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指輪の交換、誓いのキス、感動のあまり涙が滲む。
そんな私に、先生がそっとハンカチを渡してくれた。
挙式を終え、二人はフラワーシャワーに包まれる。幸福を絵に描いたような美しい新郎新婦。
みんなに祝福されて、羨ましいな。
次はチャペルの外でブーケトスだよね。どんくさい私には取れそうにない。
はしゃぐ女子は前列に身を乗り出している。私は出しゃばらず参列者の陰に隠れるように後列で見守った。
「女子の皆さん、ごめんなさい」
みやこが何故かみんなに謝ると、白い薔薇のブーケを持ったまま私に近付き目の前に差し出した。
「みやこ……?」
「こんなに後ろにいたらブーケ取れないでしょう。このブーケはどうしてもまひるに渡したかったの。次はまひるの番だよ。只野先生、お約束通り私は先生の新刊に全力を注ぎました。いよいよ来月、書籍作家として華々しくデビューするからには、まひるとちゃんと結婚して下さいよ」
「君に言われなくても、わかっている」
「本当かな。安心出来ないよ」
「みやここそ、挙式を終えたからにはもう浮気したらダメだからね」
「まひる、それはNGだよ。私の結婚式をぶち壊す気?愛人契約の真の意味もわかったし、私達はもう大丈夫だから」
「真の……意味?」
「彼……私を手放したくなくてあんな契約を結んだらしいの。そうしないと、私が他の男と結婚すると思ったみたいね。離婚が成立したら、プロポーズするつもりだったみたい」
「そうだったんだ……」
「只野先生、例の恋愛小説ですが他社に出版を断られたのでは?もしそうなら当社で書籍化を目指しましょう」
「いや、あれはいい」
「どうしてですか?本当に欲がないんだから。今、ガンガンやらなくていつやるの」
私達の元に黒いタキシード姿の編集長が近付く。胸元の白い薔薇が眩しい。
「みやこ、こんなところで仕事の話はしないでくれ。今日は俺達の結婚式なんだから」
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