなければならない。なのにお前ときたら肝心の能力を持っていない。登山スキルがないじゃないか。スキルも道具もなくてどうやって山を越えるつもりだ」

 痛いところを突かれた。フォスは僕が登山スキルをインストールできていないことを先刻承知だったわけだ。

「あんな山、スキルがなくても簡単に越えられる。それこそ余計なお世話さ」

「自棄になるのは仕方ない。しかし、冷静さを欠いたら目的を遂げることはできなくなる。いい具合にお前には頭を冷やす時間がまだまだある。その間によく考えるんだ。自分は何がしたいのか、何をすべきなのか、じっくりな」

「だから余計なお世話なんだよ」思わず僕は声を荒げてしまった。

「そうかい。よくわかった。だったらもう寝ろ。垂直に切り立った断崖の夢でも見るんだな。それはお前にとって絶望の壁だ。そのときお前は泣いて俺たちに助けを乞うことになる。いいざまだ」と言い捨て、フォスはあっちを向いてほんとうに寝てしまった。

 垂直にたった巨大な岩の壁。調査隊のペシェの記憶映像が蘇る。そのときペシェとセディオはその絶壁を素手で登り切った。上級フリークライマーのスキルがあるからだ。そのスキルを持たない僕に同じことができるだろうか。考えるまでもない。登れるわけはないのだ。重々承知している。

 僕はただ意地を張っているのだ。くだらない意地を。そのくせ最後にはフォスのいうとおり頭を下げて山越えを手伝ってもらうつもりで要るのだ。なんという卑屈! 我ながら呆れ返る。

 すべてフォスに見透かされているのだ。

 自分がなにがしたいのか、本当のところわかっていない。ワラフに会っていったいどうするんだ? なにか仕返ししたいのか? ワラフに対して強い憤りがあることは間違いない。裏切られたと感じている。カティを奪って逃げたから?

 ワラフはかなり以前から用意周到にオルビオ脱出計画を準備していた。唯一の食料、固形スワイゲルを大量に保存していたことが判明している。おそらく山越えに必要な道具類を倉庫などから少しずつ盗み出して揃えていたのだろう。誰にも怪しまれず、それだけの道具や食料を揃えるには長い期間が必要だったはずだ。

 ワラフは調査隊の遭難からただひとり生き残り、リフォルらに救助され帰投した。おそらくそのあとすぐに準備を始めたに違いない。それなのにそんな素振りをいっさい感じさせず、僕に対して完璧な嘘を突き通していた。僕ときたら見事に騙され、すっかりあいつを信用しきっていた。友達だと思っていたのだ。自分がほんとうに情けない。

 カティはワラフとどこまで通じていた? ここのところもまるでわからない。カティはオルビオ脱出計画を知っていたんだろうか。もし、知っていたならなぜ僕に打ち明けてくれなかったんだろう。なにか事情があったのだろうか。カティが嘘をつくなんてとても信じられない。カティは自分の意志でワラフに付き従ったんだろうか? 騙されていた可能性は?

 わからない。ほんとうになにもわかっていない。

 ただひとつわかっていることがある。ワラフは冷酷無比で凶暴な状態にある。それは間違いない。


 あの夜、ワラフは拘束具を着せられ監禁されていた。しかし、事前にこれを察知していたのか手首の関節あたりに小柄を隠し持ちこれを使って拘束具を切り裂き、難なく脱走した。闇に紛れてジェムラインのニューロ胞集積所に忍び込み、大量の神経伝達阻害剤を流しこんだ。そうしてジェムラインを停止させ、オルビオが混乱状態になるまでしばらく身を潜めた。

 頃合いをみて監視役のドゥ・ウィンギに接触。彼はジェムラインとの交信が途絶えすでに低能に陥っていた。ワラフはドゥ・ウィンギを騙して同田貫の隠し場所を聞き出し、その同田貫で彼を3分割に切り分けた。

 すぐにカティ救出に向かい、守衛の巨漢2人の胴を輪切りにした。カティ救出に成功すると、どういう理由か鍛冶工房に向かい、その入り口でミモザを斬首している。同僚だったミモザの首を水平に切り落としていた。おそらく逃げるミモザを追いかけ背後から同田貫で襲ったのだろう。その切り口になんの躊躇も感じられない。ミモザの首なし外殻靭体には、この太刀『異改童子切大円模』が抱えられていた。

