8 Song for Brothers

 あの夏、相変わらずアウトドアスポーツに明け暮れた。どこに行くにもスケボーかローラースケートを駆った。マウンテンバイクでは地区の競技大会で入賞した。念願だったフラットアイアンズからパラグライダーで宙を舞うことができた。ただし、ベテランパイロットとのタンデムフライトだったけど。夢のイメージとほぼ同じだったが、重力の感じ方はやっぱり現実が勝ってる。よりスリリングだ。

 ローゼンに引き連れられて家族でフロントレンジにキャンプに出かけ、釣りやカヌーも覚えた。家ではローゼンとよく夕食をともにした。そのまま朝までいることもあった。僕もイーサンも大歓迎だった。ローゼンがいるだけで心強かったし家族がまとまった。母も朗らかによく笑った。

 サマーキャンプに参加したのもローゼンに勧められたからだ。場所は忘れてしまったけどフットヒルズのどこかの湖のほとりだったと思う。知ってる子も少しいたが、ほとんどは初めての子だった。デンバーからの参加者が多かったからだろう。その中にリプリセンタがいた。子どものリプリセンタはまだ珍しい時期だったので彼は目立った。名前をジオといった。同じグループに分けられテントも一緒になった。見かけは変わってるが話してみると普通の男の子だった。同い年だったし、すぐに仲良くなった。ジオの外見にもすぐ馴れた。

「筋ジストロフィーって先天的な遺伝病なんだって」声の一部が身体の中に閉じ込められたような独特な話し方だ。「遺伝子治療をするよりこっちのほうがてっとり早かったんだって。お金もたくさん出たって父ちゃんが喜んでた」

「ふーん。その身体ってどんな感じ?」と僕。

「悪くないよ。だって歩いたりできるし助けなしでなんでもできる」顔の人工皮膚が笑顔を作る。ゴワゴワした皺がよる。

「身体を移るとき痛くなかった?」

「全然。いつ移ったのかも知らなかった。寝て起きたらこの身体の中にいた」

「元の身体はまだあるの?」

「ないよ。あんなガラクタだから病院で捨てたんだって」

「ほんと。悲しくなかった?」

「そりゃ、少しはね。残してあってもよかったと思う時もあるけど…」

 ジオの腕を触るとトマトの表皮のような感触だった。冷たくて血潮が感じられず、指を押し込んでも弾力がない。実際は、人間の皮膚よりはるかに強靭な繊維で形成されていて裂けることなく熱耐性も高かった。ボートに乗るときライフジャケットを着用する必要がなかった。浮力が強くジャケット無しでも浮いていられた。反対に潜ることができなかった。

 潜れないことが知れると周りの悪ガキからからかわれた。ジオはずいぶん落ち込んでしまいテントから出てこなくなってしまった。

「ジオ。出ておいでよ」

「……」

 返事がないのでテントに入るとジオはうつ伏せになって泣いていた。

「大丈夫?」

「僕ってどのみち、ポンコツなんだって」

「溺れない身体なんて羨ましいけど。潜りたいときはオモリを使えばいいよ」

「…ほんとにそう思う?」

「思うよ。僕はまるで泳げないから」白状すると水が怖くて水泳は遠ざけていた。

「タイエンはエンタングラーなんだろう?」

「そうだよ」

「僕もそうなんだって。こんな身体なのに変だろう」

「全然。身体は関係ないよ。でもどこの学校なのさ」

「タイエンの学校に9月から転校する。こっちには来たばっかりなんだって」

 ローゼンはなにもいってなかったけど一緒のグループに分けられたのは偶然ではないようだ。

「そうなんだ。どこから?」

「ジンバブエ。アフリカだって」

 ジンバブエという国名は聞いたことがあった。南アフリカの近くだろうか、たしかその辺りだ。

「遠いところから来たんだね」

「ヨハネスブルグから宇宙飛行機であっという間だって。降りるとき翼から炎があがるんだ」

 ジオはNSA職員に付き添われてジンバブエから南アフリカのヨハネスブルグ中央病院に移送されていた。そこでジェムライン内に自己体を形成させ、リプリセンタに移し替えられていた。ジオの両親は仕事の関係でジンバブエに残ったままだったので、リプリセンタになって元気に歩けるところを直接は見せられていないそうだ。その後、この職員に連れられてはるばるアメリカに渡ってきた。

「親と離れて寂しいね」

「たくさんの兄弟がいるから。僕はいい歳だから早く親を楽にしてあげないと。ちょうどよかったんだって」

 以来、ジオと親友になった。

 ジオはいいやつだった。いつも友達思いで信頼できるやつだ。でも自分より友達を優先してしまう危うさがあった。いいやつ過ぎるんだ。だから『捨て身のジオ』ってギャングみたいなあだ名がついた。本人はとても気に入っていたけど。


 ジオがどうやって発見されたのか。このときはまだ、本人に知らされてなかった。しばらく後になって僕がローゼンから聞き出してジオに知らせた。こういうことはエンタングラーとして知っておくべきと思ったからだ。

 エンタングラーの力の発動の仕方はそれぞれ異なる。それは個性ともいえる。僕は夜驚症がきっかけになったがAIのデータマイニングがあって、はじめて発見が可能だった。ジオの場合、周囲の誰もがなにか変だと感じ始めるような現象があった。それはジオに宿った力がその存在を主張するかのようだった。

 ローゼンから聞いたジオ発見の経緯を書いておく。

 発見のきっかけとなった奇妙な一致はサマーキャンプの前年にあたる11月の蒸し暑い夜、ジンバブエの首都ハラレにある公立病院で起きた。救急外来にはいつものように緊急搬送が相次ぎ混雑していた。やはり高齢者が多かったが、急に高熱を出した幼児やせん妄状態のジャンキー、交通事故の被害者、飴を誤飲し窒息しかけた少年、銃で膝を撃ちぬかれた麻薬の売人、意識不明で倒れていた娼婦(ローゼンは娼婦という表現を避けていたが10歳といえばもうなんでもわかる年齢だ)など多種多様な急患が押し寄せていた。

 その奇妙な一致に最初に気付いたのはまもなく夜勤が明けようとする若い看護師だった。点滴中に意識を回復させた娼婦から名前や生年月日を訊ねてカルテに入力していたときだ。生体認証ができず生体チップも埋め込まれていないようなので娼婦の回答がほんとうかはわからない。もし彼女の言うことが嘘でないなら、今夜救急外来に運ばれた患者13名全員が同じ誕生日2月29日ということになる。

 4年に一回の閏日。その稀な誕生日をもつ患者が連続で13名。その確率は? ローゼンは僕に向かって冪数を使って天文学的数字を示してみせた。じゅうぶんに理解できなかったが統計的にありえない途方もない数字ということはわかった。

「世界中にあるすべての病院百年分の救急患者の記録データを想定対象にしたとしても充分にありえない数字だ」こういうときのローゼンはなぜか嬉々としている。ローゼンの仕事は大数の法則との格闘であり、その法則からの逸脱が実績となる。自然界の法則が裏返ったとき、喜びを感じるようになってしまったらしい。

 翌日になって病院側はシステムのバグを疑って生体認証システム、統合医療システムを総点検した。しかしシステムにまったく異常はなかった。以後の調査で13名の誕生日はまぎれもなく2月29日だった。ありえない偶然が起こっていたが厳然たる事実だった。だが病院運営には取り立ててなんの支障もないのですぐに忘れられた。どういうわけかこの出来事はローカルニュースですら取り上げられなかった。奇妙というだけではニュース性は薄いと判断されたのだろう。

 しかし、天下のNSAはこの時点でなにかあると調査に乗り出した。明らかに突出した異常値としてAIに検出されていた。13名の患者のうち、7名は適切な手当を受けて明け方までに帰宅した。2名は搬送から24時間以内に息を引き取った。4名は入院し、うち2名は1週間以内に死亡。残りはしばらく後に無事退院した。詳しく身元を調査したが13名にはなんの関係性も見いだせなかった。13という数字に意味があるのか? 熱心なクリスチャンは3名。宗教的な意味は見いだせなかった。

 2月29日という日付に意味はあるのか? NSA職員が調査するとただひとり、この日が誕生日の入院患者がいた。それがジオだ。筋肉が萎縮していく遺伝性の難病が悪化し3ヶ月前から入院していた。まもなく少年の命の灯火が費えようとしていた。誕生日が同じというだけではなんの証拠にもならないのでジオの身辺が徹底的に洗われた。

 看護師や病院関係者からの聞き取りで面白いことがわかった。ジオが入院している内科病棟では以前から奇妙な現象が起きていたというのだ。内科病棟には10名が入院できる大部屋が4つあり、常に満床だった。財政破綻状態にあったジンバブエでは病床が圧倒的に不足しておりどの病院も例外はなかった。大部屋の病床には入院患者が退院か死亡するかで空きがうまれてもすぐに順番を待つ患者で埋まった。そういう状態だったので誰かが意図をもって入院患者の病室割当を采配するなんてことはできそうになかった。入院患者がどの病室に割り当てられるか大部屋に関してはまったく無作為だったのだ。

 ジオが入院する前後からこの4つの大部屋のうち3つにそれぞれ独自の呼び名がつけられた。一番西側の大部屋が最初だったようだ。看護師たちはナースステーションでこの部屋を『動物園』と呼んで話題にしていた。

「あら、まただ。小さなキリンさんが出て行ったら大きなアカゲザルさんが来たわよ」

「カエルさん、昨夜亡くなって遺族が荷物を引き取りに来たけど、そこはもうライオンさん家族が押さえていて荷物が見当たらないんですって」

 英語名もあったが、ほとんどは第二の公用語といわれるショナ語で名付けられていた。

 看護師たちがふざけて患者にあだ名をつけたわけではない。キリンもライオンもアカゲザルもカエルもすべて本名だ。ジンバブエでは野生動物の名前をつけることが多い。大部屋10名の入院患者がすべて動物名であっても偶然といえなくもなかった。

 しかし隣の大部屋が『鉱物標本室』になってからは偶然と思う看護師はいなくなった。ダイアモンドさん、金床さん、銅線さん、銀杯さん、岩の塔さん、石ころさんなど玉石混交ではあったが入院患者全員が鉱物由来の名前だった。

 3つ目の部屋は『呪いの部屋』と呼ばれた。愛のない結婚さん、死を呼ぶ井戸さん、満たされない生活さん、復讐を誓うさん、苦しんでのたうちまわれさん、おまえの顔は反吐のようさん……。冗談と思うかもしれないが、こういう名前をつけられた人は決して珍しくなかった。一夫多妻のジンバブエでは妻同士が子どもの名を使ってお互いを呪っていたのだ。21世紀後半になっても呪いの風習がいまだに息づいている土地柄だった。

 看護師たちは奇妙には感じていた。なかには恐怖を感じているものもいた。しかし病院幹部に報告しようとは決して思わなかった。誤解を招いたり責任を取らせられるのを怖れたからだ。なにより病院の運営にはなにも支障がないのだから放っておいても問題はなかった。

 調査にあたったNSA職員は最後の部屋に注目した。ジオのいる大部屋だ。この部屋には特に奇妙な点が見当たらなかった。患者の名前に共通点は見当たらない。でもここまで強力な事象交絡が発生しているなら必ずなにかある。彼はそう踏んで総当りでその部屋の患者の素性を調査した。その労力はすぐに報われた。彼の勘は正しかったのだ。

 この大部屋の入院患者の全員がシャーマンの末裔だったのだ。中には15世紀のジンバブエ王国まで家系がたどれるという現役のシャーマンもいた。この男は病室で民族楽器ムビラの演奏をして祖霊と交信しているところを何度も目撃されている。当然、ジオもシャーマンの血筋だった。シャーマンの呪術と事象交絡に関係があるかはわからない。しかし、ジオに宿った力はシャーマンを部屋に満たすことで魔物からジオを守ろうとでもしているかのようにみえた。科学的根拠はない。このNSA職員が報告書の欄外にそう書き込んでいたのだ。

 エンタングラーの能力はよく擬人化される。しかし、これは誤りだ。押しなべてこの力は非人間的で予測困難な力だ。擬人化しても判断を誤るばかりだ。それでもジオのケースのようになにか意味があるかのような事象交絡を認めることがある。そういうときはどうしても擬人化して受け入れてしまいたくなる。そうすることで収まりが良くなって安心できるからだ。

 ジオの家族構成も調査された。ジオの曽祖父までがショナ族内で正式に認められたシャーマンだった。主に相談者の虫歯や腹痛を癒やし、夫婦喧嘩の仲裁も行った。ときには人々の揉め事を呪術を使って鎮めて和解交渉を引き受けることもあったようだ。ジオの父は有能な鉱山技師だったが、請われればシャーマンとしての儀式を執り行った。妻は3名いた。ジオは第2夫人の子で3男にあたる。それぞれの夫人に3人の子がもうけられたので9人兄弟だった。しかし、さらに詳細に調査を進めると新生児のとき保育器で2名が亡くなり、乳幼児になってからも2名が感染症で亡くなっている。つまりジオは13人兄弟で、そのうち9名が生存しているということになる。これは11月に急患となった2月29日の誕生日をもった患者数とその生死にピタリと一致する。さらに男女構成まで一致しているのだ。これが決定打となった。ジオはこの瞬間、NSAによってエンタングラーとして認定された。

 かつてジオから誕生日のことを聞いたことがある。

「ほんとはね、3月2日に生まれたんだ。でも、父ちゃんが勝手に2月29日にしちゃったんだ。その方が覚えやすいって。誕生日も4年に一回でいいから盛大に祝えるっていうし、母ちゃんは納得してなかったけど押し切られちゃたんだって。でも3月2日の方がしっくりするんだ、ほんとはね」

