262
編集長は先生に視線を向ける。
「只野君。披露宴で友人代表のスピーチを頼む」
「は?俺は一樹の友人ではない。それに事前に頼まれてもいないのに、いきなりスピーチを頼むとは、そんなことは無理に決まっているだろう。俺の性格はお前が一番よく知っているはずだ。挙式に参列しただけ有り難いと思え」
先生は突然スピーチを頼まれ、場所を弁えず憤慨している。
「やだ、先生ったら。編集長さん、みやこ、ごめんなさい。口は悪いけど、本当はお二人のことを誰よりも祝福しているの。昨夜は興奮してなかなか寝つけなかったんだから」
「それは、お前だろう。俺は爆睡だ」
編集長とみやこが顔を見合わせクスリと笑う。
「只野君、いい嫁さんを見つけたな。只野君には出来すぎた嫁だ」
「失敬な。俺が出来過ぎた夫だよ」
「はい、はい、公私共にこれからも宜しく頼むよ。只野先生」
編集長が先生の肩をポンと叩いた。編集長の言葉に先生はほんの少し口角を緩める。
「友人ではないが、そんなにして欲しいならスピーチしてやるよ。今日はめでたい席だからな」
私はみやこからもらったブーケを胸に抱き披露宴会場に移動する。
雛壇で微笑む二人、大勢の人の前でマイクを握り祝辞を述べる先生。少し緊張気味だったけど、先生はちゃんと大役を果たした。
拍手を浴び照れくさそうに笑う先生。
先生の笑顔が眩しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます