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「ご紹介します。作家の只野直人先生。今月新刊が発売されました!みんなにも持ってきたから、プレゼントするね」


「まぁ、嬉しい。只野先生、まひるとの馴れ初めは?作家さんなら、さぞロマンチックな出逢いなんじゃろうね」


「彼女に頭から生卵をぶちまけられた」


「生……卵?」


 親戚全員が固まっている。先生の武骨な態度に、笑っていいものか躊躇している。


「あは……は。出逢いは最悪でも、ほら、今からがメインイベント。義兄にいさん姉さん、はよ座りんさい。先生が両親に結婚のご挨拶をされるんじゃけぇ」


 ……っ、この状況で?

 両親に正式に挨拶しろと。


 それは……拷問に近い。

 見せ物じゃないんだから。


 でも、私の意に反して、先生はすっと座布団をよけ、畳に正座した。


 嘘でしょう?

 先生……本当に、今挨拶するつもり?


 先生の真剣な眼差しに、私も慌てて座布団をよけ先生の横に正座した。

 目の前には両親が座り、その周囲で親族が固唾を飲んで見守っている。


「ご挨拶が大変遅くなり申し訳ありません。実はこちらに伺う前に都内で婚姻届を提出してきました。作家として、まだ安定した収入ではありませんが、今後とも宜しくお願いします」


「入籍!?」


 すでに入籍したと知り、両親は絶句したが、周囲からパチパチと拍手が起きた。クラッカーがパンパンと大きな音を鳴らし、先生の頭上にテープが飛び交う。

 先生は蜘蛛の巣を払うみたいに、テープを払いのけムスッとしている。


 こんなシチュエーション、想定外だ。

 両親だけに話すつもりだったのに。


 先生、怒ってますよね。



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