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「まひる、婚約って本気なの?只野先生は無収入だよ。生活費はどうするのよ」
「私がアルバイトしているから大丈夫だよ。贅沢しなければ二人で食べていけるから」
「……信じられない。只野先生、まひるのヒモになるおつもりですか」
「ヒモ?相変わらず失敬なやつだな。セシリア社の社員教育はどうなっているんだ」
元担当は俺の目の前にパンフレットを差し出す。
「セシリア社の新レーベルです。戦国時代や陰陽師、タイムスリップ等の要素を含むミステリー小説を発刊することになりました。記念すべき創刊第一号はなんと単行本です」
「戦国時代や陰陽師、それはとても興味深い」
「ですから、只野先生にピッタリではないかと思い、本日お伺いました」
「この俺に?」
「編集長命令で参りました。只野先生が商業化に値する良作を書き終えるまで、先生に張り付き担当しろと。お陰で重版続出の紅ローズ文庫から異動ですよ」
「君がまた俺の担当になるというのか?」
「そんな嫌そうな顔をしないで下さい。私も嫌なんですから。以前拝読した作品にいくつか陰陽師や織田信長を主人公にした小説がありましたよね」
「あるにはあるが……」
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