 毒をもられ囚えられた夜、わが太刀は鍛冶工房ではなく居室にあった。フォスの証言では居室から持ちだされ、同田貫と同じ隠し場所に保管されたそうだ。なぜ、ミモザがこの太刀を胸に抱えていたのかわからない。なんの理由があってミモザは殺されなければならなかったのか? この太刀はなぜ、持ち去られずその場に残されたのか? すべて理由がはっきりしない。

 それからワラフとカティは空の荷車を引いてオルビオを脱出し、どこかに隠しもっていた道具類と食料を荷車に積み込んだ。

 そしてふたりはいま、ペシェ・ロンチュリ山脈を越え、西の海を目指してる。調査隊のホミニンたちを海に引きずって殺した得体の知れない者たちのところへ。


 ……カン、カコーン、カン、カコーン。

 一定のリズムで金属音が響いている。

 鍛冶工房の奥で火華があがっている。見慣れたいつもの光景だ。ワラフが刀を述べ打ちしているところだった。

 よく見えないが隅の方でミモザがなにかを研磨しているようだった。

「ワラフ……、海に向かったんじゃないのか?」

 ワラフは手を止め、ゆっくりこっちをみた。が、なにも語ろうとはしなかった。

「ミモザを殺っただろう。ひどいことしたな」

「タイエン、わたしはここです」ミモザが立ち上がって姿を現した。「わたしのことはもういいです。あれは仕方なかったんです。納得してますからもういいんです」そう言うとまた姿を消した。

「ともかく、僕は腹を立ててる。経験したことがないくらい強い怒りが湧き上がってる。ワラフ、君に対してだ。…何故だ。なぜ裏切った。ひどいじゃないか。ずっと騙していたなんて」

 それでもワラフは黙りこくって静かに僕をみていた。

「カティはどうした。無事にしてるのか……返事をしてくれ!」

 なおも返事をしないワラフに僕は詰め寄ろうとしたが、彼は手を上げてそれを制した。

「ここへ来る覚悟はありますか?」透き通るようなワラフの声。

「何を言ってる」

「すべてをダメにするかもしれません。それでもあなたは来ますか?」

「当然だろう。こんなにコケにされて黙っているとでも思うのか!」


 そう啖呵を切った途端、なにか場の雰囲気が変わった。電圧がかかって全体のトーンがあがったとでもいおうか、その気配全体が一瞬でアップテンポな調子に変わってしまったように感じた。

