エピローグ

変遷する世界



 自由を求め、束縛からの解放を願い、禁忌を犯してしまった彼女——ミネルヴァさまは、胡蝶解任と同時に神殿から名を抹消されたという。


 メリッサさまや、わたしの名も同様。


 もしかすると、過去にも同じ扱いを受けた王の花が存在するのかもしれない。いいえ。名ばかりでなく、存在そのものを消されてしまった者がいても不思議ではないし、わたしは幸運だったのだと思う。


 忌国という呼び名は、いまだ廃れもせずサンファーロ王国を護っていて。これほど強固な防波堤を築き上げるには、王の花という、多大な礎が必要だったのは想像に難くなくて。


 存在は知られていなくとも、国王とともに信仰の対象となり、この国を裏から支えている王の花は、ゆえにこれからさきも必要とされ、皆が解放されることなど、ほど遠い夢物語なのかもしれない。


 けれど……。それでも、わたしは願う。


 このさき、サンファーロ王国に王の花として生まれ落ちてしまうであろう少女たちのために。


 愛しく想う相手の胡蝶に皆がなれるよう。わたしは今日も、幸福に満ちた夢を語る。






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