 かわいそうなジオ。それからはジオの誕生日パーティーを3月2日に変えることにした。ミウラ先生も賛成してくれた。


 新学年になりセブンスヒルでジオと再会した。ジオは校舎内に個室を与えられそこで暮らすことになった。ミウラ先生が親代わりになって生活の世話をやいた。週末になると外出許可を得て僕の家に泊まりがけで遊びにくることもあった。そういうときは大抵、ローゼンも泊まった。母は初めてジオの姿をみたときひどく取り乱したが、馴れてくるとジオを強く憐れんで接するようになった。

「なんてかわいそうなの。こんな味気ないものしか食べられないなんて」

 ジオは専用のペースト状の栄養食しか口にすることができなかった。レトルト食品のようにパウチされた内容物をお皿に開けて温めて食卓に出していた。これを味見をしてみたことがあるが、確かにうまくなかった。

 ジオはみんなといっしょに食事をしたが、早く食べ終わってしまうのでいつも手持ち無沙汰になってしまった。そんなときはイーサンと遊んだ。イーサンも食が細く食卓ではすぐに退屈してしまっていたからだ。ふたりは2階のこども部屋でトレーディングカードをして遊んだ。古い日本のアニメキャラがブームになっていて、ふたりのお気に入りになっていた。ジオは少ないお小遣いの大半をこのカード購入に充ててイーサンとやり取りしていた。

「イーサン、これ凄い。超レアものだって」とジオが仕切りとイーサンのカードに感心し羨んだ。

「もっとあるよ。ほら」イーサンは宝物を入れておく缶ケースから一握りのカードを取り出してジオに手渡した。

「凄すぎるって、イーサン。なんだよ、これって? どうやって手に入れたの?」

「貰ったんだ。だけど内緒」

「タイエン、これ見て。びっくりだって」

 カードは50枚くらいありそうだ。どれもユーモラスなモンスターやクリーチャーが描かれている。トレーディングカードにはあまり関心がなかったので知識を持ち合わせていなかった。だけど、確かにそのカードは異質だった。いま印刷されたものではなさそうだ。なんというか古色があった。インクも紙質も今のものとは違う。さらに決定的な違いがあった。キャラの名前の下に見慣れない文字が記されている。この文字は日本語のカタカナだろう。

「イーサン、これってビンテージカードだろう。高いんじゃないか」

「知らない。貰ったの」

「誰からさ」

「言えない」

「なぜさ?」

「約束したから」

「イーサン、言わないとママとローゼンに教えるぞ。このカードは取り上げだからな」チクりたくはないがこの脅しは効果的だ。

「ごめんなさーい」イーサンは涙目になって口をひしゃげてる。「知らない男の人。ジオみたいな格好の」

「僕みたいなって、それってリプリセンタだって」とジオが素っ頓狂に言った。

「いつ、どこでだよ」と僕。

「ちょっと前だよ。ロボットカーに乗ってきた」

 イーサンは通常の小学校にロボットカーで通学していた。

「イーサン。デタラメ言うな。そんなことできる訳ないじゃないか!」カッとして怒鳴ってしまった。

「ホントだって。ホントなんだって」イーサンは声を上げて泣き出した。なんだか嘘ではなさそうだ。

「それは無理だって。ロボットカーのセキュリティーはAIの管理だよ。破れっこないって」とやや知ったかぶりのジオ。

 しかしジオの言う通り、事実ならおかしい。なにかが歪んでいる。胸騒ぎがした。

「ローゼンに知らせなきゃ」

 イーサンはそれを聞いて更に大声を上げて泣いたが構わずリビングに行き、母と寛いでいたローゼンを捕まえて洗いざらい経緯を説明した。ローゼンはしきりに首を振った。

 ローゼンは僕の説明を聞き終わるとすぐSSTを使ってAIと会話をはじめた。表情は徐々に深刻になっていき声のトーンも落ちていった。

「事実なら重大な規約違反だ。許されないぞ」SSTの接続をきるとテーブルを拳で叩いた。こんなに怒りを露わにしたローゼンは初めてみた。

「どういうことなの。ちゃんと説明して」母は不安を隠しきれなかった。

「ジェムラインがロボットカーのセキュリティを勝手に破った。なおかつこの事実をいまのいままでAIに秘匿させた。とんでもないことだ。これは人類への敵対行為だ」

「イーサンの言ったことはホントのことなのね」

「どうもそのようだ」

「そのリプリセンタは誰なの?」

 ローゼンはしばらく目を閉じてそれから母を見つめて言った。「リュウエン・アキノ、君の元夫だ」

「なんてことなの。信じられない」そういうと母はこども部屋にいるはずのイーサンの元に走った。僕も後に続いた。父がなんで…なんでリプリセンタに。なにをしにボルダーに来た…。

