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 編集長は先生に視線を向ける。


「只野君。披露宴で友人代表のスピーチを頼む」


「は?俺は一樹の友人ではない。それに事前に頼まれてもいないのに、いきなりスピーチを頼むとは、そんなことは無理に決まっているだろう。俺の性格はお前が一番よく知っているはずだ。挙式に参列しただけ有り難いと思え」


 先生は突然スピーチを頼まれ、場所を弁えず憤慨している。


「やだ、先生ったら。編集長さん、みやこ、ごめんなさい。口は悪いけど、本当はお二人のことを誰よりも祝福しているの。昨夜は興奮してなかなか寝つけなかったんだから」


「それは、お前だろう。俺は爆睡だ」


 編集長とみやこが顔を見合わせクスリと笑う。


「只野君、いい嫁さんを見つけたな。只野君には出来すぎた嫁だ」


「失敬な。俺が出来過ぎた夫だよ」


「はい、はい、公私共にこれからも宜しく頼むよ。只野先生」


 編集長が先生の肩をポンと叩いた。編集長の言葉に先生はほんの少し口角を緩める。


「友人ではないが、そんなにして欲しいならスピーチしてやるよ。今日はめでたい席だからな」


 私はみやこからもらったブーケを胸に抱き披露宴会場に移動する。


 雛壇で微笑む二人、大勢の人の前でマイクを握り祝辞を述べる先生。少し緊張気味だったけど、先生はちゃんと大役を果たした。


 拍手を浴び照れくさそうに笑う先生。

 先生の笑顔が眩しい。


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