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年が明け、一月下旬。
先生の本が書店に並ぶ。嬉しくて思わず、書店で写真を撮った。
出版社から頂いた見本誌をお土産に広島の実家に戻る。実家の玄関には沢山の靴が並んでいた。それを目にし、嫌な予感がする。
「先生、遠方よりよう来て下さいました。疲れたじゃろう。狭い家じゃけど、遠慮せんと、はよ上がって寛いで下さい。まひる、先生を一階の和室に案内しんさい」
「はいはい。先生、上がって下さい」
「では、お邪魔します。これは土産だ」
「まあ、ありがとうございます」
先生の本を受け取り上機嫌の両親。二間続きの和室に入ると嫌な予感は的中。
座敷には大勢の親戚が集まっていた。
「まひる、お帰り!まさかまひるが作家さんと付き合ってるなんて、みんな驚いとるんよ。こちらが有名な先生?はよ紹介して」
結婚の挨拶というより、もはや宴会だ。御園家の親族はとても仲がよく、お酒と宴会が何よりも好物。
毎度おなじみのカラオケも用意され、母の妹である叔母がマイク片手に仕切っている。
対人関係が苦手な先生は超不機嫌で、すでにムッとしている。
先生がもっとも敬遠するシチュエーション。両親はまだ先生の性格を理解していない。
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