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縁側の掃き出し窓を開けると、開口一番、元担当が皮肉を言う。まるで餌を見つけたカラスのように『カァカァ』と煩い。
「朝っぱらから、ヤらしいな。男と女がひとつ屋根の下にいると、女性に興味のない只野先生でもそうなるんですね。それともムッツリなんとかですか?まひる、セクハラされてるなら訴えなさい」
「失敬な。覗き見するなんて下劣だぞ。何がセクハラだ」
「見たくて見たわけじゃないわ。チャイム壊れてるし、庭に回ったらこれだ。見せつけているのはお二人でしょう。まひる、いつから只野先生と付き合ってるの?」
彼女が俺をチラッと見る。
『話していい?』と、彼女の目が俺に問い掛けている。
抱き合いキスをしている場面を見られたんだ。付き合っていないと言えば、俺は家政婦に手を出したセクハラ作家になる。元担当のことだ、警察に通報しかねない。
「先月、先生と箱根の温泉に行ったの」
「温泉?そこで無理矢理?只野先生、まひるは遊ぶ女じゃないですよ。セフレとか愛人とか絶対無理なタイプだから。わかってます?」
「誰がセフレや愛人だと言った。俺達は婚約中だ」
「婚約!?まじで!?まひるが只野先生と!?」
「ギャアギャアと煩い女だ。一体何の用だ。近所迷惑だ、縁側で騒ぐな」
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