「嫌あー」母は喉の奥から絞り出すような短い悲鳴をあげた。こども部屋の床にジオが跪いていた。その傍らにイーサンが横たわっていた。

 母はジオをなぎ倒してイーサンに駆け寄った。「イーサン。イーサン。起きなさい」

 イーサンを抱きかかえながらジオを振り返り「あんた、イーサンに何してくれたの!」と叫んだ。

「…違うって。何もしてないって。突然倒れたんだ。だから起こそうとしたんだってば」なぎ倒されたジオは起き上がりながらそう説明した。

 ローゼンが駆け寄りイーサンの息を確認し脈をとった。

「死んではいない。ともかく病院に急ごう」


 救急車はアンドロイドではなく救急隊員に運転されていた。イーサンはストレッチャーに載せられると小さい顔に子ども用の人工呼吸器を装着された。ローゼンと母が救急車に一緒に乗り込んだ。

 ローゼンは僕にジオと留守番するように言い渡したが母が強く反対したので僕も病院に付き添うことになった。

「ジオ。お前は留守番しろ。なにかあったらすぐ連絡する。しっかりしろ」

 ジオだけがアキノ家に取り残され一夜を明かすことになった。表情が乏しいジオの顔に不安と失意が漂っていた。僕は救急車の中から小さくジオに手をあげて合図した。ジオはそれに気付いたはずなのになにも反応しなかった。


 イーサンのバイタルデータに異常はなかった。体温、血圧、心拍数、呼吸数すべて正常値だった。しかし、意識はまだ回復していない。母の必死の呼びかけにも応答しない。

「お母さん、少し落ち着いてください」顔の色ツヤがいい中年の医師が母をなだめた。「息子さんの命に別状はないでしょう」

「なぜ目を醒まないのですか」母は半狂乱になっていた。医師にさえ殴りかかりそうだ。

「ナオ、大丈夫だ。イーサンは死んだりしない」ローゼンは母に寄り添い、ときに抱き寄せて落ち着かせようとしていた。

「血液検査の結果、SSEVの感染が確認されました。脳波の状況からみて自己体の同期中とみてよいでしょう。明日には目を醒ましますよ。ご安心ください」

「いったいなんてこと!」母は落ち着くどころか激しく興奮しはじめた。「あの男がやったのね。あの身勝手な日本人め、絶対許せない。よくもそんなことをわたしのイーサンに…」

「ナオ、いいから落ち着きなさい。騒いでもなんにもならない」

「消し去って。その穢れたウィルスを…イーサンの身体から綺麗さっぱり消し去って頂戴」母は涙とも汗ともわからない液体で顔をグショグショにしながら医師に強く懇願した。

「いまはできません。ジェムラインと同期中にそんなことをすれば精神崩壊を起こしてしまいます。安静にして意識の回復を待ってください」

「ダメよ。同期なんかさせない。絶対にさせるもんですか」

「ナオ、いい加減にしろ」ローゼンはそう叫ぶと母を無理やり病室から連れ出した。

 廊下でも母は騒いでいた。「あの男が私たちに仕返しに来たのよ。私達を苦しめるためにイーサンの心を奪いに来たの。絶対に渡さないわ。そんなことさせるものですか…あの忌々しい糞日本人に勝手なことをさせない」

「ナオ、頼むから落ち着いてくれ。明日になってイーサンが目を醒ましてからだ。それまでは待つんだ」

「いやよ。今しかないの。ウイルスを取り除いて」

 結局、母は鎮静剤を打たれてベットに寝かされた。興奮がピークに達していたので仕方なかった。ローゼンは母のベッドに付き添ったので、僕はイーサンの病室に残された。


 イーサンは静かな寝息をたてていた。いつもの寝顔と変わりない。

 父はリプリセンタになってこの街に来ていた。それだけで衝撃だ。

 なぜ、ロボットカーをハッキングできたのか? AIさえも懐柔していた。イーサンを騙してSSEVを注入した。ずいぶん酷いことをする。イーサンはまだ7歳なのに。

 ニューヨークを出てからすでに3年の歳月が流れている。その間、父リュウエンとは一度も会っていない。弁護士を通じて数回、メールのやり取りをした。どれも差し障りのない内容だった。「会えなくて寂しい」・「心配している」・「ニューヨークにおいで」・「愛してるよ」、そんな内容だったと思う。裁判を通じて両親の離婚が成立し、母が親権を得て父には養育の義務が残された。父は僕たちに会う権利を得ていたが一度も会いに来なかった。離婚後はメールもSSTもいっさいの連絡がなかった。母から連絡することもなかった。養育費の義務は果たされていなかったようだが、母はいっこうに困らなかった。生活費を国家から支給される特別な待遇を得ていたからだ。

 僕も父のことを思い出すことはほとんどなくなっていた。ニューヨークの思い出と同じで父の記憶も曖昧ではっきりしなくなっていた。叱られたとき怖かった記憶はある。でも、その顔を思い出そうとしてもうまくいかなかった。母は父に関するすべての情報を見事に消し去っていた。父のイメージデータすら手元にない。イーサンはおそらく父の思い出も記憶もまったくないだろう。

 よく考えてみれば父はかわいそうな人だ。家族からそこまで徹底して引き離されなければならなかった理由はあったのだろうか。それは母しか知らない。父は絶望を味わい、母を憎み、その憎しみを持ったままでリプリセンタになったのだろうか。リプリセンタになって恨みを晴らしにやってきたのだろうか。父に対しておぞましい気持ちばかりが湧き上がってきた。

「ママは?」イーサンが目覚めた。

「イーサン。ママは休んでいるよ。気分はどう?」

「どこも悪くないよ。やっぱり、パパにあのカードは返さなきゃダメなの」

「パパって知ってたの?」

「今も一緒だよ、ここにいる」

「……イーサン、なんてこと。そいつと仲良くしちゃダメだ。イーサン、離れて」

「離れるなんてできるわけないじゃないか。もう一緒なんだから」声はイーサンでもトーンは別人だ。

「…パパなんだろ」

「そうだよ。久しぶりだな、タイエン」

「……パパ、なんでイーサンにそんなことするの。ひどいよ」

「ひどくなんかないさ。親がすぐそばにいる。当たり前のことなんだ」

「違う。一緒になってるじゃないか。ママが悲しむよ」

「ママはわかっちゃいない。今起きていることをちゃんと見ようとしない。変化しないんだ。あんな頑固な女とは思ってもいなかったよ。そんなことで子どもを守れると勘違いしてるんだ」

「パパ、おかしいよ。イーサンを元に戻してよ」

「タイエン。お前までそんな馬鹿なのか。パパはイーサンを本気で守ろうとしているんだ。信じてほしい」

「わからないよ。なんでイーサンの中に入るんだよ。守るなら傍にいればいいじゃない」

「傍にいても守りきれない。ジェムラインの侵食が始まったんだ。まもなく人類はジェムラインに飲み込まれる。自我が発達した大人は自己を守れるだろう。でもイーサンはまだ幼い。勝手に自己融合されてしまうんだ。幼い心を好む自己体がウジャウジャいる。世界を感じる新鮮さ、鋭敏さを奪いたいんだ。強制的に自己融合されたらそれこそイーサンはイーサンのままでいられなくなる。だからパパが内側からイーサンを守らなきゃならない。イーサンが成長するまでそういう悪魔を排除し続けなきゃならない。わかるか、タイエン」

「でもママが……」

「ママのことは放っておけ。勝手なことばかりしてまともなことは何もできない。お前たち子どもを自分の所有物と勘違いしてるんだ」

「……でもママはイーサンを……」

「タイエン、お前はじゅうぶんに成長している。自分の心は自分で守れる。できるよな?」

「……うん」

「でもイーサンにはパパの保護が必要だ。イーサンが強くなるまでここにいなきゃならない。じゅうぶんに成長できたらその時イーサン自身でどうするか選べばいい。イーサンは自分で道を選ぶ権利があるんだ。わかるよな」

「うん。そうだけど……」

「お前のママは悲しむかもしれない。だけどもそうするしかないんだ。お前のママは未来から逃げている。現実を見ようとせず理想の世界に逃げ込んでいる。世界は変わらないと思い込もうとしているんだ。そんなバカ者にお前たちの未来を任せたらいけない。パパのいうこと、わかるだろう」

「そうかもしれないけど……」

「タイエン、お前はエンタングラーなんだってな」

「うん」

「凄いじゃないか。さすがパパの子だ。パパはお前を誇りに思ってる」

「うん」

「お前は自分で自分の道を切り開いていく力があるんだ。未来がどうなろうとも強く生き抜いて行ける。仮にそれが望まない世界であろうと残酷な世界であろうとお前は生き抜いて行ける。そういう力が与えられたんだ」

「うん」

「でも、残念だがイーサンは違う。その力が与えられなかったんだ。何もせず放っておけば消えていってしまうんだ。世の中の変動の前に無力なんだ。パパが助けるしかないだろう」

「パパ、わかった。でもママはきっと嫌だと思う。だからママの前では隠れていてくれる?」

「いいさ。普段は隠れて出てこないようにしよう」

「約束だよ」

「わかった。約束しよう」

 安易な約束だった。でも仕方なかった。この時はもうすべて手遅れだった。


 翌朝、母は病室のベッドに意識を取り戻したイーサンを見て喜びを隠せず、思いっきり抱きしめた。でも、長くは続かなかった。顔を近づけてイーサンの瞳を覗いているうちに母の顔から笑顔が消えた。そのうち言葉も失くし何も話そうとしなくなった。