「致し方ござらぬ。お待ち仕る」

「何がだ。なにが仕方ないんだ!」

「まことに心苦しゅうござる」

「……何を今更。それになんだ、その口の利き方は? 巫山戯てるのか」まるで侍口調だ。

 ワラフはそれっきり口を開こうとはせず、刀打ちを再開した。

 カン、カコーン、カン、カコーン。

「おい、カティは無事なんだろうな。どうなんだ!」ワラフは答えない。

「頼む。一言でいい。カティは無事なのか」

「心配御無用」ワラフはこっくり頷いてからそうはっきり返事をした。

「……そうか」………。


 …悲哀のこもった雄叫び。長く高く伝わっていく。誰かがどこかで悲しんでいるのだ。


 ザルマの咆哮が薄明に響いていた。息が続く限り長く吠えている。何度も何度も繰り返して。

 朝の目覚めに聞かされるには不愉快だ。皆が起きだしたが、一様にそう思ったようだ。

「おい、ザルマ。お前はいつから雄鶏みたいになっちまったんだ。いきなり耳元でうるさいんだよ」セディオがザルマに文句を言った。

 ザルマはそれを受け入れたのかその甲高い遠吠えをやめた。

「なぜ、吼える?」ペシェが訝しげにザルマに詰問した。

 ザルマはペシェを見ようともしない。その質問が自分に向けられたとは思ってもいないような素振りだ。

「訊いているんだぞ! こっちを見ろ!」ペシェは怒鳴ったがザルマの態度に変化はなかった。まるで自分のことだと感じていない。心ここにあらず、そんな風にみえた。

「無視か」ペシェは舌打ちした。「フォスよ。こいつはダメそうだ」

「みたいだな」フォスは顎に手をあててザルマを観察していたがその視線が合わされることはなかった。ザルマはあらぬ方をただボーっと見ていた。

「急な数合わせだったからな。スキルはあるとみたが、こいつには肝心の中身が戻ってないな」と、フォスは悔やむように言った。

「元から変なやつでしたよ」と、プビカリ。

 ワラフの反乱によってジェムラインが停止してから、自己核をジェムライン側においていたほとんどのホミニンは本来の知能や知識、記憶を失い低能状態に陥っていた。その後、ガデルらの懸命の復旧作業によってジェムラインに若干の機能が戻ったことでホミニンたちは最低限必要な能力を生体側に呼び戻すことができた。しかし、ジェムラインの稼働は安定せず、能力や記憶などの戻り方は個体差が生じていた。

 ジェムラインそのものが復旧ができるのか、いまだに予断を許さない状況だった。

「まあ、様子見だ。荷車を押す分には支障ないだろう」と、諦め気味にフォスがいった。


 朝食を終えると僕たちは早々に出発した。まだ日が登り切っていない薄暗い湯気のカーテンの中をゆらゆらと彷徨うように進んだ。

 昨夜、フォスはこの一行の目的があたかもワラフの討伐にあるかのように語った。しかし、どうもしっくりこない。僕自身ですらワラフを倒すことを明確な目的にしていなかった。フォスがそう思う動機が希薄だ。命をかけて山越えするほど、強い恨みも道義心もないだろう。まして他の連中にそんな強い思いの在りようがない。彼らはただフォスの指示に従っているにすぎない。己の意志など無い。訳もわからずただ付き従っているだけだろう。

 昼を過ぎころに大きな間欠泉の脇を通り過ぎた。近くまでたどり着くと突然、熱湯の柱が勢い良く吹き上がり、あたり一面に飛沫をあげた。一行はすっかりびしょ濡れになてしまった。これをきっかけにザルマがまた咆哮を仕掛けたが、セディオが強烈な蹴りを尻に入れるとぴたりと収まった。


 隊列の最後尾あたりにいるとギ・フォングが待っていて並んで歩くようになった。細身だが身長は僕と変わらなかった。

「タイエン。少し話さない」とギ・フォング。

「構わないよ」

「カティとは長い付き合いなの?」

「…長いよ。とても」

「まだ愛してる?」

「まあ、そうさ。じゃなきゃ、ここにはいないと思う」

「そう。許すのね、カティのこと」

「わからない。いまはなにも考えられない」

「やっぱり、そうよね」ギ・フォングは一旦言葉をおいた。「あのね、わたし、あなたを応援してる。義務や命令じゃないの。あなたのその気持ちが素敵なの。大切な人を思ってるその気持ち。だから応援してる。あなたの思いが叶えられるようにしたいって。そう思ってることを伝えたかっただけ」

「ありがとう。その気持ちは嬉しいけど、君の思いに応えられるか自信がないよ。なにも約束できない」

「重荷にしないで。ただ、そう感じたから伝えただけ。あなたは自由で構わない」

「うん。…君ってドリッコのこと、そう思ってるんだろ?」

「そうよ。やっぱりわかっちゃてるね」ギ・フォングは照れたような仕草をした。

「恥ずかしがることないさ。自然なことだから」

「あの人ってね、凄く大きくて力持ちでしょ。なのに、何の文句も言わないであんなふうにひとりで荷車を引いてるの。凄く辛そうにしてるのに誰もなにもしてあげないなんて。なんだか、かわいそうになっちゃって。わたししか、いないって。そんな感じかな」

