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「先生、結納もせずいきなり入籍ですか?挙式はどうされるんです?和装と洋装どちらがいいですか?先生ならやはり神前挙式ですかね?」
母は興奮気味に捲し立てる。
先生は持っていたボストンバッグから、八冊の見本誌を取り出しテーブルにずらりと並べた。
そして発売予定のない恋愛小説の原稿を私の目の前に置く。
「これが今の俺の全てです。順番は逆になりましたが、この原稿を結納の品とさせていただきます。結婚式は致しません。人前で見せ物になるのは苦手だ」
「まひる、結婚式はせんの?」
「はい。父さん母さんごめんね。記念写真だけ撮影するつもりだけど、その時は和装にするつもり」
「そうなん……。結婚式はお金が掛かるけえね。実は、そんな気がしたんよ。じゃけぇ今日親戚を呼んだんよ。只野先生は派手なことが苦手なタイプじゃろ。今夜は身内だけで二人の結婚披露パーティーをしようと思うてね。まひる、母さんが振り袖着せてあげるけぇ。こっちにきんさい」
「振り袖なんていいよ。大袈裟なんだから」
「何言うとるんね。今夜は結婚披露パーティーなんじゃけぇ、花嫁さんはうんと綺麗にせんとね」
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