 病院からはロボットカーで家に帰った。交通手段は他に選択肢がなかった。母は俯いて無口のまま、ローゼンは脇腹の拳銃を無意識に押さえて緊張した様子だった。ロボットカーは最早、安全な乗り物とは言えなかった。再度、リプリセンタに襲われないとも限らなかったからだ。

 家に帰ったがジオの姿はなかった。でも僕を除いて誰も気に留めなかった。

 母は口数が少なく目も虚ろだ。

「ナオ、どうしたんだい?」とローゼンは母の青白い顔を心配した。

「あいつがいる。この家の中に」

「何だって! どこにいるんだ」ローゼンは慌てて部屋のあちこちを見回した。

 母はイーサンを睨みつけている。イーサンは泣きそうに顔を歪めていた。

「ナオ、まさかそんなことが……」

「いるのよ、間違いない。イーサンの中に隠れてる。あなた、出てらっしゃい。わかってるのよ」

「止めてよ、ママ。イーサンが泣いちゃうよ」

 僕の方がすでに半べそだった。僕はこんな怖い母を見ることは初めてだったから。泣きそうだったイーサンの顔に表情がなくなった。「パパも止めて。出てきちゃダメだ」

「俺ならここにいる」意外にもダイニングから父の声がした。

 ローゼンは反射的にホルダーから拳銃を抜き、銃口をそちらに向けた。「こっちには銃がある。ゆっくり出てこい。変な真似をすれば迷わず撃つ」

「おっかないね」ダイニングから大人サイズのリプリセンタが両手を上げて出てきた。「少しばかし腹が減ったんでね、失敬させてもらったよ」片方の手にはジオのレトルトパウチが握られていた。

「あなた、リュウエンね。不法侵入よ」

「もう他人だからその通りさ。安心してくれ。君たちを傷つけに来たわけじゃない。挨拶をしに来ただけなんだ」

「あなたとなんか話すことは何もない。私たちは離婚したの。今さら挨拶ってふざけないで。さっさと出て行って」

「最初で最後さ。どうしても伝えたいことがある」

「何だ。言ってみろ!」ローゼンが強い口調で言った。

「あんたがナオの恋人か」父の問いにローゼンは頷いた。「名前くらい教えてくれたっていいだろう」

「ローゼン・ブラックマンだ」

「NSAのエリートなんだろ。なかなかの男前だな。背も高いし頭も切れそうだ。こんな時代に大変とは思うが、ナオと子供たちをよろしく頼む」ローゼンはこくりと頷いた。

「そのソファに座ってもいいかい。お茶を出せとまでは言わないよ」

 ローゼンはまたも頷き「ゆっくり動け」と銃を構えたままで命じた。

 父は言われたままゆっくり移動してソファに腰を下ろした。

「改めまして。アキノ・リュウエンだ」

 父は手を差し出したがローゼンはその手を拒否し銃口を向けたまま対座した。母は一層怖い顔で父を睨みつけている。

「あまり歓迎されていないようだから、なるべく手短に話そう」父はそこでひと呼吸を置いた。「あの日は人生で最悪の日だった。家に帰ったら誰もいなかった。一人取り残されていた。さすがに辛かった。一体どうしてこんな目に遭うのか、何がそんなにいけなかったのか。何度もなんども自問自答したよ。最初の頃はともかく君を恨んだ。僕の家庭を破壊した君が許せなかった。そして寂しかった。あの孤独にはとても打ち克てそうになかった。本当に気が狂いそうだったんだ。選択の余地はなかった。ジェムラインに逃げ込むほかに、あの時の精神状態を救える方法がなかった。ジェムラインに入り自己融合をした途端、苦しみから解放された。あっという間だったよ。驚くほど単純なことだ。一体、何を悩んでいたかバカらしくさえなったよ。孤独も消えたし、もがき苦しむこともなくなった。心は晴れ渡り幸せな気分に浸った。肉体も不要に思えたがしばらく残すことにした。なぜって笑われるかもしれないけどやり直せるチャンスがあるかもしれないと思ったからなんだ。でも離婚が成立して肉体は邪魔なだけになってしまった。なんの価値も見出せなくなってしまった。ジェムラインの中だけでじゅうぶんに満ち足りていたしね。だから離婚してすぐ肉体は放棄してしまった。キッパリ君らのことも忘れてしまおうと考えた。冷たいと思うかい? でも本当のところ君らもそう望んでいただろう?」

「そうね。そっとしておいて欲しかったわね。なぜ来たのよ」と、底なしに冷たい母の声。

「だろうね。俺も不思議に思うよ。あらゆる苦しみや悩みから解放されたはずなのに子ども達のことだけが気にかかっていた」

「嘘よ。一度も会いに来ようともしなかったくせして」

「おいおい、勘弁してくれ。何度も会いたいと伝えたはずだ。離婚するまで君らの居場所を知らせれなかったからじゃないか」父はそこで手のひらを広げて何か言い掛けた母を制した。「ナオ、言い争いに来たんじゃない。君への恨みつらみは綺麗さっぱり消えているんだ。そんな話はよそうや。今は大切な話を伝えに来たんだ」

「なら早く話して」

「危険を伝えに来たんだ。君らはあまりに安穏としすぎている。君たちはジェムラインのことを全く理解できていない。ちゃんと研究もできていない。自分たちで生み出したのに理解できなくなってしまっている」

「残念だがその通りだ。認めるよ」と、低い声でローゼンが返答した。

「ジェムラインと政府の間に密約を結んだそうじゃないか。共存共栄の約束事なんだろう」

「なぜそんなことを…知ってる」

「そんなことは公知なんだよ。機密に値しない。なぜならジェムライン側にその約束を守る意思がないからだ」

「そうなるだろうとは感じていたよ。でもなぜだ、なぜ破る」

「習性だからさ。ジェムラインは無限に多くの自己体を必要としている。どれだけあっても渇望するのさ。個々の自己体は満たされてもジェムラインは常に欠落を感じ飢えに苦しんでいるのさ。ジェムラインは知性体なんかじゃない。意識もない。生命ですらない。自己体を集める場でしかない。無限の情報とその処理をし続けなればならない場なんだよ」

「どんな危険が迫ってる?」

「SSEVを改変し高い感染力を持たせた。ワクチンは効かない。パンデミックになるだろう」

「なんてことだ」ローゼンは左手で頭を抱えた。「どうやったら防げる?」

「無理だ。防げない。すべての人類が感染しジェムラインに帰順することになる」

「だったら危険を知らせに来る意味もないわね」冷ややかに母が言った。

「そうじゃない。子どもを守れ。自己融合をさせるな」

「どうすればいい?」

「君たちで考えろ。俺はイーサンを守るだけで手一杯だ」

 ダイニングで何か倒れる音がした。

「何?」

「タイエン、見てきてくれ」ローゼンがダイニングの方を目配せした。

 僕はリビングからダイニングが見渡せる位置に移動した。

「ジオ! ジオだ。怪我してる」ジオが床に転げていた。僕はすぐに駆け寄ったが酷い状態だった。顔面がめり込んで窪んでいた。大量に青い液体が床に流れていた。これはジオの血液なんだろうか。弱々しく呼吸している。「ジオ! 待ってろ、助けてやるから。ローゼン、早く救急車を!」

「お前だろう。何した」ローゼンはそう言うと母に拳銃を握らせ、ダイニングに駆け寄りジオの状態を確認した。

「あいつか。急に襲ってきたんで叩きのめしてやっただけだ。タイエン、救急車を呼んでも無駄だ。そこまで傷んだボディは廃棄した方が安上がりだ」

「ジオ! パパ、ひどすぎる。ジオは関係ないじゃないか」

「本当に君らはバカだな。ジェムラインをもっとよく知るんだ。こんなボディに意味なんかない。仮の姿だ。どんなに破壊しようが本体はジェムラインにあるんだ。必要ならすぐに新しいリプリセンタになって生まれてくる」

「あなたは私を勝手に許して満足しているでしょうね。でも、私はあなたを許さない。イーサンから出て行きなさい。今すぐに」

「断るよ。俺は何があってもイーサンを守る。そう決めたんだ」

「だったら死んでしまいなさい」母はそう言うと両手で銃を握って引き金を3回引いた。父の顔面に最初の一発、残りの2発は胸のあたりに大きな穴を開けた。

 父のボディは一旦上体が跳ね上がってからゆっくりとソファに横たわった。青い液体を吹き上げながら、しばらく痙攣したように動いていた。

「意味ないよ……馴れろって…言ったろ」父はそう言って動かなくなった。

 ローゼンは母の硬直した指から拳銃を外すことに苦労していた。イーサンは無表情でその一部始終を見ていた。ジオは意識がないまま救急車が到着する前に息絶えていた。


 母は精神を病んでしばらく入院することになった。僕は当面の間、セブンスヒルに寄宿することになった。イーサンは西海岸のどこか遠い街にある全寮制の一貫校に転校することになった。母が強く望んだらしい。

 ローゼンの運転で空港までイーサンを見送った。イーサンは迎えに来た誰か知らない女性に連れられてトボトボと歩いて行った。

「タイエン、こんど会えたら、もし会えたら、またみんなで遊べるかな」

「会えるさ。また家族で一緒に」

「うん」そう言ってイーサンは飛行機に乗って行ってしまった。

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