 ギ・フォングのうぶで切ない胸の内をきいて、僕はなんだか嬉しくなった。

「僕も君の恋を応援するよ。もちろん、重荷にしなくていい」

「うん。お願い」ギ・フォングはそういうと小走りで荷車に駆け寄り、非力でも精一杯その脇を押した。


 その頃から湯気のカーテンは霧散し、陽が射し始めた。

 快晴だ。紫外線がじりじりと膚殻に刺してくる。その熱のほてりを冷ますかのように心地よい風が吹き抜けていった。

 気づけば西の地平いっぱいに長大な山脈が迫っていた。薄紫の空と白く雄壮な峰々の稜線があざやかなコントラストをみせている。

 固く締まった土壌は徐々に上り勾配になってたが、一行の歩行スピードはかえって早くなった。明日には山々の麓に到達できそうだ。

 隊列の中ほど歩くうちにペシェと隣り合わせになっていた。

「元気がいいじゃないか」と、ペシェ。

「見晴らしがよくなったからかな」

「まったくそうだ。山はいい。眺めているだけで心が洗われるようだ」そういいながらペシェは自分の名前を冠されたペシェ・ロンチュリ山脈を沁み入るように遠目でみていた。

 気象天文部の古株ペシェはあの気球探査によってオルビオに居ながらにしてこの山脈の全容を見渡した。実際の第一発見者は首だけのハロガーだったが、彼の名はハロガー海に残された。山脈には技術功労者のペシェと相棒のロンチュリの名前が与えられることになった。ホミニンの首を観測装置として気球に載せる計画を立案し、実際にハロガーの首を切り落としたのはペシェだった。科学技術の発展の名のもとにペシェはどんな冷酷な行動も躊躇なく行えた。

「俺はジェムラインが停止してからひどく能力が衰えたように感じる。全能感がなくなってしまった。以前はどんなことでもできるという自信があったんだ。事実、時間さえあれば大抵のことは実現できた。いまはひ弱な存在さ。なにかができるという気がしない。この山が雄大に感じるのも自分の卑小さがわかったからだ。以前の自分にこの感覚はわからなかっただろうな」と、ペシェは早足で歩きながら息を切らすこともなくそう語った。

「仲間との一体感もあった。他人であるはずなのにそれが自分の分身と感じるんだ。不思議なものだ。いまとなってはあの感覚は幻想のようにさえ思える。現実にあったことなのにそう思えない。夢でもみていたような気分さ。俺は確かに俺だったが、同時にほかのなにかに繋がっていた。俺という自覚がありながらなにか大きなものの原理に従っていた。いまになってわかるんだ。変な言い方だが俺の意識はクリアなのにどんなときもそいつの掌の上にあった。どうもがいても決してそこから抜けられなかった。見えない檻の中にいて自由自在だと思っていたんだ。まるで孫悟空さ」

「思うに意識ってやつは存在の中心だと主張するが実は錯覚なのさ。ほんとうはセンサーみたいなものさ。本来の役割は世界の意味を拾うための器官なんだ。ところが人間の意識はなにを誤ったか、自分自身の意味を探ろうとしたためにトートロジーに陥ってしまった。無限のループさ。脳神経網に流れる電気パルスは実はハウリングしてるってことだ。そうしないと綻びが生まれて世界に矛盾が生じてしまうんだ。これが人間の意識の正体なんだ」

「今の俺はなにを見ても新鮮に感じるんだ。それは意識の層が変わったからなんだろう。意識が仕える親分が変わったからだ。その今だからこそ、前の意識の状態を批判できるんだ。やがて馴染んでなにも感じなくなるときがくる。そのとき、また見えない檻に囚われているのにその存在を忘れてしまうだろう。意識が変わりゆく端境期の今だからこそ、この仕掛が垣間見えるのさ。そういう意味で俺はいま貴重な体験をしているといえる」

 ペシェはまた山を眺望し、しばらく黙って歩いた。

「こうやってあの山に純粋な感動を覚えている。つまり、それは世界を正しく認識しているということだ。本来のセンサーである意識の役割を果たしている証拠なのさ。タイエン、興味のない話に付き合わせてすまなかったな。こういう経験を話のわかる奴にしておきたかっただけさ。おまえが生き残ったら覚えておいてくれ。そんなことを言う奴がいたことを…」ペシェはそのあとになにか言いかけたがそれっきり口を閉ざしてしまった。


 上り坂がしだいにきつくなり午後になって、いよいよドリッコの様子がおかしくなってきた。足が前に出なくなり荷車の移動速度が極端に落ちている。呼吸が激しく荒い。

 ギ・フォングが休憩を要請したことで小休止となった。彼女はドリッコの過熱した巨躯を冷やすため濡れた布で首から背中を覆い頻繁に水掛けを行った。

 一行はドリッコの快復を待つことにした。

「ドリッコの奴、もう限界かもしれんぜ」セディオが岩に腰掛けて脚をぶらぶらさせて言った。「どのみちあいつの体重じゃ、山越えは無理か」

「置いてくつもりか。ずいぶん冷たいな」僕はセディオの態度に少し腹を立てた。

「そんなことないさ。無理に連れていかないほうがいい。ベースキャンプの留守役なら危険も少ない。あんなつらい思いもしなくていい」確かに正論だ。

「そうなったら各々、武器を運ぶのね」ダゴゥが話の輪に加わった。

「全部は無理さ。かなり選別しないと」

「わたしは射手よ。弓と矢以外、要らない」と、リフォルが身勝手に言った。

「だったらわたしは銃火器と弾丸だけでいい」と、ダゴゥ。

「問題はペシェの弾薬だ。爆弾を背負って山越えとは想像するだけで肝が冷えるぜ。当人は当然として残りの大半は剛力役だな。それでも足りなきゃタイエン、お前もか」

「別に構わないさ。背負ってやるよ」

「おお、タイエン。今日は協力的なんだな。心を入れ替えたか」

 僕はセディオの嫌味を無視した。

「お人好しのタイエンさんよ。あんた、昨夜フォスになにか言われてただろう。あんなの全部、嘘だから。まともに信じなくていい。俺たちはワラフの討伐に行くわけじゃない。ただの口減らしだ。それが証拠に片道分の食料しかない。最初っからオルビオに帰るなんて予定にないのさ」

「なぜ?」

「生き残り策さ。ガデルの指示だ。もし、あのまま全員がオルビオに留まってジェムラインが回復しなかったら、全員が飢えて死ぬ。全滅さ。だから復旧作業の役に立たないホミニンは奉公に出されたのさ。俺たちみたいに。ホミニンの頭数が少なくなればスワイゲルを節約できる。その分、時間が稼げてジェムラインの復旧率が高まる。その逆に運悪くジェムラインがまっとうに稼働しなくとも、丁稚奉公に出た俺たちが生き残れれば全滅は避けられる。どうだ、納得行くだろう」

「なるほどな。それは名案だ。役に立たない奴は殺してしまうわけだな。ガデルらしいよ」

「全くだ」珍しくセディオと意見が一致した。

「俺はな、ジェムラインと切れてよかったって思ってるよ。あくまで俺個人の感想だ。人はやっぱりひとりで生きるべきさ。孤独を抱えて最初から最後までひとりでな。孤独感を味わえないなんて、生きる醍醐味を忘れたようなもんだ。真剣に他者を考えられなくなる。どうでもいい価値の無いものに映ってしまう。ずっとそんな風に過ごしたらいずれ無神経で傲慢なやつになるさ。生きる意味をちゃんと斟酌しようとするならひとりの個人でいることが一番さ。孤独とは人に課せられた義務だと思えばいい。よく生きるために必要なんだ」

「まったく同意する。あんたがそんな風に考えてるのは意外だけど」

「これでもな、高度な自己融合体の結果なんだぞ。見かけと同じと思うな」

「セディオ。あんたは死をどう思ってる」

「ふん。怖いに決まってるだろう。もう復活しないかもしれない。そのとき、いったいどこに行くかわからないじゃないか。怖くて死にたくないだけじゃない。いまこの瞬間も心の底から生きたいと思ってる」そういうとセディオは朗らかに笑った。


 プビカリがなにか騒ぎはじめた。

「おい、みんな見てくれ。こいつ、おかしい。絶対なにか変だぞ」プビカリはザルマを指差している。

「だからそいつには構うな。放っておけ。おかしいことはわかってる」と、寝転んでいたフォスが面倒そうに応えた。

「そうじゃなくて。ともかくこっちに来てみてくれよ」

 プビカリの必死の訴えにフォスが重い腰をあげ、ザルマに近づいた。

「…なんだ? おかしなことになってるな。確かにこいつは変だ」フォスが驚いたように言った。

 しゃがみこんだままのドリッコとギ・フォング以外はザルマの周りに集まった。

 ホミニンの体色は皆、暗いグレーを基調とした迷彩色だった。ドリッコのように栄養の循環に問題があれば膚殻が白くなって表面が毛羽立ってくる。しかし、ザルマのそれは赤紫に染まろうとしていた。棘の部分はすでに真紅になっている。フォスが熱湯に茹でられた時も赤くなったが、この棘の色はもっと鮮やかで毒々しい。

「なんだ、なにか病気じゃないのか?」と、セディオが腰が引けた状態で言った。

「さては突然変異の病原菌でも出現したか」ペシェが冗談ぽっくいいながらザルマの膚殻を観察し、次に触診した。

 ザルマは皆に囲まれているのに我関せずといった様子で、東の谷あいをじっと眺めていた。

「こりゃ驚いた。体毛だ。膚殻の裏側にふさふさ生え揃ってる」ペシェはザルマの背中と肩の節の間を指先で触りながらそう言った。その部分を見ると太く刺々しい針のような体毛が覗いていた。

「こりゃ、どういうことだ」フォスが問いただした。

「わからん。なにかこいつの中で起きてる」

「伝染する可能性は?」

「そんなはずはなかろうよ。冷静になれ」確かにその通りだ。我々ホミニンの身体を組成するアミノ酸はD型異性体だ。この惑星でこの特殊なアミノ酸を摂食して栄養にできる生物は存在しない。どんな微生物であろうとウィルスであろうとホミニンの体内では繁殖できないのだ。

「これは疾患ではない。これをよく見ろ。爪が鋭く太くなり始めてる。まだあるぞ。ここだ」そういうとザルマの上唇を引っ張りあげた。「犬歯が伸びている。牙と呼んでいいだろう」

 ホミニンの口に元来、歯はない。不要だから省いてある。しかし、ザルマの上顎には鋭く尖った黄色い牙が左右に生えかけていた。

「そして、ここもだ」ペシェがザルマの頭を下げさせると頭頂に角のような突起が伸びかけていた。

「鬼だ」僕は思わず口に出してしまった。

「なるほど。ザル魔ってわけか」プビカリがジョークを飛ばしたが誰も取り合わなかった。

「こいつをどうする?」セディオがフォスに訊いた。

「放置はできんな。拘束しよう。道具を持ってきてくれ」

 フォスがいうが早いかリフォルとダゴゥが荷車に走った。

「猿ぐつわになるようなものもないか、探してくれ」

「連れて行く気なのか」セディオが抗議した。

「殺すことはいつでもできる。だが、今そうするのは早計だ」

「こんな気味の悪いやつと一緒に旅などしたくない。なにされるかわからんぞ」

「だから、縛って動けなくするんだ」

「誰が面倒見るんだ」

「荷台にでも放り込んでおけばいいさ」

「あの牙と爪をみただろう。ロープなど食いちぎってしまう」

「大丈夫だ。リフォルは縛りのプロだ」

「ワラフは脱出したぞ。そもそもそれが大失敗なんだから」

「今度は大丈夫よ。心配しないで」リフォルが靭やかなザイルを片手に自信満々にいった。


 みんなの見守る中、ザルマは座ったままリフォルに後ろ手に縛られた。相変わらず遠くの谷を見たまま、特に抵抗することもなかった。

「おとなしいもんじゃないか」とフォス。

「解こうとするとかえってキツく結ばれるの。ぜったい解けない」と、リフォルは会心の様子だ。

 ザルマの手首は後ろ手に交差して縛られそのうえ拳を広げられないように両手の指がすべて固定されていた。これでは爪でザイルを傷つけることはできなさそうにみえた。

「よし、いいだろう。吼えないように口も塞いでくれ」フォスは縛り具合を入念にチェックしてそういった。

 ダゴゥが2つの鋼鉄製ハーケン(僕がペシェの依頼で打ち出した)を互い違いに重ねて固定し、その両方の穴にザイルを通したものを用意した。このハーケンをザルマに噛ませるつもりらしい。ハーケンの溝の部分にザイルが収まっている。これならザイルを牙で噛みきることは不可能だ。

 ところが、ハーケンを口元まで持ってきた途端にザルマが抵抗しだした。口を開こうとしない。無理に押し付けると首を動かして振り払おうとした。

「地面に押さえつけろ!」フォスとプビカリが二人がかりでザルマをうつ伏せにしようとしたが、激しく抵抗し地面を転げまわった。剛力の2人でもまったく押さえつけられなかった。

「くそ、馬鹿力を出しやがって。力には力だ。ドリッコ、来い!」

 それを聞いてドリッコがのしのしと牛のようにやってきた。

「早くしろ。こいつを上から押さえつけろ。手加減はいらん」抵抗するザルマに引きづられ地面に翻弄されながらフォスが叫んだ。

「わかったよ」ドリッコはくぐもった低い声で言うとザルマの腰のあたりに膝から飛び乗った。跳ね返ったその胴をとてつもなく太い両足でカニバサミにし、後ろから首を抱えこんだ。ザルマの抵抗はあっという間に封じられた。

 動けなくなったザルマは人の声とは思えないような金切り声を上げ続けた。

「うるさい。黙れ! ドリッコ、絞めろ」と怒り心頭のフォス。

 ドリッコが喉元に腕を食い込ませると声がだせなくなった。口から泡だけが出てくる。

「やり過ぎるな。喉が潰れる」と、僕。

 この隙にダゴゥがザルマにハーケンをかませ、後頭部で何重にも強くザイルを結んだ。その作業がようやく終わり、ドリッコが腕を離すとザルマはぐったり動かなくなっていた。

「死んだか?」と、フォス。

「いや、気絶してるだけだ」ペシェが心音を確認した。

「こんな奴は歩けないように脚も縛り上げてしまえ」フォスは怒りが収まらない。

 リフォルが手早くザルマの下半身を縛ってヒザ下から折れてエビ反りのような姿勢にした。

「この野郎、まったく手間取ったぜ。もう暴れられんぞ」

「フォス。こいつを連れて行く価値はないよ。このまま置き去りにしよう」セディオは執拗に主張した。「荷台で暴れれたらことだぞ。弾薬が危ない」

「確かにな。だったら荷台に磔にしていこう」フォスも執拗に連行を主張した。

「理由を聞かせてくれ。なんの意味がある」

「こいつはなにかになろうとしている。何になるか見届けるんだ。俺たちと無関係とは思えん」


 リフォルとダゴゥが資材を利用して磔台を作成しているうちに陽が傾いてきた。

「仕方ない。ここで夜を明かす。今晩はちょいと冷えるぞ」と、ペシェが決めた。

「どのみちドリッコも休ませなきゃならん。ちょうどいいさ」フォスは弁解気味に言った。

 見るとドリッコはまだ動けずにいた。ひどく疲労しているようだ。ギ・フォングが心配そうに付き添っている。

 プビカリが谷間から登ってきた。水を満杯にした大きな容器を担いでいる。

「この水、うまいよ。いっぱい飲みな」プビカリは真っ先にドリッコに水を与えた。

「ありがとう。ほんとうにありがとう」ギ・フォングがドリッコの代わりに礼を言った。ドリッコはうまそうにゴクゴク水を流しこんだ。

「タイエン、お前も飲め」

「いや、僕は最後でいいよ」

「いいって。遠慮するなって。いくらでもあるから」プビカリは新鮮な水を小さい容器に満たし渡してくれた。

「ありがとう」

「お互い様さ」彼は他の連中にも水を配って回った。

「ねぇ、タイエン。変よね。感じない?」ギ・フォングが妙なことを言った。

「うん? なにを」

「JSSかしら。でも違う。それにとても微弱。あなたは感じないの?」ギ・フォングは首を傾けてそのシグナルをもっと捉えようとした。

 僕は全神経を集中してJSSを探した。「何も感じないよ。ドリッコ。君はどう?」

「いいや」彼は首を振った。

「わたしだけなの。おかしいね。これなんなのかしら」

「もしかすると、ジェムラインが復旧寸前なのかもしれない」そう推測できなくはない。でもすごく不吉な感じがした。「他の連中には、まだなにも言わないほうがいい」

「きっと、よくないことなのね」ギ・フォングは鋭敏にそれを察知した。

「多分、よくない……。今すぐ心を閉ざしてそのシグナルを拒否してくれ。ドリッコ、君もなにもいうな」

「わかった」ふたりは同時にそう答えて不安そうにお互いの顔をみた。


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